昭和から平成、令和へと繋がれた『ガメラ』のバトン――『GAMERA -Rebirth-』監督・瀬下寛之さん×怪獣デザイン・髙濵幹さん×造形監督/光画監督・片塰満則さんが登場怪獣を語り尽くす【インタビュー】
1989年夏、小学6年生の少年たちが怪獣ガメラとの出会いを通して成長し、友情を深めていく姿を描いたアニメ『GAMERA -Rebirth-』。かつて子どもたちの味方として愛された昭和・平成のガメラシリーズを令和に蘇らせた本作は、迫力の怪獣バトルが存分に楽しめる内容となっている。
本作の監督を務めたのは、『亜人』『ルパン三世VSキャッツ・アイ』『カミエラビ』などを手がけた瀬下寛之氏。さらに、怪獣デザインに髙濵幹氏、造形監督/光画監督として片塰満則氏が参加し、時代を超えて受け継がれてきた「ガメラ」に新たな命を吹き込んだ。怪獣のデザイン、質感、アクションに、三者はどのようなこだわりを込めたのか。
アニメイトタイムズでは、瀬下氏、髙濵氏、片塰氏の鼎談を実施し、往年の特撮文化と最新の映像技術を融合させた本作の制作秘話をたっぷりと語ってもらった。ガメラ復活の物語を、創り手の言葉を通して紐解いていく。
【写真】『ガメラリバース』登場怪獣をスタッフ陣が語り尽くす【インタビュー】
それぞれが思い描くガメラのイメージ
ーーアニメ「GAMERA -Rebirth-」を手掛ける上で、この「ガメラ」という素材について、どのような印象を抱きましたか?
造形監督/光画監督・片塰満則さん(以下、片塰):子どもの頃は、ガメラはいかにも人が入っている印象があったけど、今回、瀬下監督の拘りと髙濵さんのセンスで、見事にリニューアルされたと思っています。
監督・瀬下寛之さん(以下、瀬下):嬉しいですね。ありがとうございます。僕と髙濵さんは1967年生まれで、物心つく頃はテレビで頻繁にガメラの再放送が流れていました。片塰さんは1964年生まれで映画館で観る事ができた世代ですから、印象の違いがあるかも知れませんね。
怪獣デザイン・髙濵幹さん(以下、髙濵):夏休みと言えばガメラでした。僕は『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』の年に生まれたけど、映画館に行ける年齢になる前にシリーズ自体が終わってしまって。だけど、テレビで頻繁に放送されていて、繰り返し観ていました。大好きな“カメ”の怪獣であること、どこか寡黙でひたむきにがんばる姿に自分にとって特別なものを感じていた気がします。
瀬下:「東宝チャンピオン祭り」に行って『ゴジラ対メカゴジラ』に興奮した記憶とは対照的に、ガメラはテレビで観る怪獣だったんです。特に印象が深かったのは、ガメラは子どもたちを守ってくれる存在であるということ。ですから、親しみを持った怪獣といえば、テレビで接したガメラです。再放送を通じてそのイメージが、強く自分の中に刷り込まれました。
ーー怪獣まわりでは、片塰さんの「造形監督」「光画監督」のクレジットが気になるところですが、どういった役職になるのでしょうか?
片塰:まず「造型監督」については、私自身はデザイナーでも原型師でもないんですけど、デザイナーとモデリングする人の間に立って、たとえばデザインは平面だけど、それを立体にするにあたって、奥行きや裏情報を補う役割とでも言えば良いでしょうか。いわゆる生物の場合は、複雑な3次局面をしているから、図面に起こしようがない部分もあります。そこで複数のデザイン画やスケッチを頭の中で繋ぎ合わせて立体にした際にどういった構造や造形にするのがいいのかと考えます。また今回は、動きをつける際の関節の可動域や筋肉の変形する様子を、より具体的想定して、3Dモデル作成担当者に伝えています。
ーーもうひとつの「光画監督」については?
片塰:「Director of Photography」という役職があります。これは一般的な日本語訳では「撮影監督」になるんですが…。
ーー実写映画やドラマの撮影技師、カメラマンに相当する役割ということでしょうか?
