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うつみようこが語るメスカリン・ドライヴとYOKOLOCO BAND、これまでとこれから 京都・磔磔『うつみようこ Sing Mescaline Drive』インタビュー

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うつみようこ

うつみようこが60歳を迎えることを記念し、メスカリン・ドライヴのオリジナル曲・カバー曲を弾き語りで演奏するライブ『うつみようこ Sing Mescaline Drive』が、7月4日(金)に京都・磔磔で開催される。


80年代のバンドブームの時代に、ロックファン、パンクロックファンだけではなくブルースファンをも唸らせたメスカリン・ドライヴ。うつみようこのボーカルは、溌剌として圧倒的だった。うつみはメスカリン・ドライヴの後、ソウル・フラワー・ユニオンを経て、ソロミュージシャンとして活動。うつみようこ& YOKOLOCO BANDをはじめ多くのバンド/ミュージシャンとも共演。さらに表現力が増し、存在感ある声を響かせている。メスカリン・ドライヴ結成当時から出演している京都・磔磔での『うつみようこ Sing Mescaline Drive』には、メスカリン・ドライヴのメンバーから伊丹英子・永野かおり・髙木太郎らも登場予定だ。同ライブを控えるうつみが、音楽活動のこれまでとこれからを独占インタビューで語った。

——京都磔磔で開催の『うつみようこ Sing Mescaline Drive』、近づいてまいりました! メスカリン・ドライヴ(以下メスカリン)が最初にライブをやった場所が磔磔だったそうで。

うつみようこ:そうそう。メスカリンが5人編成の時。もともと5人編成だったんですよ。結成当時、ひょんなことから磔磔でライブをやって。そこから磔磔のオーナー水島(博範)さんに気に入られてやるようになって。なんやかんや随分世話になってます。YOKOLOCO(うつみようこ& YOKOLOCO BAND)でもやらせてもらってますしね。

——思い入れもあるでしょうね。

うつみ:そうですねー。なんやかんやずっと見ててくれてるし。

——私、行ったことないんですよ。ようこちゃんのライブで初めて行く。楽しみ~。

うつみ:いい店よ。呑んだり食べたりしながらも見られるし、わりと広いし。独特な面白い会場。

——ようこちゃんのバースデー記念ライブ、50才の時は『ARABAKI ROCK FEST.』でした。かなり大人数で。

うつみ:そうそう。GO!GO!50バンドで賑やかに。演奏はYOKOLOCO BANDとホーンもついてくれて、ボーカリストが入れ替わっていくっていう。あの年はソウル・フラワー・ユニオンもARABAKIに出てたから中川(敬)くんとひでちゃん(伊丹英子)も出た。たくさんの人が出演してくれたのは、たぶんTOSHI-LOWくんが繋げたと私は踏んでるんだけどね(笑)。

——人を繋げるのが得意そうだしね。で、今回は磔磔で。

うつみ:磔磔からは節目節目で「なんかやりませんか?」って声かけてもらっていて。50才の時も55才の時も。今回も誘っていただいて。私は今回はゲストたくさん呼んで大々的なものにはしたくないなって思っていたから、「メスカリンの弾き語りの会をやっていいですか?」って。磔磔も「いいですよ!是非!」って。

——メスカリンの弾き語りはようこちゃんの案で。

うつみ:うん。どっかで一回やってみたいなって思ってたんよ。そこに「60才」って冠がついたから、せっかくなんでメンバー、ひでちゃん、ケンちゃん(永野かおり)、(髙木)太郎が遊びに来いへんかなって。

——やったぁ! バンドではなくあくまでも弾き語りで?

うつみ:まだ構成は決まってないんやけど、ほぼ弾き語りで、バンドっぽいセットでもやるかな?どうかな? ひでちゃんには「ギター触っといて!」って言っとかな(笑)。

左から、永野かおり、髙木太郎、伊丹英子

——ひでちゃんはソウル・フラワー・モノノケ・サミットでの活動はあったけど、ギターはほとんど弾いてないかもね。ようこちゃんはメスカリンの曲を今もライブでやったりしてる?

