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「ドメーヌ・ジャック・プリウール」、「モンラッシェ」の垂直試飲会を現地で開催

ワイン王国

「ドメーヌ・ジャック・プリウール」を率いるエドゥアール・ラブリュイエール氏(中央)と試飲会に招待されたソムリエ

ムルソーの「ドメーヌ・ジャック・プリウール」は、このほどブルゴーニュの白ワインの頂点に君臨する「モンラッシェ」の垂直試飲会を現地で開催した。

「ドメーヌ・ジャック・プリウール」を率いるエドゥアール・ラブリュイエール氏(中央)と試飲会に招待されたソムリエ

1868年創業の「ドメーヌ・ジャック・プリウール」は、ムルソーの老舗ドメーヌとして知られ、創設者のジャック・プリウールは、『ポーレ・ド・ムルソー』や、『ブルゴーニュ利き酒騎士団(コンフレリー・デ・シュヴァリエ・デュ・タートヴァン)』の共同設立者として名を残している。

1988年に相続問題からドメーヌが売りに出された際、外国資本による買収を恐れて、地元のラブリュイエール家を含むフランスの5つのファミリーが団結してドメーヌを取得した。そして、共同オーナーとなったコート・シャロネーズのネゴシアン、アントナン・ロデ社が流通を担当し、1990年に、アントナン・ロデ社で活躍していた女性ウノローグのナディーヌ・ギュブランさんを醸造担当に招聘した。

生産責任者のナディーヌ・ギュブランさん(左)、経営者のエドゥアール・ラブリュイエール氏(右)

ラブリュイエール家は北フランスの名家で、1850年にピカルディからボージョレーのムーラン・ア・ヴァンへと拠点を移し、その地でジャン・マリー・ラブリュイエールがワイン醸造を始めた。1988年に「ドメーヌ・ジャック・プリウール」に資本参加した後、1992年にポムロールの「シャトー・ルジェ(17ha)」を買収、さらに2012年にモンターニュ・ド・ランス、ヴェルズネに「シャンパーニュ・J.M. ラブリュイエール(6ha)」を設立しワインドメーヌ経営事業を拡大している。

「ドメーヌ・ジャック・プリウール」の株式は、2000年代に入ってから、ラブリュイエール家が他のファミリーから順次取得し、現在70%を保有している。残り30%はジャック・プリウールの子孫の一人、マルタン・プリウール氏が保持しているが、2006年以降、ラブリュイエール家のエドゥアール・ラブリュイエール氏が同ドメーヌの運営を統括している。

今回試飲した全てのモンラッシェを醸造したナディーヌ・ギュブランさん(左)と、「ドメーヌ・ジャック・プリウール」の共同経営者、マルタン・プリウール氏(右)

醸造を指揮するナディーヌ・ギュブランさんはブルゴーニュの出身。ディジョン大学で醸造国家資格を取得し、1990年に「ドメーヌ・ジャック・プリウール」に加わり、革新的なアプローチでドメーヌの評価を劇的に向上させた。1997年にワイン専門誌「ラ・ルヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス」から女性として初めて「ベスト・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、それまで男性優位だった女性醸造家の地位を大きく向上させた功績も知られている。現在、ギュブランさんはムルソーの「ドメーヌ・ジャック・プリウール」だけでなく、ムーラン・ア・ヴァンとポムロールを行き来しながらワイン作りに携わっている。また、ブドウ栽培責任者の協力を得て、健全なブドウ園を後世に残し、同時にテロワールの個性を最大限に引き出すためにビオロジック、そしてビオディナミのブドウ栽培に取り組んでいる。

現在、「ドメーヌ・ジャック・プリウール」のブドウ畑はピノノワール11ヘクタール、シャルドネ10ヘクタール、コート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌ合わせて計21ヘクタール。特筆すべきは、「シャンベルタン」、「ミュジニー」、「クロ・ド・ヴージョ」、「コルトン・シャルルマーニュ」、「モンラッシェ」という5大グラン・クリュを含む計9つのグランクリュ、そして、3つのモノポールを含む14のプルミエクリュを保有している点だ。

ギュブラン女史の手腕によって「ドメーヌ・ジャック・プリウール」のワインのスタイルが大きく変化した。特に白ワインは、それまでは、新樽比率が高く、バトナージュ(澱引き)を多用することでクリーミーでボリューム感のあるワインが造られていた。しかし、2008年のヴィンテージから、ギュブラン女史は新樽比率を下げ、バトナージュを止めるという大胆な方針転換を行い、これにより、ワインはよりピュアでストレートな味わいになり、ミネラル感も際立つようになった。

ドメーヌで昼食を終え、エドゥアール・ラブリュイエール氏の先導でレンタル電動自転車を駆使してモンラッシェの畑を訪れた
モンラッシェのモンは「山」、ラッシェは古フランス語で「ハゲ」を意味し、語源的には、植物が少ない「はげ山」を意味するという

海抜250〜270メートルの緩やかな南東向きの斜面の中間に位置する「モンラッシェ」の畑はジュラ紀 (約2億130万年前から約1億4400万年前まで) の赤みがかった泥灰土が混じる硬い石灰岩の母岩の上に非常に薄く、痩せた表土が広がっている。

