赤パン、金パンでオリンピック二連覇達成! 阿部一二三さん
ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。
阿部一二三さん
1997年、兵庫県神戸市生まれ。パーク24所属の男子66kg級柔道家。2018年の世界選手権で妹の阿部詩選手とともに世界王者に輝き、東京2020オリンピックでも兄妹W金メダル。昨年行われたパリ・オリンピックでは見事2連覇を達成しました。
JK:今日は茶色いジャケットでカッコいいですね! なかなかおしゃれ♪ 柔道着で来るかと思ったら(笑)
阿部:結構言われます、私服は全然違うねって。私服でいると意外と気づかれないことが多いです。
JK:開会式でお会いしたんですよね、偶然に! 出るタイミングが一緒だったんですよね。
出水:阿部さんのほうから先に声をかけてくださった、ってジュンコさんも喜んでました(^^)
JK:とにかく応援してましたから! おめでとうございます! オリンピックで優勝するって最高だと思うんです。
阿部:二連覇を目指してたので、それを達成したのは嬉しかったですね。
JK:でも兄妹2人っていうのは過去にないでしょ?
阿部:ないですね。きょうだいでオリンピックに出場した選手はいるんですよ。でも東京オリンピックで、同じ日に優勝したのは僕らが世界で初めてだと思います。
JK:妹さんもかわいいですよね、詩ちゃん! 柔道家じゃないみたいな名前。
阿部:僕はザ★柔道家みたいな名前ですけど(^^;)
JK:一にも二にも三にも!みたいな(笑) 面白い名前よね、すごく単純で。わかりやすい。
阿部:ちっさいころは嫌だったんですけどね。一、二、ときて次は三連覇!
出水:ジュンコさんは柔道界とゆかりがありますよね。
JK:昔、旭化成でファッションショウをしたことがあるんですよ。そこで手伝ってくれたのがみんな柔道選手だ。吉田選手とか。だからショウをやる前に、みんなで丸くなって、「押忍!」とかやって(^^)そこからヤワラちゃんともご縁があったり・・・いい時代でしたね。
阿部:ヤワラちゃんの時とかすごかったですね!
JK:一種の柔道ブームだったわね。山下さんを中心に。やっぱり日本の国技だから、日本が強くなくちゃ! フランスのほうが強かったりするでしょ?
阿部:すごいです。柔道人口は日本の3~4倍と言われています。
出水:パリのオリンピックを見ていても、観客の盛り上がり方が!! 東京オリンピックが無観客だっただけに、落差を感じたんですけど、畳の上ではどう感じましたか?
阿部:東京オリンピックの時は、本当に静か。歓声もなかったので・・・いるのはボランティアでやってくれる子たちと、審判、コーチ、監督だけ。
JK:あれだけ静かだと怖いでしょう?
阿部:怖いのもあるんですけど、意外と集中できる。雑音がまったくないので、結構入り込める状況でした。パリは歓声がもうすごい! 観客も目が肥えてる。でもいっぱいの人に見られてるから、カッコいい投げ方しようかな、とか(笑)ある意味、東京オリンピックの時より興奮しました。気持ちは昂りましたね!
JK:でもパリのオリンピックで優勝だなんて、カッコいいじゃない!
阿部:次のオリンピックがLA、次の2032年がブリスベン。いいところばっかりじゃないですか! 東京、パリ、ロスで優勝したら、これ以上ないっすよ!
JK:でも本当は詩選手と2人で出てもらいたかった! 兄妹そっくりですよね。怖そうじゃないのよ。ふつう柔道家って大きくて、ウワッて感じ。
阿部:昔はそうですね、山下先生もそうだし、今の鈴木桂治監督とか、石井慧選手とか。でも今の柔道選手はみんな爽やか。今ドキっぽいというか、柔道家っぽくないというか・・・昔はみんな短髪だったのが、今の選手は髪の毛ものばしてるし、色も明るくしたり。みんないい意味でスポーツ選手っぽくない。
JK:柔道が特殊じゃなくて、ノーマルになってきたのね。今まではスポーツ1本だから、おしゃれもファッションもなかったんですよ。
出水:阿部選手に憧れて入って来た後輩の選手に、新しい柔道界を提示していこうというような思いはありますか?