うつみ:弾き語りでもメスカリンの曲はやってるし、YOKOLOCOでも数回やってる。YOKOLOCOでやると、やっぱりメスカリンとは違うものになる。それがおもろい。自分の声も経験が増えていろいろ歌えるようになってきたけど、やっぱり80年代当時の声とは違っていて。だからギリギリ今かなって思って。メスカリンを当時の感覚で歌えるのは、今がギリギリかなって。70才では無理かなって思って。

——なるほど。メスカリンのライブを見たことない人もいるでしょうし、CDは聴いてるけどライブ見たことないって人なんか、磔磔のライブが凄く楽しみでしょうね。

うつみ:「若い頃にメスカリン聴いてました」ってバンドマンに会ったりして。そうすると、「よしっ。伝承した」って思うしな。

——うんうん。でもメスカリンをカバーするバンド、あんまりいないよね。

うつみ:シンプルな曲なのにね。やっぱみんな知らないんやない?

——メスカリンならではの演奏だし、ようこちゃんにしか歌えないんだよ。ようこちゃんの歌が強烈だからカバーする勇気がない(笑)。

スタッフA:メスカリンから受ける影響って曲をカバーしようじゃなく、自分もバンドやろうっていうことなんじゃないかな。自ら行動しようってメッセージを受け取ってるんだと思います。

——なるほど! その通りですね。

うつみ:そうなんかな。

メスカリン・ドライヴ インディーズ時代のフライヤー

——80年代は女性のバンド、太郎さんは男性だけど(笑)、女性のバンドが今よりもっと少なかった。いろいろ大変だったでしょうね。

うつみ:大変やったけどバンドだけじゃないよね、ライターさんだって大変だろうし、どんな職業でも女性はしんどかった。今もしんどいだろうけど80年代はホントしんどくて、メスカリンは日本の音楽業界や音楽ファンがイメージするいわゆる女性バンドってものには当てはまらなかった。特にボーカリストが(笑)。

——でもそれほどオリジナリティがあったってことだよね。

うつみ:オリジナリティがあったかどうかは知らないけど、当時の業界は音楽そのものをそんなに重要視してなかった。今の音楽業界の状況もそうなのかもしれないけど。でもまぁ、イヤなこともあったけどそれがあっての今だから。感謝してますわ。あの頃の悔しさが時折グワッと出てくることはあるけど(笑)。

——エネルギーになってたり?

うつみ:それは確かにあるんですわ。

——メスカリンの頃から今でも、ようこちゃんの曲には「NO」があると思うけど、私はようこちゃんが歌う「NO」に凄く勇気をもらってます。

うつみ:つねに「NO」ってのはありますね。YESばかりじゃあかんよね。

——メスカリンの後、ソウル・フラワー・ユニオン、ソウル・フラワー・モノノケ・サミットで民謡など新たなスタイルに出会い、モノノケは断続的に参加することもあると思うけどソウル・フラワー・ユニオンは脱退。で、うつみようこ& YOKOLOCO BANDが始まっていく。

うつみ:YOKOLOCOはバンドじゃなく同好会(笑)。みんな仲いいし。ほら、みんな自分のバンドがあったりするからね。

——楽しいだろうねー。

うつみ:だろうね(笑)。私はスケジュール調整しなきゃないし、みんな好き放題言うし(笑)。

——ようこちゃんがビシッと〆るんだ(笑)。ステージでもそうだよね。ようこちゃんが真ん中にいるからビシッと引き締まる。

うつみ:でもさ、真ん中にいるボーカリストって普通はスターやん、ロックスター。私の場合、メンバーのほうが派手なぐらいやん?

——いやいやいや。ようこちゃんは充分派手です(笑)。でもようこちゃんがいてメンバーが締まるっていうのは確かにあって、それがカッコイイです。

うつみ:まぁ、自分の役割はコレかなって思ってます。私が出て来て引き締まるなら〆ましょう(笑)。

——YOKOLOCO BANDはどんな感じで集まったの?

