「小さいときはさ…」こうちゃんが好きな思い出話の奥に“愛されて育った日々”を感じた日【いっくじ日記#20】
HBCアナウンサーの室谷香菜子(むろや・かなこ)がお送りする、「連載|室谷香菜子の「いっくじ」日記」。
息子「こうちゃん」の“一言”と、一緒にしたためる一句で、子育ての日々を日々を”一句”(育)児日記につづります!
久しぶりの再会が楽しみで
先日、私の両親が札幌に一週間ほど滞在しました。
祖母が去年の春に他界して以来、青森の実家で夫婦2人暮らしの両親。
「じいじ・ばあば、札幌に来るね!!久しぶりに会うね!」
LINEやテレビ電話などは頻繁にしていますが、こうちゃんはその日を指折り楽しみに待っていました。
「ばばは、このベッドに寝てもらって、じじは、いびきがちょっとうるさいからこっちの部屋に寝てもらおう!」
「UNOと花札大会もしようね!」
私の仕事中に両親は札幌に着き、ごはんを作ってこうちゃんと帰宅を待ってくれていました。
「ママ、お帰り~!」
「ごはん食べないでじじばばと待ってた~!カタカナしりとりやったりしてた~!」
こうちゃん、もうすごくうれしそう。
いつもは仕事から帰宅したらすぐに晩ごはんを用意して、お風呂を沸かして、洗濯機を回して、と慌ただしいですが…。
今日は家に着くと明かりがついていて、部屋の奥から賑やかな話し声とともに料理の香りが漂ってくる…。
お風呂も沸いている。
あぁ、なんて幸せ。
こんなの、久しぶりだな…。
たくさんの大人に囲まれて育った私、こうちゃんは…
私は幼いころ、たくさんの大人に囲まれて育ちました。
祖父母と一緒に暮らし、すぐ隣には父の姉家族の家もあったので、晩ごはんはみんな一緒に。
学校から帰ってきたら祖母と専業主婦の母が晩ごはんの支度をしながら「おかえり」と迎えてくれて、食が細く給食がほとんど食べられなかった私のために、ミニおにぎりなどを握って用意してくれていました。(味噌おにぎりが好きだった!)
父は出張が多く、特に小さいころはほとんど家にいませんでしたが、寂しいと感じたことはありませんでした。
家に帰ると必ず誰かがいたから。
一方こうちゃんは、昔の私とは全然違う環境で育っています。
学校が終わってまっすぐ家に帰っても出迎えてくれる人は誰もいない。
ごはんも、バタバタと忙しいときは、「先に食べて!」と言って、一緒に座って食べることができないときもあります。
ぽつんと1人大きなテーブルに座って食べているこうちゃんを見て、「いけない!」と、慌てて向かい側に座り、「今日は学校楽しかった~?」など話しかける日も。
私のような家庭は周りを見渡せばたくさんあって、今の時代、仕方がない部分もある。
そう思いながらも、きっと私は普段こうちゃんに寂しい思いをたくさんさせてしまっているなぁ、と、両親の来札一日目からそんなことを考えていたら…
「こうちゃんのママはねぇ、小さいとき、体ち~さくてね…」と、母がこうちゃんに昔話をスタートしました。
思い出話で笑いあう時間が愛おしい
「え!?そんなに小さかった!?ママ、背の順、一番前だったの!?」
「そうだよ!ずっと一番前!ランドセル背負って学校に行くのがやっとでね、重い重いって言ってね…」
私の小さいころの話を、目を輝かせて聞いていました。
こうちゃんは”昔の話“を聞くのが大好きです。
「これ、俺が小さいとき好きだったやつだ!ね!ママ?そうだよね!?」
「ママは小さいとき、これ、好きだった?」
そんな風に興味津々。
かくいう私も、年末年始などに家族が集まると、昔話に花が咲く瞬間が好き。
「それ、もう百回近く聞いてる話だよ!」と言いながらも、30年以上前の「あのときこんなことがあって…」という思い出話を聞いて、みんなで笑い合う時間が年々愛おしく感じるのです。
自分が子育てをするようになって気が付きました。
自分は確かに大切に育てられたんだ、という記憶はかけがえのない宝物であること。
そして、自分が幼いころにしてもらってうれしかったことを、自分の子にもしてあげたいと思う。
逆に、してあげられていない、と思うと胸が痛む、ということも。
こうちゃんは賑やかな夜にテンションが上がり、「みんな起きてるから起きてる!まだ寝ない!」と言っていましたが、気づくとソファで寝てしまっていました。
寝落ち。
久しぶりです。
さて、ベッドに移動させなくては…、と持ち上げようとすると、重っ!!!!!!!
とても抱き上げるのは困難で、私と母と2人で、引きずるようにして寝室へ運びました。
「本当、重くなったね。大きくなった。産まれたときはさ…」
成長の早さと、小さくなっていく姿
私は青森市の病院で里帰り出産をし、産まれてからの約2か月間は実家で過ごしました。母は出産の立ち合いもしたため、こうちゃんがこの世に出てきた瞬間も見ています。
へその緒が繋がった状態で、産まれたてほやほや、ふにゃふにゃだったあの日から7年が過ぎました。
年に数回しか孫に会えない両親が、ただただその成長の早さに驚くのも無理はありません。
そして、年に数回しか両親に会えない私にとっても、会うたびに少しずつ歩くのがゆっくりになり、背中が丸く小さくなっていく姿を見ると、月日の流れの早さを感じずにはいられません。
こうちゃんは、じじばばに1週間たっぷり甘え、グラグラしていた前歯は、ばぁばとふざけ合っていたら綺麗に抜け!
プチ旅行で泊まった部屋の窓からは花火が見えて、また1つみんなでの思い出が増えました。
「こうちゃん、次は正月にまた会おうね~!元気でいてよ~!」
「うん。じじばばも、元気でな~!!!」
お別れのとき、こうちゃんは昔からサラッとしていて、私の両親はそのことにいつも少しガッカリしています(笑)。
「じじばばに手紙書くか。寂しがってるかもしれないしね。こうちゃんの手紙が届くとうれしくて若返るって言ってたもんね」
ゆるく続いている青森のじじばばとこうちゃんの文通が、10年後、いや、20年後30年後に、記憶の中の大切な宝物にきっとなるでしょう。
今はまだ分からなくても…。
ここで一句!
懐かしい 昔話が 愛しくて
「連載|室谷香菜子の「いっくじ」日記」
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文|HBCアナウンサー 室谷香菜子
青森県出身。2009年HBC入社。HBCラジオ「アフタービート」、「美香と香菜子のおさんぽ土曜日」などを担当。2018年第1子(男の子)を出産。趣味は寝かしつけ後のドラマ鑑賞と、美味しいお酒。息子(こうちゃん)との日常はInstagramでも発信中。
編集:Sitakke編集部あい