大崎・五反田駅の中間エリアに「大崎リバーウォークガーデン」が誕生。市街地再開発の全体像を解説
大崎駅と五反田駅の中間エリアで一体的な複合型再開発
現在、JR大崎駅(おおさきえき)とJR五反田駅(ごたんだえき)の中間に位置する東五反田二丁目の一部で市街地再開発事業が進められている。両駅ともに品川区の北部に位置するJR山手線の構成駅だ。
再開発が行われているエリアは、JR大崎駅から徒歩4分、JR五反田駅から徒歩6分の位置している。今年1月には、再開発組合員である東急不動産株式会社より街区名称を「大崎リバーウォークガーデン」に、住宅棟の名称を「ブランズタワー大崎」とする発表があった。
大崎駅や五反田駅周辺は、国レベルで市街地再生を推進する「都市再生緊急整備地域(都市再生特別措置法に基づくもの)」に指定されており、2002年7月指定以降、当該地域を中心に数多くの市街地再生が完了している。現在、両駅周辺エリアのうち2ヶ所で建築工事が進んでいる。
本稿では、大崎駅・五反田駅周辺で進行中のプロジェクトのうち、両駅へのアクセスに優れている東五反田二丁目第3地区(街区名称:大崎リバーウォークガーデン)のプロジェクトに関して、いつ頃完成するのか、加えて、両駅周辺における再開発プロジェクトを踏まえ、今後、どのような街の変化があるのか探っていく。
なぜ市街地再開発が始まったのか?背景と都市政策との関係
はじめに、大崎駅・五反田駅周辺で市街地再開発が行われるに至った背景として、「都市再生緊急整備地域」に指定されていることが大きい。
「都市再生緊急整備地域」とは、2002年に公布された「都市再生特別措置法」に基づき政令で定められるもので、国が市街地の再生を重点的に支援するエリアである。
同法については、近年、コンパクトシティ政策を推進するものとして不動産業界からも注目されているが、法の制定当初はバブル崩壊後の土地利用の転換や日本経済の立て直し、国際競争力の強化などを目的に、東京都心をはじめとする大都市に重点を置いた緊急的な市街地再編の手法として都市政策の一環として導入された。
大崎駅・五反田駅周辺では、2002年7月に約61ヘクタールの駅周辺地区が「都市再生緊急整備地域」に指定され、現在に至るまでに14の再開発プロジェクトが完了・進行している。
また、行政計画から再開発を捉えてみると、東京都の「都市計画区域マスタープラン」において、大崎駅周辺は「国際ビジネス交流ゾーン」に位置付けられ、研究開発機関を中心とした企業の立地によって東京のものづくりをリードする拠点としての将来像が定められている。さらに、品川区の「都市計画マスタープラン」においても、都の副都心にふさわしい都市像の実現に向け、積極的な市街地再生が掲げられている。
再開発の歴史を遡ると、品川区内で初めて市街地再開発事業が実施されたのは、「大崎ニューシティ」であり、1987年に竣工している。大崎駅に直結するこの再開発は、工場跡地を活用するかたちで行われた。
かつて、五反田駅・大崎駅周辺は工場が多い工業エリア(上図参照)であり、工業を中心に活気ある地域であった。しかし、戦後、1959年に工場等制限法が制定されたことで、大都市内部での工場建設が制限され、徐々に郊外への移転が進んでいく。その結果として工場跡地が生まれ、土地の有効利用という課題に直面した。
こうした背景を受け、大崎・五反田エリアでは住宅や商業・業務が共存する新たな土地利用が進められてきた。かつての工業地帯から、今や都市機能と暮らしが融合するエリアへと変貌を遂げつつあり、再開発を通じてそのポテンシャルをさらに高めている。現在進行中のプロジェクトもまた、そうした長年の都市構造の変遷の延長線上にあるといえる。
今回の再開発エリアでは、2015年に再開発協会が発足、翌年には再開発準備組合が設立され、市街地再開発事業に必要な都市計画は2020年に決定された。2023年11月には施設建築物の工事に着手し、2027年5月の竣工を目指して工事が進められている。
市街地再開発事業の概要
再開発では、施行面積約1.6haにおいて1街区には地上20階建て高さ約103mの業務棟が、2街区には地上40階建て高さ約150mの住宅棟(保育所含む)がそれぞれ整備される。これらに加えて約1,500平方メートルの公園や、約700平方メートルの広場、幅員5〜6.5mの緑道なども確保される。
また、再開発が行われているエリアの特徴として南側には目黒川が流れており、親水空間との一体となった憩いの空間が創出される予定となっている。
建築中の建物については、再開発組合が公表している事業計画書(最終閲覧:2025年4月3日)によると、災害対応として、業務棟および住宅棟ともに、居住者や在館者、帰宅困難者用を対象とした防災備蓄倉庫が確保されるほか、非常用発電設備の設置、さらには浸水ハザードを考慮した電気室等のなどの設備機器の2階以上への設置、駐車場への防潮板の設置が計画されている。
また、住宅棟では、分譲住宅として約389戸(1R〜4LDK)が設けられる予定となっている。総事業費は、約1,030億円予定しており、このうち、補助金は約220億円、参加組合員負担金および保留床処分金で約810億円を見込んでいる。
計画建築物の概要
<業務棟>
・建築敷地面積:約9,210m2
・建築面積:約4,080m2
・延べ面積:約69,230m2(容積率対象延べ面積:約59,850m2)
・階数:地下2階、地上20階
・建蔽率:約 44%
・容積率:約650%
