無職から27歳でバイト開始。食器が好きで9年続けたら天職にたどり着いた話。
スタジオパーソル編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。
今回は、うつわ好きがきっかけとなり、仕事が楽しくなったエピソードをご紹介します。
専門学校を卒業後、建築事務所ではたらいていたtukadakk(つかだっく)さんは、仕事の忙しさから心が折れてしまい1年で退職を決意。「何かをものをつくるに人になりたかった」という想いで次の仕事に就くも、馴染めないことに落ち込みます。そこから、仕事が楽しくなるまでの話をnoteに投稿しました。
※本記事の引用部分は、ご本人承諾のもと、投稿記事「【うつわ沼】にハマったら仕事がどんどん楽しくなった話」から抜粋したものです。
就職。そしていきなり、ほぼ無職になる
大学では数学を専攻していたtukadakkさん。のんびりとした性格ということもあり、就職活動の時期になって初めて、自分の将来と向き合うようになったそう。
そこで、「そういえば、何かものをつくる人になりたかったんだった!」と思い出したことで、大学卒業後にデザインや建築を学ぶための専門学校へ通い始めます。
専門学校卒業後は、ものづくりに携われる建築事務所に26歳で就職。入社後すぐに、注文住宅の設計をすることになります。うれしい反面、関係者とのコミュニケーションや専門性の高い知識が求められる状況に徐々にプレッシャーを感じるように。
忙しさから残業が増え、体調を崩してしまうことも重なり、入社後1年で退職を決意します。
心がポキッと頭がパーンとしてしまい、たった1年で、辞めてしまいました。自分の弱さが情けないし、恥ずかしいし、親をはじめお世話になった方々に申し訳ないし、何より、薄々気付いていたけど「自分が何かをつくりだせる側のひとではなかったんだ」とはっきりと実感して、とても落ち込みました。
【うつわ沼】にハマったら仕事がどんどん楽しくなった話 より
それでも、ものをつくる仕事をあきらめられなかったtukadakkさん。「社会に出ることが怖い」と思いながらも、実家にほぼ引きこもるようなかたちで、ほそぼそと名刺やフライヤーをデザインする仕事をしていました。
「このまま、親のすねをかじっていいのだろうか」
「自分の意思ではなく、指示されたものをつくるだけの仕事を続けていくのかな……」
フリーランスとして1年間、先が見えない不安な日々を過ごす中で、「次はものをつくる仕事でなくてもいいから、ただ、好きなものに囲まれた仕事がしたい」と思い直します。心が疲弊していたこともあり、癒されたい気持ちもあったそうです。
私生活では、竹ざるやかご、古道具といった生活の中にある手作りの道具たちに惹かれていたtukadakkさん。もともとは実家の台所にあった、自然素材の道具を見て興味を持ち始めたそうです。
また、食べることも大好きだったtukadakkさんは、暮らしにまつわる道具や食に関わる仕事を探し始めます。
うつわ沼にハマり、だんだんと仕事が楽しくなる
そんな中、27歳になったtukadakkさんは偶然にも暮らしの道具とうつわを取り扱う雑貨店と巡り会い、運良くアルバイトとしてはたらけることになります。
その雑貨店は、オンラインショップから始まり、実店舗が開店して1年ほどだったこともあり、接客だけでなく、多岐にわたる仕事に挑戦できたと言います。
お店のSNS写真を撮ったり、オンラインショップの商品ページの撮影に立ち会ったことをきっかけに、「料理やスタイリングをもっと上達したい!いつかこんなお仕事をしたい!」と思うようになり、練習として自分でも日々のごはんを写真に撮り、Instagramで投稿することを始めました。
【うつわ沼】にハマったら仕事がどんどん楽しくなった話 より
夢中になって仕事をする傍ら、勉強のためにクラフト系のイベントや陶器市に足を運び、食器や道具店を巡るようになります。そこで、作家さんがつくるうつわと出会い、雷に撃たれたかのような衝撃が走ったと言います。
