シュートストップ技術だけじゃなく、DFと連動して守る方法まで Jクラブで全カテゴリーを見ていたGKコーチが教えるGKキャンプを開催
ゴールを守る最後の砦として、専門的なスキルとメンタルが求められるのが、ゴールキーパーというポジションです。ジュニア年代のゴールキーパーを、どのように育成すべきか----。そんな問いに答えてくれるのが、プロから子どもまで、幅広い指導経験を持つ松下太輔コーチです。
松下コーチは2006年末までヴァンフォーレ甲府で選手としてプレーした後、指導者としてのキャリアをスタート。社会人クラブや星稜高校(石川)での経験を経て、ヴァンフォーレ甲府に戻り、2010年から2018年4月まで、トップチームのGKコーチを務めました。
その後、ヴァンフォーレ甲府アカデミーでGKコーチのチーフとして、ジュニアからユースまでの育成カリキュラムを構築・実践。現在は日本文化大学で指導にあたっています。
「幼稚園児から大学生、プロまで、ほぼすべての年代の指導経験があります」と穏やかに語る松下氏。今回は、7月末に開催予定のサカイクGKキャンプを前に、小学生年代のゴールキーパー育成に関する思いを聞きました。
(取材・文 鈴木智之)
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■ゴールディフェンスからスペースディフェンスへ
松下氏がゴールキーパーの指導で大切にしているのは、年代に合わせた段階的な育成です。
「シュートストップは大前提として、小学生年代ではまず『ゴールディフェンス』(ゴールを守る技術)に重きを置きます。そして6年生くらいになると『スペースディフェンス』の基礎も教え始めます。相手のスルーパスに対する準備や、サイドからクロスが上がる時の正しい体の向きなど、ゴールを直接守るだけでなく、スペースを管理する技術も教えていくことが大切だと考えています」
これは中学生になり、ピッチサイズとゴールが大きくなったときのギャップを埋めるための準備でもあります。
「ゴールを守る観点から考えると、シュートストップだけではなく、相手にシュートを打たせる前にボールを奪うという意識も、11〜12歳くらいから少しずつ教えていきます」
■「常に」考えるキーパーを育てる
松下氏が強調するのは、ピッチ上で常に「考える」姿勢です。
「キーパーは試合中、ピッチのどこを見るべきか、どの選手と連携を取るべきかなど、常に考え続ける必要があります。ボールが遠くにある時でも、ちょっと休憩ではなく、集中し続けることが大切です」
例えば、味方が攻撃している場面でも、「もしこの瞬間にボールを奪われたら、最も危険なのはどこか」を考え、相手のストライカーをマークしているセンターバックとコミュニケーションを取るなど、先を考えて準備することの重要性を説きます。
■サカイクGKキャンプで目指すこと
7月末に開催予定のサカイクGKキャンプでは、基本技術の習得はもちろん、「考える力の育成にも力を入れたい」と松下氏は語ります。
「キャンプでは基本技術を教えることはもちろん、トレーニングの間には映像を使ったミーティングも行います。そこで子どもたち同士がディスカッションする機会を作りたいです。『僕はこう思う』と、自分の意見を言葉にして伝えられるようになれば、チームに帰ったときに仲間からの信頼も高まります」
また、参加者それぞれの課題にも丁寧に向き合う予定です。「ハイボールが苦手」「1対1の場面で飛び出すのが怖い」など、子どもたちが抱える具体的な悩みを一つでも解決できるよう、個別対応にも力を入れます。
「キーパーの成長には、課題を一つずつ改善し、実戦で試し、失敗を次の成功につなげるというサイクルが大切です。このキャンプで、そのプロセスも体験してほしいですね」
■キーパー仲間を増やそう
最後に、サカイクGKキャンプへの参加を検討している子どもたちへ、温かいメッセージを送ります。
「小学生の場合、チームにキーパーが2、3人しかいないことが多いと思います。まずは『キーパー仲間を増やそう』という気持ちで、気軽に参加してみてください。同じ悩みを持つ仲間と出会い、『そういう問題、僕も経験したことがある』と共感し合い、一緒に解決策を見つける場にしたいです」
松下コーチは「一方的に教える」というスタンスではなく、「子どもたち自身が、課題を解決するための手助けをする」という姿勢で指導に臨むと言います。
子どもたちの自主性を尊重しながらも、プロの目線から的確なアドバイスを提供する。そんな貴重な学びの機会になりそうです。
サカイクGKキャンプは「ゴールキーパーをしている」「もっと上手くなりたい!」「成長したい!」と思う子にとって、Jクラブでの指導経験を持つコーチから直接学ぶことのできる、貴重な機会です。ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
きっと、ひと夏の思い出以上に、サッカー選手として成長するきっかけとなる経験ができることでしょう。