肝臓を休ませる鍵は「筋肉」にあり!「脂肪燃焼」と「疲労回復」のメカニズム
日本人の成人の3人に1人が脂肪肝と推計される現在。肥満解消と脂肪肝・糖尿病改善のための専門外来「スマート外来」の担当医・尾形哲先生が、肝臓脂肪を落とすためにすすめているのが、「脂肪燃焼スープ」です。これは、鶏むねひき肉を使った「スープストック」を活用し、一食で必要なタンパク質をしっかり摂取できるスープのこと。先生の著書『肝臓から脂肪を落とす 脂肪燃焼スープ』(KADOKAWA)では、豊富な食物繊維と、代謝を高める食材を組み合わせることで、低糖質なのに満腹感が持続する脂肪燃焼スープの数々を掲載しています。今回はこの本の中から、体の内側から健康を取り戻し、元気な毎日を送るためのヒントをご紹介します。
※本記事は尾形 哲(著)による書籍『肝臓から脂肪を落とす 脂肪燃焼スープ』から一部抜粋・編集しました。
鶏むね肉には脂肪燃焼を助ける「BCAA」が多い
体にとってメリットの多い鶏むね肉ですが、脂肪燃焼を目指すうえで最大の注目成分が、豊富に含まれる「BCAA」です。
BCAAは「分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acids)」のことで、ロイシン・イソロイシン・バリンという3つの必須アミノ酸の総称。筋肉量や代謝を上げるために重要なアミノ酸で、食事から摂取する必要があります。
「ロイシン」には、"筋肉を作るスイッチ"を入れる働きがあります。
体が筋肉を合成するときには、「mTOR(エムトー)」というタンパク質合成を指令するスイッチを入れます。mTORは体の「成長」と「代謝」をコントロールする司令塔のようなタンパク質で、このスイッチを入れるのがロイシンです。
ロイシンが体内に入ると、mTORが活性化して筋肉の合成がスタート。筋肉の分解を防ぐ働きもあり、筋肉の減少を阻止します。
鶏むね肉にはロイシンが特に豊富で、タンパク質を摂っても筋肉がつきにくい40代以降の体にとって頼もしいアミノ酸です。
「イソロイシン」には、筋肉に糖を取り込んでエネルギーにする働きがあります。
糖を筋肉や肝臓でエネルギー源として素早く利用し、運動時には糖の消費を助けながら、脂肪の燃焼もサポートします。イソロイシンには血糖値を安定させる働きもあり、脂肪が気になる人はもちろん、高血糖が気になる人にも必要なアミノ酸です。
「バリン」には、筋肉の分解を防ぐ働きがあります。
運動中やエネルギー不足のとき、体は筋肉を分解してエネルギーにしようとします。そんなとき、バリンは筋肉の分解を抑えて筋肉を守るように働きます。"筋肉の守り役"といえるアミノ酸です。さらに、バリンは集中力の低下や疲れやすさに関わる脳内物質セロトニンのバランスを整えて、疲労感を軽減すると考えられています。
鶏むねひき肉で作るスープストックからはBCAAをたっぷり摂れるので、本書では「BCAAスープストック」と呼んでいます。
筋肉だけじゃない! 「BCAA」は肝臓もサポート
脂肪燃焼スープからBCAAを摂ると"肝臓が休める"ことにもなります。
体内で発生する有害物質のひとつに「アンモニア」があります。
アンモニアは主にタンパク質の代謝によって生じ、通常は肝臓で処理されています。しかし、量が増えると肝臓に大きな負担がかかるのです。
ここで重要なのが"筋肉"です。 筋肉には、アンモニアを一時的に取り込んで処理する力があります。
つまり、筋肉が十分なら、アンモニア処理を肝臓だけに頼らずに済むのです。
肝臓にとって、夜間は疲労回復や解毒に専念する時間帯です。
筋肉がアンモニアの処理を手伝えば、肝臓は夜間にゆっくり休むことができ、全身の回復がスムーズになります。BCAAを摂取して筋肉を守り育てることは、肝臓の"休息時間を増やす"ことにつながるわけです。