うつみ:まずね、ソウル・フラワー・ユニオンから脱退して、バンドもやってないしボーカリストとしての仕事がなくなったわけやん。どうしていいかわからない状態。ほんでUKプロジェクトの社長さんに拾っていただき、スタッフとしてのPOTSHOTの通訳とかの仕事をして。で、「アメリカでレコーディングしてこいよ」って言ってもらい、ソロアルバム『YOKOLOCO』(2001年)を作った。POTSHOTのアメリカ人の仲間がレコーディングに参加してくれて、もちろんPOTSHOTにも助けてもらって。で、レコ発が渋谷クアトロで決まって、でもレコーディングしたアメリカ人のメンバーを呼べない。どうしようってなって、そういえばあの人らはどうだろう? って浮かんだのが今のYOKOLOCOのメンバー。かつてフラワー・カンパニーズのグレートマエカワが音頭をとったSteve Marriott(Small Faces/Humble Pie)のトリビュートライブのイベントで、私、皆さんとちゃんと演奏していたんですよ。奥野(真哉)くんともソウル・フラワー・ユニオンを抜けて以来の再会。あのメンバーならライブやれるかもってふと思い出し、声をかけ、レコ発ライブに出てもらい、うつみようこ&YOKOLOCO BANDになって。そっから年に1、2回ライブやって。

——アルバムも出してますよね。そういえば約20年前、ようこちゃんが40才になった後、アルバム『Rockability』(2006年)リリースインタビューしたよね。『DOLL』(『DOLL MAGAZINE』)で。

うつみ:そうそう。『DOLL』でしたね。『Rockability』からキューちゃん(クハラ カズユキ)の事務所のTRIPPIN’ ELEPHANT RECORDSになって。

——40才の時は「楽になった」って言ってたと思うんだけど。

うつみ:うん。いや40才は楽じゃなかったね。まだ期待してたもん、世間に。だけど50才でバースデー記念の祭りをやらせてもらって、そこからは下っていくばかりだから。

——下るんじゃなく成熟していってると思うよ。

うつみ:いやいや。でもこの前、The Staple Singersってゴスペルチームの一番のメインヴォーカルのMavis Staplesのビルボード東京でのライブに3日間全部行ったんですよ。80代の方なんだけど声が凄く出る。私も80才まではシャウトできるんだなって確認した(笑)。バックバンドも超上手い。アメリカでは国宝級の人。日本でもビルボード東京は満席やったけど、凄いライブを見て、日本ってまだまだやなって。日本はさ、いわゆるお子様文化でしょ、やっぱり。

——成熟できないっていう。

うつみ:そうそう。例えばさ、ビルボード東京には行かないけど新宿や下北沢のライブハウスには行く。ビルボード東京に行く人は新宿や下北沢のライブハウスには来ない。そこのさ、微妙な感じがおかしいんだよね。

——確かに。私はライブハウスが好きだしそこでやってるバンドが好き。50才、60才になってもやり続けるバンドはカッコイイと思う。

うつみ:うん。私も思う。

——でも同時に年齢と共に変化していく素晴らしい音楽もあるわけで。どっちも聴いて、どっちも好きでいいわけで。

うつみ:音楽そのものを好きになればいいんよね。今、「推し」って言葉があるよね、応援してくれるのはありがたいんだけど、「推し」ってのはその人を、そのキャラクターを応援することだよね? 音楽そのものよりも。だからこう、なかなか成熟していかないっていうか。

——私は実は、ようこちゃんは弾き語りが多くなって、もっとバンドやってほしいって思った時もあったんだけど、でも弾き語りが凄くいいんだよね。もう声の表現力が凄い。前にeastern youthの極東最前線ってライブにソロで出たよね。イースタンの吉野(寿)さんが「エレキの弾き語りやってください」って頼んだそうで。

うつみ:そうそう。弾き語りって基本アコギだったりするけど、私のアコギ重たいから歳と共に持って歩くのがしんどいって時があり、エレキでやることもあったんですよ、今もやってるけど。吉野くんが声かけてくれたのはそんな時期だったんだと思う(笑)。

——エレキギターの弾き語り、メチャメチャカッコ良かった。

うつみ:吉野くんもエレキで弾き語りやることあるよね?

