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新たな茶文化の発信拠点。静寂なる博多旧市街で、日本茶とアートに耽る

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御供所町 SABOE HAKATA 1階売店

福岡には観光する場所がない……なんて、とんでもない。福岡県は全国で5本の指に入るほど神社仏閣の多い、歴史や伝統が息づく街です。中でも、古の町並みや風情を今に残す「博多旧市街」の一角、御供所町が今回の目的地。賑やかな大博通りを一本入ると喧騒は遠退き、石畳の町筋は凛とした空気に満ちています。

歴史、文化、伝統が交わる


博多旧市街の新名所

店舗より提供(写真:伊藤 信)

訪れたのは、今年11月3日に誕生した日本茶専門店「SABOE HAKATA」。日本橋茅場町の現代美術画廊「BASE GALLERY」が新たに開いたアートギャラリー「BASE GALLERY HAKATA」に隣接するかたちで、この地に根を下ろしました。

ここは「茶を通して世界とつながり、茶の発展に貢献していくこと」を目的とした「SABOE=茶方薈(さぼえ)」の新たな文化発信の拠点です。「茶方薈」は、日本料理店「八雲茶寮」や和菓子店「HIGASHIYA」(共に東京)などを手がける「SIMPLICITY」の代表・緒方慎一郎さんが設立した組織。「櫻井焙茶研究所」(東京)の櫻井真也さん、「万 yorozu」(福岡・赤坂)の徳淵卓さんと共に、新たな日本茶の楽しみを追求する活動を続けています。

「聖福寺」境内

そして、ここ博多旧市街は、中世における日本最大の貿易港湾都市・博多の中心として栄えた歴史ある土地。御供所町界隈の寺院は、かつて外交の窓口として、大使館や貿易基地のような役割も果たしていたそうです。

店舗のすぐ側には、宋より茶の種と禅宗の飲茶の礼法「茶礼(されい)」を持ち帰り、日本に茶を広めた茶祖・栄西禅師が創建した日本最古の禅寺「聖福寺」が。そこから少し南東へ進んだ先には、うどん・そば・饅頭・羊羹などの製法を日本に伝え、静岡茶の祖としても知られる聖一国師が創建した「承天寺」が鎮座。茶の歴史と深い縁を持つこの地に、茶で客人をもてなし、文化・芸術を伝える拠点を構えるなんて、本当にロマンがありますよね。

1階は売店。


自由に気軽に、日本茶を楽しむ

それでは、店内へ足を進めましょう。「SABOE HAKATA」は、東京・麻布台ヒルズにある「SABOE TOKYO」に続く実店舗。1階から2階につながるガラスのファサードが印象的で、1階はお茶やお菓子、茶器などを販売する売店となっています。

入口側のカウンターには、幕末から明治にかけて日本茶の輸出が盛んだった長崎で、石畳や石橋などに用いられてきた“諫早石”を使用。「日本茶を世界へ広めていきたい」との願いを込めているそうです。

店舗より提供(写真:伊藤 信)

看板商品の「T., Collection」(リーフ1,944円〜・ティーバッグ8P・1,890円〜)は、“日常の中で気軽に楽しめる日本茶”をテーマに「茶方薈」が独自にブレンドしたお茶のシリーズ。煎茶、玉露、番茶といったさまざまな日本茶の特徴を捉え、時に果実や穀物等を組み合わせた10種類の定番ブレンドと2種類の季節限定ブレンドが揃います。

中国茶の「蓋碗(がいわん)」をイメージしたパッケージは土に還る天然素材で作られており、陶器のように滑らかな質感も素敵。容器、お茶を淹れる茶器、湯飲みと、3通りの使い方ができる優れもので、旅先のホテルなどでお茶を楽しむ際にも重宝してくれます。

ナンバリングにも意味があり、1から10の番号は一日の流れ、時間軸を表現しているそう。例えば、煎茶をベースに柚子と黒文字をブレンドした「1 果 Ka」は、爽やかな朝の一杯に。大麦やとうもろこし、黒大豆を合わせた「10 豊 Ho」は敢えてお茶を加えていないカフェインレスで、就寝前の一服に……といった具合です。