・用 途:事務所、店舗、駐車場、駐輪場
・構 造:鉄骨造
・高 さ:約103m
・付帯施設:駐車場124台、駐輪場110台、自動二輪駐車場6台
商業棟の名称は確定しておらず、現時点では「(仮称)大崎コアプロジェクト」とされている。なお、現在(記事投稿時点)、東急不動産株式会社において入居テナントを募集中のため気になった方は、以下のURLから情報を確認してみてほしい。
▶︎東急不動産 オフィスビル情報「(仮称)大崎コアプロジェクト(街区名称:大崎リバーウォークガーデン)」はこちらをクリック。
<住宅棟>
・建築敷地面積:約4,440m2
・建築面積:約2,110m2
・延べ面積:約43,160m2(容積率対象延べ面積:約28,850m2)
・階数:地下1階、地上40階
・建蔽率:約 48%
・容積率:約650%
・用 途:住宅、保育所、駐車場、駐輪場
・構 造:鉄筋コンクリート造一部鉄骨造
・高 さ:約160m
・付帯施設:駐車場115台、駐輪場587台、自動二輪駐車場37台
分譲住宅の戸数は合計で約389戸が計画されている。また、事業計画書によると予定される住戸の内訳については次のとおりとなる。
1. 1R・1LDK :約 84戸(戸当たり床面積約30〜55m2 )
2. 2LDK:約115戸(戸当たり床面積約50〜70m2 )
3. 3LDK・4LDK:約190戸(戸当たり床面積約60m2〜)
(注)上記のうち地権者住戸は149戸。なお、事業計画書上の計画であり、今後変動する可能性があるので、詳細は販売事業者の公式ページを参照するようにしてほしい。
住宅棟の名称は「ブランズタワー大崎」、販売を担う東急不動産株式会社によると、環境先進マンション「BRANZ(ブランズ)」の旗艦物件となる予定だ。また、同社によると、大崎駅を最寄り駅とするタワーマンションの供給は11年ぶりであるとしている。このため、品川駅にも近く将来性があり、かつ交通利便性の高いエリアであることを踏まえると人気の物件となる可能性が高い。
同社によると、2025年7月下旬から販売を予定している。詳細は、下記リンクを参照。
▶︎東急不動産「BRANZ TOWERブランズタワー大崎」の詳細はこちらをクリック。
スケジュール
建築工事の竣工は2027年5月を予定している。
また、東急不動産株式会社によると住宅棟についての引き渡し時期は同年8月を予定しているとのこと。順調に工事が進めば、2027年5月には五反田駅と大崎駅の中間に位置するエリアにはリニューアルされた新しい街区が誕生する。
再開発によって暮らしはどう変わる?
大崎駅から五反田駅にかけては、これまでに段階的に市街地再開発が進められ、密集市街地はすでに解消されつつありゆとりある都市空間が形成されている。このため、今回の再開発によって劇的な変化がもたらされるとは言い難いが、対象となる東五反田二丁目の一部は、これまで比較的建築密度が高かったエリアでもあり、より開放的で洗練された街並みへと更新されることが期待される。
とりわけ、品川区では目黒川沿いの憩いの空間づくりや大崎駅エリアではの景観形成に力を入れており、今回のプロジェクトでもそうした地域の景観ガイドラインに沿った街づくりが進められている。実際に、大崎駅から五反田駅にかけては街並みの統一感が形成されつつある。
また、大崎駅の強みとしては、東京の主要ターミナルである品川駅へのアクセスの良さに加え、「りんかい線」の接続拠点である点が挙げられる。りんかい線を利用することで、国際的なイベントや展示会が開催されるお台場方面へのアクセスも容易なので、今後、ビジネス・観光の両面から注目されるエリアとして、住商業務地の安定的な発展が見込まれる。
こうした都市基盤の整備や交通アクセスの充実は、実際にこのエリアに暮らす人々の「移動のしやすさ」や「日常の安心感」にも直結してくる。保育所の併設や災害対応の設備の充実など、生活に密着した配慮が施されている点も、子育て世代や共働き世帯にとっては大きな安心材料となる。さらに、目黒川沿いの緑道や桜並木、公園・広場等などは通勤途中のひとときや休日の散歩といった、日々の暮らしに「一息つくための余白」を確保してくれるはずだ。
おわりに
大崎駅や五反田駅周辺は、交通利便性の高さに加え、目黒川という貴重な自然資源を有するエリアである。この地域は、「都市再生緊急整備地域」として、国の支援のもと積極的に再開発が進められてきた。このこともあり大崎駅・五反田駅エリアでは、国際的な都市拠点へと進化しつつある。
一方、目黒川沿いに位置し、水辺の潤いや景観の魅力を創出する反面、自然災害へのリスクも抱えている。近年では、短時間強雨の増加により河川洪水や溢水が全国各地で相次いでおり、目黒川流域においても浸水対策の重要性は年々高まっている。
海岸に近く、高潮や津波など複合的な水害への備えも求められるエリアである。さらに、首都直下型地震など大規模地震の発生も想定される中、災害適応力として回復力をいかに高めるかが、今後の都市づくりにおける重要なテーマとなっている。都や区が目指す国際的なビジネス交流ゾーンとして拠点化していくためには依然として取り組まなければならない。
今後も、大崎駅・五反田駅周辺では複数の再開発が予定されている。10年後にはリニア中央新幹線の品川―名古屋間の開業も控えており、大崎・五反田エリアが果たす役割はさらに変化していくことが見込まれる。今後も段階的に進むまちづくりの行方を見つめながら、その先に広がる都心での暮らしのイメージを引き続きお届けしていきたい。