阿部:いや、柔道家だけど、そんなに気負い過ぎず、好きにやればいいんじゃないかな。
JK:怖そうに見えないから、子どもにウケるでしょ? 子どもの柔道家を育てる意味ではぴったりじゃない!
阿部:ウケるというか、いつも喜んでくれますね。僕は軽量級でそんなに身長も大きくもないので、子どもたちも親しみが湧くというか。
JK:パリの思い出は? 試合だけじゃなく、パリ自体の思い出。もちろんエッフェル塔は見たでしょ?
阿部:見ました。凱旋門も。でも時間がなくて間近で見ることはなく・・・ただ試合に行く日はバスで通りました。やっぱり街並みがきれいなので、行くだけでテンションあがります。あとはやっぱり柔道。僕らは観客席の下の通路を通って試合会場に行くんですけど、盛り上がってるとみんな足でドンドン足踏みして、地響きみたいで! あれがタマラなかったです。
出水:あらためて4試合を振り返って、相手にポイントを取らせずある意味圧勝でしたけれど、ご自身ではどのぐらい想定通りの柔道ができたんでしょう?
阿部:ほぼほぼ100点あげていいんじゃないですかね? 対戦したことのある相手が2人と、対戦したことのない相手が2人だったんで、ある意味対戦したことのない選手の方が怖かったですね。でも鼻血が出た時はさすがに焦りました。止まらなかったので・・・もう1回出たら負けだったので。
JK:えっ、負けだったの??
阿部:そうなんです、3回鼻血出ちゃうと反則負けになっちゃうんです。僕はポイント取ってて、リードして鼻血が出ちゃったので危なかったです。
出水:不可抗力でしょう、鼻血は!
JK:それも技術なのね。
阿部:相手が狙ってたら技術でしょうね(^^;) 鼻血が止まらないよう、寝技の時も鼻をぐりぐりしてきて・・・それで2回目の鼻血が。その選手にとっては、あと1回僕が鼻血を出せば勝てる!みたいな感じだったので、危なかったです。
JK:鼻血勝ち(笑)
阿部:鼻血負けとか一番恥ずかしいですよね! 日本に帰ってこれないです(T.T)もう後は投げるしかない!と思って、投げに行きました。けっこうリスクもあったんですけど。
出水:初戦の始まる前に妹さんが2回戦で負けてしまいましたが・・・
阿部:裏のアップ会場で見てました。妹の試合は僕結構見るんです。ビックリしましたね。日本の選手みんなで見てたんですけど、全員3秒ぐらい時が止まってました。TVで見ていた方もそうだと思うんですけど・・・あんなに泣いてるとは思わなくて。妹は今まですごく順調で、大きな挫折というのがなかったので、オリンピックで大きな挫折はかわいそうですけど、この悔しさでもっと強くなれるんじゃないかな。
JK:まだ若いもの。次のロスは兄妹で行けるんですか?
阿部:目指してます!
JK:あっ、また勝たなきゃいけないのね! メダル取ったからって次に行けるわけじゃないの?
阿部:行かせてほしいなとは思うんですけど(^^;)でも出たいです!
JK:出なきゃだめでしょ、日本のためにも! 一二三で!
出水:日頃のルーティンや心がけていることはありますか?
阿部:試合前は赤のスパッツを履く。初めての大会で、母親が「赤のパンツは闘争心が湧く」って言って。だから柔道始めた時からずっと赤のスパッツを履き続けています。最近は、前日の計量に行くときも赤のパンツ、試合に行くまでは金色のパンツ。試合用に着替えたら赤のパンツ。
JK:金のパンツなんてあります?!
阿部:あります! でも僕はルーティンを減らす方がいいんじゃないか、と思ってて。ルーティンが多ければ多いほど、できなかった時に気になるので、僕は赤のスパッツを履くだけ。ルーティンを減らせば減らすほど、心に余裕ができるというか、ありのままで行った方がいいのかな、と。
出水:畳の上にのぼるまでは、闘争心と平常心、どっちが上?
阿部:最近は平常心だけど、内側は闘争心でメラメラ、みたいな。気持ちで負けると絶対勝てないので、雑念を消す。
JK:余計なことは考えない! スポーツでもなんでもそうよね。
(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)