今回試飲した「ドメーヌ・ジャック・プリウール」のモンラッシェの畑は58a63ca。平均生産量は250ケース(約3000本)。試飲のために用意されミレジームは2020年から1999年までの12ミレジーム

2020年:収穫日8月27日。暖冬の後、ブドウの生育が早く始まり、猛暑と水不足にも関わらず、高い酸度を保ちつつ優れた熟度を達成。すでに開いていて、極めて心地よい新鮮な広がりのある味わいがあり、バランスがよく、フィニッシュが大変長い。17.5/20

2018年:収穫日9月10日。例年と比べて全ての記録が破られたミレジーム。低い降水量、例外的な日照時間、平均より2℃高い気温が特徴。2020年と比べると少し硬く、樽のニュアンスが強く出ているが、厚みがあり、モンラッシェらしい力強さが感じられる。17/20

2017年:収穫日9月5日。太陽が常に顔を出していた年。すべての味わいが溶け込み、変化し始めている。素晴らしい内容を支える新鮮な酸が印象的。18.5/20

2015年:収穫日9月7日。例外的な日照に恵まれた年。力強さは中くらいだが、若く十分な厚みと広がりのある、調和のとれたワイン。18/20

2014年:収穫日9月20日。9月の好天に救われた年。香りは少し変化しているが、濃縮、深みがあり魅了する。こなれた味わいで、バランスがよく、新鮮で繊細さが感じられる。17.5/20

2013年:収穫日10月3日。様々な厳しい気象条件に見舞われた年。少し濃い金色。新鮮さより少しタップリした膨らみが特徴。ほかのミレジムに比べると、やや溌剌とした面が欠けるが、十分な味わいがある。16.5/20

2012年:収穫日10月2日。ブドウ栽培家の技量が試された年。わずかに黄金色に変化。繊細で、味わいの中ほどでボリュームが感じられ、心地よい。最後にまとまりのあるしっかりとした味わいが残る。16.5/20

2009年:収穫日9月23日。ブドウの成熟に理想的な気候条件に恵まれた年。充実した黄金色。大変ピュアな香り。香りと同様味わいも純粋で、大変厚み、広がりがあり心地よい。最後までボリューム感が持続する。18/20

2007年:収穫日9月15日。厳しい条件が重なった年。コート・ド・ボーヌの最良のシャルドネが醸し出す繊細で表現力豊かな香り。味わいの幅、力強さは中程度だが、よく熟していて、最後に内容を確認できる。17/20

2006年:収穫日9月22日。寒く厳しい冬の後、春から夏にかけて気温の激しい変動が特徴的だった年。かなり濃い黄金色。わずかにキャラメル、トースト、炒った木の実。口に含むと、充実した味わいとしっかりした酸があり、フィニッシュもフレッシュで力強い。17.5/20

2003年:収穫日8月31日。異例の暑さと早熟さが特徴的な年となった。色はそれほど濃縮していない。香りは少し変化していて、力強さはないが、純粋で心地よい。口に含むとピュアで素晴らしいバランスが感じられる。16.5/20

1999年:収穫日9月27日。全体的に、品質の高いワインを生み出す条件が整った年。熟成したシャルドネの典型的な、炒ったアーモンド、バター、パティスリーの魅惑的な香り。口に含むと、よく溶け込んだ心地よい樽香、ハチミツのニュアンスが混じりあうボリューム感のある厚みのある味わいが広がる。17.5/20

試飲に立ち会ったナディーヌ・ギュブランさんは、「今回の試飲を通じて、モンラッシェ・グラン・クリュの各ヴィンテージはそれぞれ独自の気候条件と困難に直面しながら、高品質なワインを生産し続けてきたことが分かる。栽培家の努力と自然との調和が、この偉大なワインの背後にある重要な要素だ」と語った

フィリップ・フォルブラック氏(世界最優秀ソムリエ、1992年リオデジャネイロ大会優勝)の総評

今回のテイスティングを通して私たちは「モンラッシェ」の持つ特徴をよく理解できたよう思う。

要約すると密度、複雑さ、バランス、そして毎年常に一定の心地よい塩味、長い余韻、そして本当にガストロノミーにふさわしい内容を兼ね備えているということ。モンラッシェを単独で試飲して、その味わいの深さを発見するのは勿論楽しいことだが、ワインだけを味わうのは欲求不満になる面がある。

この偉大なワインは肉、鶏肉、チーズ、魚、甲殻類の料理と合わせてこそ本当の味わい、その素晴らしさがわかる。

セルジュ・デュプス氏(世界最優秀ソムリエ、1989年パリ大会優勝)の総評

これまでたくさんのテイーティングをしてきたが、今日行われた垂直ワインテースティングは間違いなく長く私の記憶に残るものになるだろう。

同じドメーヌの10の異なるミレジームのモンラッシェを比較試飲するチャンスは滅多に訪れるものではなく、最高レベルの特別なトレーニングを受けているようなものだ。

20歳の頃のソムリエに戻ったような、ワクワクした感覚で一本、一本テイスティングした。若いソムリエにも、モンラッシェのボトルを1本か数本、テイスティングする機会を一度は持ってほしいと思う。

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