【空き家をリノベーション】100万円の値引き交渉が成功した理由
東京都内在住の森秋子さんは、子育てを機に、時間と家事に追われる生活から脱却するため、物を手放す暮らしを始めました。その知恵と生活のヒントを綴ったブログ「ミニマリストになりたい秋子のブログ」は、瞬く間に人気ブログに。そんな森さんが、都内23区内にある築67年の小さな再建築不可物件を、1700万円でリノベーションし、見事に蘇らせた過程をまとめたのが『ミニマリスト、1700万円で家を買ってリノベする 東京23区・築67年小さなボロ家がよみがえりました』(KADOKAWA)です。予算やスケジュール、実際にかかった費用などを公開しており、これからリノベーションを考えている方や、新築を検討中の方にとって、非常に参考になる一冊です。
※本記事は森 秋子著の書籍「ミニマリスト、1700万円で家を買ってリノベする 東京23区・築67年小さなボロ家がよみがえりました」から一部抜粋・編集しました。
現金即決だからできた、100万円の値引き交渉
ネット上から家の物件情報が消えたとき、「これでよかったんだ」と思いつつもショックも大きく、未練たらしく一体誰があの家を買ったんだろう? 男の人? 女の人? 何歳くらいの人? どんな目的で購入したの? あんなボロい小さな平屋をどうするつもりなの? とぐずぐずといつまでも考えて落ち込んでいました。
ところが冬の匂いがしてきたころ、突然その家がネットに戻ってきました。
しかも150万円下がって830万円になっていました。
購入者のローンが通らなかったのか、それとも何か難しいアクシデントがあったのか、購入者の気が変わったのか、事情はわかりません。
舞い戻ってきたチャンスに運命を感じました。あらためてメリット、デメリットも考えて、本当にこの家を買うか、自分の心に聞いてみました。
あんなにボロいのに、凄まじいのに、嵐が来ても中では寝られないと思っているのに、私はこの家が欲しい! 小さな家がやっぱり欲しい! このもどかしい気持ちは一体なんなんだろう。
12月の仕事納めの話がちらほら出るころ、不動産会社に電話し「一括で700万円で購入したいです」と伝えました。130万円の値引き交渉です。
これくらいなら予算内に収まる、という金額で、一括現金払いを条件にダメ元で交渉してみることにしたのです。矛盾しているようですが、お願い、「そんなこと無理ですよ」って冷たく断ってくださいと思う気持ちもありました。
欲しいけれど手に入れるのが怖いという、いろんな気持ちをこじらせた状態でした。
「少しお待ちください」と保留の音楽が流れます。そして...。
「730万円でお願いします」
予想していなかった展開です。もう私、この家を買おう、買っちゃおう。欲しいんだもん。1秒で心は決まりました。
その日のうちに買付証明書をつくってもらい、決済日を仕事納めの前に組み込んでもらって、電話した2日後に決済しました。
ローンを組まない現金での決済は、書類も手続きも本当に簡単ですぐに完了。不動産会社の会議室で振り込み、紹介してもらった司法書士の先生も同席して、登記費用27万1500円も振り込みました。
物件の引き渡しということでもらった鍵は、おままごとのおもちゃの鍵みたいでした。ドアが壊れていて窓から出入りするのに一応鍵があるんだなと、ちょっとおかしくなりました。こうして23区の空き家が730万円で本当に私のものになりました。
結局見つけたときから250万円安く買うことができました。
「とうとう買っちゃった」。決済が終わった帰り道は、スキップしたくなるような嬉しい気持ちでいっぱいでした。その夜は図面を広げて「私の家になっちゃった」と幸せな気持ちにワクワクして眠れませんでした。