瀬下:僕のチームが求める役割は少々違っていて、「カラー&ライティング」の方針を監督する役割です。その実機能に機能性に近い言葉で訳したのが「光画監督」です。「Photograph」の一般的な訳は「写真」、それを作る行為は「撮影」ですが、語源的には「Photo」は「光」、「Graph」は「描く」を意味していて、要は光=ライティングで描く事なんです。ですから「光画監督」としました。
片塰:「写真」は、もともと報道系の人たちが使っていた言葉らしいですね。
瀬下:一方で、戦前に野島康三、木村伊兵衛、中山岩太らが創刊した『光画』という伝説の同人誌に代表される芸術運動があったり、中高の写真部のことを光画部なんて呼んでいた時代もあったんですけどね。
ーー「光画部」と言えば、ゆうきまさみさんのマンガ『究極超人あ〜る』に登場しますね。
瀬下:余談ですが、僕、その光画部のOBなんです(笑)。ともあれ「光画」という言葉は忘れられ、「写真」が一般的になりました。
片塰:そういう歴史があるんですよね。
ーー話を戻しますが、そうなると、片塰さんはデザイン回りだけでなく、べタ付きで制作に関わられていたということですか?
片塰:そうです。たとえば第3&4話に登場したジャイガーは、瀬下監督や髙濵さんとのブリーフィングを通じて、デザイン段階からヌラヌラしていて気持ち悪いとか、そういうイメージを聞いていて、「じゃあ、その感じをどうやって表現しようか?」と。特に3DCGの場合は質感も密接にかかわって来ます。それで、この場面では光の反射をどれくらい強く入れるかなど、細かいニュアンスを現場に伝えることもしていました。
アニメ「GAMERA -Rebirth-」、デザイン秘話
ーーそして怪獣デザイナーの髙濵さんですが、本作への参加の経緯をお聞かせください。
髙濵:僕は、2015年にWEBで公開された石井克人監督が作られたガメラ生誕50周年記念のプロモーション映像にもデザインで参加していて、その流れで改めてオファーを受けた形です。ただ、瀬下監督とは以前に実写の仕事でご一緒していたことがあったんですよね。
瀬下:そうなんです。某実写作品で、僕がVFX監督、髙濵さんが造形で入られていて。
髙濵:また繋がったなと。
瀬下:KADOKAWAのアニメ事業局長(当時)の菊池剛さんから「怪獣デザイナーは髙濵さんでどうですか?」と言われて、願ったり叶ったりで、その場で思わず「最高です!」と言った記憶があります。
髙濵:ありがとうございます(笑)。
ーー今回のガメラのデザインは2015年版がベースになっていますね。
瀬下:この石井監督版のガメラが本当にカッコ良くて、「岩山のような」というデザインコンセプトも素晴らしいし、これに関しては素直にベースにできないかと思いました。
片塰:僕が参加した時点では、瀬下監督の事務所に、かなり大きなガメラの造形物がありました。「もう既に立体になってるじゃん!」ってことで、仕事としてはすごく楽だったんですよ。
瀬下:その上で、僕から加えたかったのは、強さや逞しさだけでなく、知性と優しさを携えて欲しいということ。そしてアクションの幅を広げる為に、とにかく柔軟に動けること。それから、どういう理屈でこの巨大な体を動かすエネルギー源が存在しているのかといった、ストーリーのベースとなる設定面での方針を髙濵さんにお伝えしました。
髙濵:原案の2015年バージョンでは石井監督の“岩山のような”というコンセプトに従い、限界までボリュームを持たせたデザインにしました。それが今作のエネルギー源であるオリリウムの巨大なチャンバーを甲羅内に持つという設定にも合致し、更なるボリュームアップに挑戦しています。また、瀬下監督の“怪獣プロレスをやりたい”という要望を受けて、2015バージョンでは長かった爪をオミットして、掴んだり殴ったりと何でもできる手と破壊力を感じさせるボリュームのある前腕にデザインを変更しています。
ーーその他、大きく変えた点はありますか?
