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堂珍嘉邦に訊く、ニューシングル「BETWEEN SLEEP AND AWAKE」の2曲と、アーティストとしての自身の現在地

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堂珍嘉邦

堂珍嘉邦がニューシングル『BETWEEN SLEEP AND AWAKE』を、11月6日にリリースする。収録されるのは、「BETWEEN SLEEP AND AWAKE」と「HEAVENLY」の2曲。
前者は、トラックメーカー/プロデューサー、髙山純のソロユニット=speedometer.に依頼した新曲で、先にライブで、数度にわたって披露した上で、バンドグルーヴとspeedometer.のアレンジを加えて、レコーディングされた。
なお、speedometer.は、1990年代後半から2000年代にかけての数年間はメジャーレーベルで、それ以降はDIYで活動している、大阪在住のトラックメーカー/プロデューサー。自身の作品、他アーティストとのコラボレーションや編曲、楽曲提供など、多岐にわたって作品を世に送り出してきた、言わば、知る人ぞ知るクリエイターである。
そして「HEAVENLY」は、永積崇(現ハナレグミ)、オオヤユウスケ(Polaris)、原田郁子(clammbon)の3人のユニット・ohanaが、2006年にリリースした唯一のアルバム『オハナ百景』の中の1曲で、こちらは2019年から堂珍が、ライブでカバーし続けてきた曲である。
それぞれの曲について、そして最近の心境などについて、本人に訊いた。なお、このシングルのリリースの直後に、毎年恒例の『堂珍嘉邦LIVE 2024 ”Now What Can I see?〜Drunk Garden〜”』が、11月9日(土)・10日(日)の2デイズで、東京・日本橋三井ホールにて開催される。「ここに歌を乗っけたらどうなるだろう?」っていう想像をしながら聴くことができた

──しかし、よくご存知でしたね、speedometer.。

もともとは、毎年やっているライブに、未発表の新曲を入れたいな、っていうところから始まったんですけど。曲を一緒に作ってくれる人たちが、いろいろいる中で、どうしようか考えている時に、移動中のクルマの中でたまたまspeedometer.の曲を聴いて。「これ、いいね」って思って、マネージャーに「誰ですか?」と訊いたら、speedometer.というアーティストで、マネージャーが昔、メジャー期の音源制作のディレクターをやっていたことがあると。「お知り合いだったら、一度一緒にやってみたいというオファー、できないですかね?」と相談したんです。

──でも、speedometer.の曲って、基本的にはインストゥルメンタルがメインですよね。

そう、歌が乗っかってないインストだから、よけい「ここに歌を乗っけたらどうなるだろう?」っていう想像をしながら聴くことができて。ギターの音色とかも、自分がすごい好きな感じだし、どの音もパッと耳に入ってきた感覚が、とても心地よかったから。聴いていて……「なんか、悪い人ではないだろうな。気が合うかもしれない」みたいなことを思って。それで、お会いしたら、作曲者として歌い手と絡むっていうことが、これまでそんなになかった方だということがわかって。

──基本、トラックメーカーですもんね。

自作へのフィーチャリングや、歌ものの曲のアレンジの仕事は、したことがあるそうなんですけど。で、作曲をお願いしたんですけど、歌詞は、普段から書いている方ではないから。デモの音源は歌詞がなくて、“♪ラララ”で歌われているもので、よかったんですけど。
そしたら、「仮です」って、曲に歌詞が付いて送られてきたんですね。それを書き直したり、書き足したりしようと思っていたんですけど、聴けば聴くほど、「これ、直さなくてよくない? このままの方がよくない?」って思えてきて。ご本人にそう伝えたら、「あ、ええの? そうか、ほな、二番、要るよな」って。ワンコーラス分のデモだったから、歌詞も一番しかなかったんですよ。で、続きを書いていただいたんですけど、それも、「これは直さない方がいい」と。歌詞に、耳に残る言葉が、あまりにもたくさんあったので。

──で、ライブに未発表の新曲を入れたかった、というのが動機だと最初におっしゃいましたが。音源として出すよりも先にライブでやりたい、というのは──。

まあ、ライブ先行で新曲をやる良さって……曲を作ってからライブでやると、やっぱり、身体になじむまでに、どうしても時間がかかるので。先にライブで何度かやって、身体になじんだ状態でレコーディングする方が、なじみもいいし、しばらくの間、ライブでしか聴けない新曲があるというのは、来てくれたお客さんにとってもいいかも、と。
あと、ライブで形ができたら、必ずしもそれをそのままレコーディングするわけではなくて、そのライブの曲と音源をどれくらい近くしたいかとか、逆にあえて突き放して別のアレンジにしてみようとか、いろいろできるじゃないですか。
「BETWEEN SLEEP AND AWAKE」に関しては、今の僕のバンドのメンバーのみなさんならではの良さ……人力感というか、得意としている演奏とか、楽器の音色とか、その中でできるいいものを作っていく。で、一方では、speedometer.さんと一緒に仕事するっていうことは、やっぱり、もともとそっちのサウンド感、オリジナルの方に寄せたいな、っていうのもあったので。