——ありますね。

うつみ:やっぱりねー、弾き語りはこうじゃなきゃあかんってルールがあるわけよ、しっぽりしてなきゃあかんとか。そういうのにうーんって思っていて。いろんなものがあってもええやんって。ルールなんかいらないでしょって。まぁ、気付いたらエレキでやってったっていう感じ。

——ようこちゃんはそういった暗黙のルールを一つ一つ壊してる感じがするなー。

うつみ:壊してはいないけど、やりたいことはやってるよね。

うつみようこ

——前にインタビューで「どんな時でも、どんな場所でも歌える」って言ったの、凄く印象に残ってる。

うつみ:うん。劣悪でも、お客さんがいようがいまいが、バンドがどんな状態であろうが、どんな状況でも歌える。それは芸歴が長いからですよ。芸歴の長さっていうのはそういうこと。私は声を維持してきたから。ボイストレーニング、ボイトレに出会ったのが良かったんです。なんでボイトレするかっていうと、なんかあった時に自分が持ってるものを全部出せるようになるため。ボーカリストって声が出ない恐怖感ってのを持ってると思うんですわ。私も20代と30代でポリープやってるので、当時はライブで声出えへんかったらどうしようって思ってたけど、今はその恐怖感が全くない。万が一声が出なかったら出なかったなりのことをすればいい。持ってるもの全部を使えばやれる、歌える。去年の年末に風邪拗らせて声がガサガサになったんだけど、ガサガサになった時にどうするかってことを、今私はボイトレを教える立場で、それを教えてる。もう、自分の経験の総動員でライブで歌って、ボイトレの生徒にそれを教える。

——はぁ、芸歴ってそういうことなんだね、凄い。やっぱようこちゃんは生粋のボーカリストなんだよね。

うつみ:メスカリンで言うと、私と太郎はミュージシャン寄りでひでちゃんとケンちゃんはアーティスト寄りかな。で、大人になってから知った、Etta Jamesってシンガーがいて。Ettaはブルースマンの中にいてブルースの人じゃない。ブルース、ロック、ポップス、ジャズ、ソウル、なんでも歌っていた。ジャンルなんか関係ない。Etta JamesはEtta James。あとSister Rosetta Tharpe。この人も大人になってからブルースの先輩に教えてもらったんだけど、Elvis Presleyが教会でゴスペル歌ってる彼女を見て影響されたっていう。ギター持ってゴスペル歌うのよ。ゴスペルシンガーなのにロックンロールなのよ。ロックンロールの人らに影響を与えたって言われてる。ジャンルを超えてる。

——ジャンルを超えた人の話になると、ようこちゃん、イキイキしてる。

うつみ:近年、blues.the-butcher-590213とご一緒することもあり、いろいろ勉強させていただいていますー。といいつThe Rolling Stonesが一番好きだしパンクも好き。原爆(the原爆オナニーズ)でMC5歌わせてもらって叫ぶのも大好き。

——成熟と衝動、両方が(笑)。

うつみ:YOKOLOCOもそういう場かも。YOKOLOCOでカバーやる時、誰か一人は全く知らない曲だったりするし、誰も知らん曲を私が持っていったりするし。「やるから!」って言って(笑)。YOKOLOCOでブルースやるとハードロック寄りになったりね。グレートと竹安くんはスワンプロック、サザンロックが大好きで、その根底はブルースだしね。

——いいですね~。まだまだやりたいことがある。

うつみ:そう。YOKOLOCOはこれから大きな音も小さな音も出せるように、みんなで頑張ろうと思ってます。今年の1月の金子マリさんのライブにお誘いを受けて、ベテランの先輩たちの演奏、音はちっちゃいんやけどちゃんと出ているんです。しっかり聴こえる。80年代のパンクスってそういうのが出来ないんで。そこをみんな頑張っていこうなって。

——年齢を重ねてどんどん自由になってますね! 磔磔でのライブ、凄く楽しみ。メスカリンを知ってる人も知らない人も、楽しみにしてる人は多いですよ!最後にようこちゃんから『うつみようこ Sings Mescaline Drive』へ向けてひと言。

うつみ:昔を懐かしんでくれる人もいるだろうと、懐かしんでくれてありがたいけど、自分としては、メスカリン・ドライヴはこんな感じで今の自分の中にあります、って感じかな。皆さん、遊びに来てくださいー。

うつみようこ60歳記念ライブ『うつみようこ Sings Mescaline Drive』のチケットは、イープラスにて7月3日(木)18時まで受付中。

取材・文=遠藤妙子

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