髙濵:目は2015年版の石井監督のオーダーでは、ライオンを思わせる肉食の目だったんです。ちょっと感情を読み取れなくするという意図がありまして。それを今回は瀬下監督が仰っていたように、厳しさの中にも優しさや知性を感じさせる人間に近い眼差しにしました。これらの変更がリバースガメラを決定づけるとりわけ重要な要素になったと思います。
片塰:僕にとってはこの”人間味”に魅力を覚えましたね。
髙濵:それと、3DCGモデルでは、足が動物のような逆関節になっています。よりアクティブなアクションに対応できそうにアレンジされていて、これは片塰さんが判断されたんじゃないかと思っているんですけど。
片塰:逆関節というか、カカトを上げてつま先立ちにして、犬や馬のように身体能力が高いといったイメージです。
髙濵:なるほど。
片塰:俊敏なマッチョなんて現実の生物には存在しないですけど、怪獣なら有り得るんじゃないかなと。それで、なおかつ監督が仰っていたように知性もある。
髙濵:話はちょっと変わるのですが、僕はずっと特撮の現場で実写の仕事をしてきた事もあり、今回のアニメの場合、怪獣たちが最終的にどういう見た目(テクスチャ、質感等)になるのか、正直、完全にイメージ出来てないところがあり、少し不安もあったんです。アニメでは表面の細かなディティールやテクスチャの表現は実写に劣ると漠然と考えていたのですが、テクスチャの無駄な部分が整理され、強調したい要素が意識的ににコントロールされる事で、実写とは異なった、より積極的な絵画的表現ができるんだなと改めて感じました。ジャイガーの妙にいやらしいヌメリ感とか、実写ではなかなか出ないでしょう。もちろん片塰さんが明確なビジョンを持って作り上げられたからこその結果だと思うんですよね。
片塰:今回、キャラクターデザインはシンプルな作画のスタイルですが、怪獣は対照的に、細かくディテールを入れたかったんです。ただしキャラと怪獣は両方とも”絵で描かれている”ように見せたい。そこで思いついたのは図鑑に掲載されているイラスト。細密に描かれている絵でありながら、形を正確に伝える機能性のあるイラストを目指しました。いわゆるセル画風のハイライトや影をシンプルな色面で塗る、といった方向性は最初から考えていませんでしたね。
髙濵:かなりの差し色が部位ごとに入っていますよね。
片塰:キャラクターのスタイルに合わせてシンプルな線で怪獣を描いてしまうと、巨大感を出すのが大変だというのもありました。エアブラシのようにボカシの要素を入れていくとか、色々やりようはあるにはあるんですけど。それからキャラクターに合わせて線を太くしてしまうことにも抵抗がありました。
片塰:作画のアニメーションでは、紙のサイズや鉛筆の線の細さの限界を考慮して、マンガからアニメにする際には線がつぶれないように上手く線を減らしたり、形を整理をしているのですが、怪獣でそれをやると結局、巨大感からどんどん遠ざかると思っていて、そういう意味でも、図鑑のイラストなら、絵としての細密さ、実物そのものの大きさを正確に伝える姿勢があるんじゃないかなと考えた次第です。
ーー先ほど片塰さんのお話にあった「怪獣プロレス」についての拘りについて瀬下監督にお聞きしたいと思います。
瀬下:監督としては、ストーリー、キャラクター、世界観、全てにおいて良いものを目指したいんですが、今回は「怪獣バトル」に全ての力を注いだと言っても過言ではありません。日本のCGアニメも含むアニメーション作品で描いた怪獣バトルとしては、これ以上ないくらいの素晴らしい成果を出せたんじゃないかなと手応えを感じています。
髙濵:ここまで正面切って、真面目に怪獣プロレスを描いた作品はないんじゃないですか?
瀬下:投げたり、持ち上げたり、引きちぎったり……。いわゆる大人の事情、予算とスケジュールさえ許すなら、この5倍くらいの戦闘シーンを作りたかったですよ(笑)。
片塰:それはそれで全編バトルになってしまう(笑)。
瀬下:極論すれば、とにかく怪獣同士が戦っているアニメにしても良かったと思うくらい。理屈は抜きで(笑)。
昭和ガメラに対する思いなんですが、ガメラに守ってもらった少年たちが、ガメラを守ろうとする話をどうしても書きたかったんです。一方で、監督としては無茶苦茶な発想ですが、髙濵さん、片塰さんによって素晴らしいデザイン&造型による怪獣が生まれ、そして動かしてもらっているうちに、「怪獣が戦っているだけのアニメでもいいかな」と思っていた自分もいました(笑)
昭和から平成、令和へと繋がれたガメラのバトン
ーー昭和ガメラ怪獣のリブートも話題ですが、登場順はどのようにして決めていったのでしょうか?