──じゃあ音源とライブでは、けっこう違うものに──。

そう、音源とライブでは多少フィーリングの違う2バージョンになるんですけど、そこは楽しみつつ作っていく感じで。だから、この曲のレコーディングは、ちょっと欲をかいたというか。打ち込みで曲を作ってもらったのに、自分のライブのバンド用にもアレンジで参加してもらったし、弦(ストリングス)も入れたし。で、せっかく弾いてもらったのに、最終的にカットしてしまったものもあるし。っていう、かなりぜいたくなことをやってしまっています。
というのは、あの、ちょっと、落ち着きたくなかった、っていうのもあって。バンドの生の音だけになると……なんて言えばいいんでしょうね、ちょっとアダルトになるというか。でも打ち込みだけにするのも、「ああ、そういうジャンルの音ね」ってなってしまう。
だから、その両方を使って作ってみた上で、そこから音数を減らしたりして。そうすることで、もっと何回も聴けるものにしたかったというか。でも、やってみてよかったです。そういう新しいアプローチをした結果、自分の中では、ネクストな曲になったので。

「HEAVENLY」は、空に向かって演奏しているような感じにしたいなあ、と思って

──もう1曲、ohanaの「HEAVENLY」は、けっこう前からライブでカバーしておられましたよね。レコーディングで歌ってみていかがでした?

ライブの時は、あんまり気にならなかったんですけど、レコーディングになると……ohanaは、3人で歌っているじゃないですか? だから、レコーディングで「ひとりohana」をやるというのは、最初は難しかったですね。3人のあの仲睦まじい感じを、ひとりで歌うってなると、曲の解釈が変わってくるので。ゲストボーカルを呼ぼうかな、とかも考えたんですけど、やっぱりひとりで歌った方がいいや、と思って。ひとりで歌うんだったら、自分の良さを出さないといけない、でも自分の良さとか自分の武器ってなんだろう、って考えて。それで、今回は、コーラスワークを工夫する方に行きました、ひとりで何声も重ねて。
あと、アレンジも……ohanaのオリジナルの「HEAVENLY」のアレンジは、なんというか、ディープなところもあるんですよね。ちょっと、ディスコードしそうな音階に行っているところもあったりして。でも、この自分のカバーは、もうちょっとオーソドックスなアレンジにしました。なんというか、空に向かって演奏しているような感じにしたいなあ、と思って。

何をやったってストレスはあるわけですよ

──堂珍さんのキャリアにおいては、今はどういう時期だと捉えておられますか。

うーん……どういう時期なんだろうなあ。まあ、ソロで言うと、今のライブバンドになって、セカンドシーズンが始まっているさなかですね。で、そうなってからレコーディングした新しい曲が、少しずつ増えていて。それをもっと増やしていけたらいいな、というのもあるし。
あと、ソロを始めて10年を超えたんですよね。まあ基本的には、ケミ(CHEMISTRY)と、ソロと、舞台(ミュージカル)っていう軸が3つあって、そこを飽きないように回っている、という感じなんですけど。
とは言え、それぞれ……まあ、何をやっていても、自分の中で満足度を得ることっていうのは、自分ひとりじゃできないし。逆に言うと、何をやったってストレスはあるわけですよ。

──(笑)正直ですね。ソロだとストレスがない、なんて簡単な話ではない。

そう。ケミをやったって、ソロをやったって、舞台をやったって、全部自分の思いどおりにはいかないじゃないですか。あたりまえですけど。そういう、ある程度制限もあるし、自由さもある中で、自分ができることをやっていくだけなので。
まあでも、そうやって3つある中で、どれもおろそかにしないで、一個一個を大事にして、まっすぐ向き合ってやっていけば、何かいいことあるんじゃないの? みたいな(笑)。そういう時期ですかね、今は。もしかしたら、どれか一個に絞っても、おもしろいかもしれないですけど……絞れないか(笑)。絞れないから、3つやってるんでしょうね。

──最後に、今年の「堂珍嘉邦LIVE 2024 ”Now What Can I see?〜Drunk Garden〜”」は、どんな内容にしたいと考えておられますか。

ちょうどリリースも重なったりと、タイミング的にはレコ発みたいなイメージではあるのですが、今年はクリスマス公演がないので、選曲も色々と織り交ぜてやれたらいいかなと。楽しみにしていてくださいね。

取材・文=兵庫慎司 撮影=冨田味我
ヘアメイク=関東沙織

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