カウンターでは茶葉の香りを確かめ、一部試飲することができ、シーンや好みに合わせたお茶を選べますよ。ちなみに、触り心地の良い試飲用の茶杯は、佐賀・嬉野の窯元でつくられた特注品だそうです。

日本茶に華を添える「HIGASHIYA」の菓子

続く「T., Collection」の隣は、お茶と好相性の菓子コーナー。豆菓子や羊羹、「棗バター」(6個入り2,376円)といった、「HIGASHIYA」のお菓子が並んでいます。

これまで福岡では「万 yorozu」でしか味わうことができなかった「HIGASHIYA」の菓子を、こうして購入できるとは嬉しい限り。贈り物にも最適で、「果実と木ノ実の道明寺羹」や「柿衣」といった季節限定の菓子も用意されていました。

加えて、聖一国師にちなみ、「SABOE HAKATA」限定で販売されている蒸したての「甘酒饅頭」(1個200円)にも注目です。蒸籠で蒸された饅頭の生地は、ふっくら、しっとり、甘酒の優しい香りがふわり。中の粒あんは甘さ控えめで、小豆のふくよかな風味が心地よく広がリます。

さらに、1階の奥では「SIMPLICITY」のプロダクトブランド「Sゝゝ[エス]」の茶道具も展示販売。玉露を淹れるための機能と形状を追求した茶器「平宝瓶(ひらほうひん)」や、茶の香りがより際立つ「細長湯呑み」など、喫茶のひと時を彩る美しい道具が揃っています。

2階は茶房。


深々と、日本茶の魅力に触れる

さて、「SABOE HAKATA」の楽しみはまだまだ終わりません。売店奥の階段を上った2階フロアに設えられたのは、「万 yorozu」の茶司・徳淵卓さんが監修した茶房。こちらではお茶や菓子に加え、日本茶を使ったカクテル「茶酒」などのお酒もゆったりと味わえます。

白い漆喰の空間にコの字型の黒いカウンターが映え、お茶を淹れる「万 yorozu」の森岡三保子さんの美しい所作にもうっとり。「BASE GALLERY HAKATA」にも展示されている柄澤齊氏の版画作品など、品良く飾られたアートにも目を奪われます。

今回は、お茶・菓子・あて八寸がセットになった「茶と菓子とあて」(2,750円)をいただきました。お茶は「T., Collection」、お菓子は「HIGASHIYA」のもので、それぞれ1種類ずつ選ぶことができます。

私がいただいたのは、緑色が美しく冴える「4 蒸 Jo」。日本茶の代表的な製法である蒸す工程を経た「蒸製玉緑茶」と「深蒸煎茶」、茎茶とも呼ばれる「白折(しらおれ)」のブレンドです。香りは若葉のように青く、清々しく、舌にのるまろやかな甘味と旨味が格別。ほのかに広がる渋みも心地よく、心と体がゆるりと解けていくようです。

選んだ菓子は1月下旬ごろまで登場する「HIGASHIYA」の冬の名品「柿衣」。長野県産の市田柿を丸ごと一つ使い、間に含蜜糖を用いた特製の白餡と口どけの良いバターを挟んだ贅沢なおいしさです。一煎、二煎とお茶をいただいていると、程なくして「あて八寸」も供されました。「棗バター」、豆菓子の「竹炭大豆」、「かりんとう」とこちらも逸品揃いで、お茶の時間を一層豊かにしてくれます。

日本茶・アート・博多旧市街の新たな愉しみがここに

お茶をいただく前や一服後は、隣接する「BASE GALLERY HAKATA」へ。入口は1階の廊下の先で、ギャラリーを象徴する「イサム・ノグチ」の彫刻「Pylon」が迎えてくれます。2025年2月11日(火)までは、開廊記念展「清寂のかたち」を開催。

――「清寂」は、茶道の精神を表す禅語「和敬清寂」に導かれた言葉。静けさのみならず清澄にして不動なさまを表していると言います。古刹に囲まれた静謐な町を散策し、静かな心で日本茶やアートに親しめば、いつもとは違った時や景色を感じられるはずです。

SABOE HAKATA(サボエ ハカタ)
福岡市博多区御供所町5-27 グラムビル御供所町1、2F
092-260-8855

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