片塰:これは瀬下監督のほうで何か考えがあったのですか? 僕が参加した時点では脚本が進んでいて、その辺りは既に決まっていましたよね。
瀬下:物語がエスカレートしていく順です。子どもたちが生まれ育った町に突如飛来するギャオス。少年たちがガメラと出会い、仲間も増え、積極的にこの異常な出来事に働きかけようと自警団の真似事をする中、地下で遭遇するジャイガー。そして財団に連れられ船出してからの深海怪獣ジグラ。四角いリングのような与那国採掘基地に到着したら、ルチャ・リブレ(※メキシコの空中殺法を売りにしたプロレス)のような身のこなしで襲いかかるギロン。そして宇宙へと逃亡した際には、宇宙怪獣バイラス。…と、まさにベタですが、子どもたちの冒険に合わせた順番で怪獣たちを登場させることを最初から決めていました。脚本開発開始より前です。
ーートップバッターはギャオスですね。
髙濵:ギャオスも、石井版から少なくともデザインに関してはあまり変えていません。ギャオスは平成ガメラでも活躍していて「ギャオスといえばあれでしょ!」くらいに固定したイメージがあるけど、石井版では顔や雰囲気はかなり変えたつもりで、ヘビのような狡猾な感じとか、ちょっと気持ち悪い方向性に持って行きました。そこに今回はマケットのアーティストさんの味付けが加わりました。
片塰:マケットのアーティストは、ガメラは越智光信さん、ギャオスは吉田雅則さんが担当していて、これはそれぞれの持ち味に合わせて私の方で割り振りました。まず、吉田さんは生物、特に鳥の造詣がとても深く、それこそ学会発表で使われるよう図像を作られている方で、生物としての理屈を踏まえて、かつ、造形としての面白さを加味できるのは、吉田さんを置いて他にいなかったと思います。
瀬下:吉田君も越智さんも、僕がスクウェア(現スクウェア・エニックス)で「ファイナルファンタジー」の映像制作に携わっていた頃の同僚です。二人とも3DCG造形に関しては、国内トップクラスの実力ですから。最高の仕事をしてくれました。
ーーギャオスに関しては監督からどういったオーダーを出されましたか?
瀬下:石井監督版のデザインがとにかく素晴らしかった。僕からのオーダーは本作の世界観に合わせた調整だけです。
髙濵:ギャオスは少し特殊な場面などでどんな動きをするのか、ポーズサンプルとかシーンごとのラフスケッチをかなりたくさん描いた記憶があります。
片塰:舌が異常に長い、というのもありましたね。
瀬下:舌の長さ、長くしてもらいましたね。それから超音波メスも色々お願いしました。
髙濵:超音波メスも色々なパターンを描きました。
片塰:実際に映像で描かれた超音波メスの吐き出し方も、髙濵さんのイメージがベースになっています。
瀬下:今回、髙濵さんには怪獣本体だけでなく、こういうエフェクト的な部分についてもたくさんデザインをしていただきました。
髙濵:ギャオスは、ポーズのバリエーションが1番多い怪獣でしたね。出番も地上から空中まで色々とあって。
瀬下:幼体ギャオスも、髙濵さんの拘りが色濃く表れていますよね。
髙濵:これは自分でもお気に入りです。
片塰:打ち合わせで僕が描いたラフは、可愛いキャラで非常にあざとさが出ていたんだけど、髙濵さんのデザインは生物としての説得力がすごい。
髙濵:最初から可愛い怪獣として考えると、非常に媚びたデザインになってしまうんですよね。ぬいぐるみ的な可愛さというか。動物としての可愛さって、表情は割と無表情なんだけど、その時々でちょっと耐えているとか、辛いとか、背中で語るじゃないけど、そういったところから感情が伝わればいいなと思っていました。
ーーその他の怪獣についてもエピソードがあればお聞かせください。
片塰:瀬下監督からは、自然に発生した生物ではなく、人為的に研究室で作られた生物なので、工業製品のプロトタイプ、製品版、改良版といった具合に、デザインされた経緯や履歴が感じられるものにしたいと説明がありました。
瀬下:この作品の怪獣たちは、いずれも10万年前、古代人によってデザインされた生物なんです。そういう理屈で、開発の経緯を考えながらデザインや造形を進めてもらいました。
ーーバイラスやジグラ辺りはオリジナルからかなり変えた印象を受けましたが、いかがでしょうか?
髙濵:バイラスなんかは、そういう理屈に当てはめた結果であり、僕としては特に変えたつもりもないんですよね。
瀬下:めちゃめちゃユニークで怖いやつに仕上がりましたけど、僕らからしたら「昭和版の通りじゃん!」くらいの感覚でもあります(笑)。
髙濵:逆にジグラは意識的にかなり変えました。
瀬下:造形の方向性が1番変わったのはジグラかも知れませんね。
髙濵:「これが決定版だな」というのがなかなか見えなくて。
瀬下:ジグラはご苦労をおかけしました。膨大なスケッチの中でも転換点になったものがありましたね。NHK版第6話で対馬に上陸してきた直後の、あの手をついたフォルムが方針を決めました。
髙濵:オリジナルのジグラも地上に上がる場面があって、陸に上がったから動けない、という表現ではあるんですけど、本当にただ立っているだけなんですよ(笑)。ガメラと正面を向き合って対峙する場面があるんですけど……。
瀬下:2体とも突っ立ってるだけのやつ(笑)。
髙濵:(笑)。それを今回は上半身が異常に発達していて逆に脚がとても貧弱なので、いざらないと動けないと。完成した第6話では、それがとても情感豊かに表現されていました。
片塰:ギャオスもジグラも他の怪獣もそうなんですけど、髙濵さんのコンセプトアートに助けられたところが非常に大きかったですね。瀬下監督が「髙濵さん、ナイスです!」と言っていた記憶があります。
瀬下:言いました(笑)。
片塰:それを受けて監督の筆も走るし、プロットや脚本に反映させたところが多々ありましたね。
ーー今回、オリジナルからバルゴンが登場しなかったのは何か理由があったのでしょうか?