作家さんが自らの手で生み出したかたちと、偶然うまれる釉薬の表情の豊かさがひとつになったうつわは、とても力強くて、繊細で、緻密で、荒々しくて、もうとにかく魅力的でした。
【うつわ沼】にハマったら仕事がどんどん楽しくなった話 より
作家さんのうつわに料理を盛りつけると、段違いに美味しそうに見えるおにぎりやトースト。コンビニスイーツや菓子パンだって、特別に感じられたと言います。tukadakkさんは、そんな作家さんたちがつくる作品に、どんどん心を奪われていきます。
素敵なうつわに出会うと、このうつわにはこんなお料理が似合う!これを盛り付けたい!…と、お料理がいくつも思い浮かんだり、中には、うつわではない全く違うもののイメージや景色がはっきり頭に思い浮かぶものもあって、そんな内なる静かな興奮や衝撃に楽しさを感じて、ひとつ、またひとつと作家さんもののうつわを購入していきました。
気がついたら、うつわ沼に片足がずぶりと沈んでいました。
【うつわ沼】にハマったら仕事がどんどん楽しくなった話 より
また、tukadakkさんは28歳で結婚。主婦になった後もアルバイトを続けます。
遠回りをしたけれど、すべての選択は「活きてくる」
うつわとの出会いによって、30歳頃からじわじわと「仕事が楽しい!」と思えるようになったtukadakkさん。いきいきとはたらく姿を見た店長から、新しい仕事を任されるようになります。
ある日、職場で当時の店長さんが「お店の商品写真のフードコーディネートのお仕事をしないか?」と言ってくれたのです。
【うつわ沼】にハマったら仕事がどんどん楽しくなった話 より
不安はあったものの、うつわの魅力を広めていきたい。また、心からやりたいと湧き上がる気持ちに、仕事を引き受けることに。
商品のイメージと、お店の売り上げを大きく左右する仕事が、自分なんかにできるのだろうか...と、かなり不安はありましたが、大好きなうつわと料理とを組み合わせて、そのうつわが活きるシーンを、私はつくることができるんだ!と、嬉しい気持ちと、挑戦したい!という気持ちで、飛びつきました。
【うつわ沼】にハマったら仕事がどんどん楽しくなった話 より
仕事にワクワクするようになった30歳から手探りながら6年間、お店の商品写真撮影の際のフードコーディネートやSNSの写真撮影を担当。写真撮影を通して、自分の作品となるものを創り上げていったことが、tukadakkさんの今のフードコーディネートや料理教室の講師の仕事になりました。
ものづくりとは異なるものの、「料理とうつわで、求められる世界をつくることができた」「自分を表現できた」と、心が満たされたtukadakkさん。
これまでを振り返り、挫折した経験も、自分の好きを追求し続けた選択も、すべてが今につながっていると語ります。
ほぼ無職になった時に、自分が大学で学んでいた意味は?専門学校で学んだことは何に役立った?専門学校に行かずに、企業に就職していたら…と思ったこともたくさんあるけれど、今となっては、私にとっては必要で最適な選択で、全てが今の私の役に立っているなあと感じています。
【うつわ沼】にハマったら仕事がどんどん楽しくなった話 より
もしあの時、違う選択を、仕事をしていたら……。過去を悔やみそうなことがあっても、まずはその時に選んだ道を信じてみる。時には、好きを追求してみる。今この瞬間の自分に素直になって行動していくことで、自分が選んだ道が最善であったと思える日や、仕事の楽しさが見えてくる日が訪れるかもしれません。
<ご紹介した記事>「【うつわ沼】にハマったら仕事がどんどん楽しくなった話」【プロフィール】tukadakk(つかだっく)7歳と0歳の息子をもつ主婦。暮らしの道具とうつわを取り扱う雑貨店にてフードコーディネートを担当。現在は、家事育児の傍ら、日々のごはんとうつわを愉しんでいます。
(文:朝海弘子)