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日本企業では、「謙虚なリーダーシップ」の育成が職場の心理的安全性を向上させる研究結果が公開

月刊総務オンライン

日本企業では、「謙虚なリーダーシップ」の育成が職場の心理的安全性を向上させる研究結果が公開

東京大学の先端科学技術研究センターは3月15日、日本の企業において、謙虚なリーダーシップがプレゼンティーズムに影響する、とする研究を発表。謙虚なリーダー育成が心理的安全性を向上させ、より健康で生産的な職場環境を促進させる可能性を示唆している。

メンバーが本領発揮しやすくなる「謙虚なリーダーシップ」

「謙虚なリーダーシップ」とは、自らの能力の限界や過ちを正確に把握する意欲があり、他者の強みや貢献を評価し、学びの姿勢を持つというリーダーシップのスタイルを指す。このようなリーダーシップが示されると、従業員の仕事へのコミットメント、ポジティブな感情、そしてパフォーマンスが向上するとされている。エドガー・H・シャインらが著書『謙虚なリーダーシップ』(英知出版、2020)で提案した、比較的新しい概念だ。

リーダーが謙虚なだけでプレゼンティーズムが低減するわけではない

松尾朗子特任助教、熊谷晋一郎准教授らの研究グループは、複数の業種の日本企業を対象に調査を実施。チーム単位で働く職場において、リーダーの謙虚さ、プレゼンティーズム(従業員が職場に出勤しているが健康上の問題により、十分な仕事を遂行していない状態)、心理的安全性(こわがらずに自分の気持ちや考えを表明できる状態)の3つの要因が、どのような関係にあるのかを初めて明らかにした。

複数企業から462人がオンライン調査に協力(平均年齢35.67歳)。分析結果から、謙虚なリーダーシップは、心理的安全性を介してプレゼンティーズムと関連することがわかった。ただし、単にリーダーが謙虚であるだけでプレゼンティーズムが低減するわけではなく、そのようなリーダーの存在により醸成された職場(特にチーム)における心理的安全性が、プレゼンティーズムに影響する、としている。

謙虚なリーダーシップは、心理的安全性を介してプレゼンティーズムと関連する

従来型のリーダーシップスタイルではチームの効果的な管理は難しい

プレゼンティーズムは、メンバー個々人の健康状態や業績を悪化させ、組織全体に膨大なコストを発生させる可能性があることが、健康経営に関する過去の研究でも示されている。プレゼンティーズムに影響を与える文化的な要因の候補として、既存の研究では上司の行動、つまりリーダーシップが注目されてきた。

今回の研究では「現代の組織では、万能なヒーローのような従来型のリーダーシップスタイルではチームの効果的な管理が難しい」とした上で、謙虚なリーダーシップといった、柔軟なリーダーシップスタイルが求められるようになりつつある、と指摘する。謙虚なリーダーシップによりプレゼンティーズムが減少する可能性があることは、既存の研究でも報告されていたが、今回の研究では、日本の組織的な文脈における謙虚なリーダーシップ、心理的安全性、プレゼンティーズムの3つの変数の関係が実証的に検証された。

松尾朗子特任助教は「本研究の結果は、従業員が最大限の力を発揮して仕事を遂行できるような職場環境を整える際の大きなヒントとなる」とコメントしている。

当メディアでは、心理的安全性を中心としたチームづくりを推進する企業の具体的な取り組みや「心理的安全性AWARD2024」の受賞企業を紹介している。同発表の詳細は、東京大学先端科学技術研究センターの公式リリースにて確認できる。

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