瀬下:バルゴンはとにかく好き過ぎて(笑)。あと、バルゴンと言えば虹色殺人光線もあるけど、基本は冷凍怪獣ですよね。この「冷凍」という特殊能力を今回のストーリーでは生かし切れないというか、とっておきたかったんです。続編に。まだ全く決まってないですけど(笑)。
片塰:四つ足という意味ではジャイガーと被りますしね。
瀬下:そこはノーコメント(笑)。まあ、まだ出てない怪獣はいっぱいいますし。
髙濵:イリスやレギオンも。
瀬下:昭和怪獣ではバルゴンだけリブートされなかった結果となりましたが、それは僕が好き過ぎて今回の作品では上手く扱えなかったのが、裏目に出たということです(笑)
片塰:最終2話では、エスギャオスが登場していて、仕事としてはギャオスの延長でやりやすかったんですけど、「ここは新しい怪獣じゃないの?」とちょっと驚いたんです。瀬下監督はその辺りはどのような考えだったんですか?
瀬下:開発された生物というストーリー上のエッセンスをエスギャオスに象徴させたかったんです。
髙濵:先ほど言っていたような改良版、バリエーションとして登場したと。
片塰:やっぱりそこに行き着くわけですね。
瀬下:劇中では説明してないけど、この事に象徴される世界観が作品の根幹でもありますので。
ーー最後に改めて『GAMERA -Rebirth-』の仕事を振り返ってみてのお気持ちをお聞かせください。
片塰:怪獣の登場順が段々とエスカレートしていく、という話は今日、この取材で初めて知りましたが、奇しくも怪獣作りもエスカレートして行ってるんですよね。エスギャオスなんか造形的に翼に穴が開いていたり、ボロボロなんだけど、ものすごい作り難い形をしているんです。でも、我々も関わったアーティストの皆さんも、個々に苦労はあったけど、数をこなすと共に”怪獣慣れ”していたから、エスギャオスも成立させれたと思うし、こうして改めて振り返ってみると、連動していたんだなと思いますね。
髙濵:僕は平成ガメラシリーズから関わって来て、ガメラは自分のライフワークだと勝手に思い込んでいるんですけど、それこそ、特撮の現場スタッフだった時代から、いつか怪獣デザインを手掛けてみたいと思い続けていました。それが2015年版を経て、今回の『GAMERA -Rebirth-』では1から携わることができて、本当に念願が叶った思いです。もちろん反省点もあるんですけど、とにかく嬉しくて楽しんでやれた仕事で、こうして思い返してみると、まるで目の前に食べきれないくらいのご馳走を並べられたような毎日でした。
瀬下:このガメラを題材に、監督の好きなようにやってください、くらいの勢いでリブートさせてくれたKADOKAWAアニメ事業部の皆様、そして支えてくださったプロデューサー陣への感謝があります。かつ、今回制作を担ってくれたENGIさん、当時まだ設立して2年くらいと日が浅い中、3DCG部門の組織作りと同時に、本作を作り上げてくれました。チーム作りながら長編アニメ作る…って(笑)、過去に類を見ない大変さだったと思います。感謝しかありません。ガメラと怪獣たちについては、片塰さんと髙濵さん、この偉大なお二人のお力で「日本にはガメラもいる!」と胸を張って言える、まさにゴジラと並ぶ二大怪獣として令和の世に再び生まれることができたと確信しています。湯浅憲明監督の昭和ガメラ、金子修介監督と樋口真嗣特撮監督の平成ガメラ、そして今回の『GAMERA -Rebirth-』と、僕としてはリレーのバトンを受け継ぐつもりで作ったつもりです。ガメラを…この個性的で魅力溢れる大怪獣を、世界中の皆さんが、世代を越えて楽しんでほしい。そういう思いでいっぱいですね。
[インタビュー/トヨタトモヒサ]