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震災から歩みを重ねて~犬と人がつなぐペットイベント「うちの仔市場」開催【福島県富岡町】

ローカリティ!

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福島県富岡町の町民総合運動場で先月、東北最大級のペットイベント「うちの仔市場in富岡」が17日と18日の2日間にわたって開催された。会場には、キッチンカーや犬用グッズ・雑貨を扱う約90店舗が県内外から集結。あいにく初日は悪天候となったが、翌18日は一転して快晴。青空の下、犬たちは思い切り走り回り、まるで“ペットの町”が誕生したかのようなにぎわいを見せた。

▲雨が上がった2日目は来場者が多く足を運んだ(筆者撮影)

実はこのイベントが富岡で開催されることになったのは、とある小さな“縁”がきっかけだった。ある日、郡山市の動物病院を訪れた富岡町在住の女性が、待合室でフリーペーパー『うちの仔』を手に取ったことが始まりだったという。東日本震災を乗り越え町へ戻ったものの、かつてのようなコミュニティが失われ、寂しさを感じていたという彼女。「この楽しさを富岡でも」と強く願い、町役場の知人にイベントの開催を提案した。役場側も「まずは町に人を呼び込むことが大切」と全面協力を決めた。

▲隣接する夜ノ森地区の避難指示が解除されたのは2023年。それまではバリケードがあった(筆者撮影=2018年)

編集部は当初、町からの依頼をあまり深くは受け止めていなかったという。しかし、話を聞くうちにその背景にある思いや復興への願いを知り、「復興が必要な町からの声を無視することはできなかった」と振り返った。そして、「震災や原発事故で苦しんだ町の姿、ペットや家畜が巻き込まれた悲劇、そうした記憶を忘れないためにも、このイベントには意味がある。震災後の町並みとイベントでのにぎわいを体感してほしいのです」。

▲会場にはバリエーション豊富なペットグッズが販売され、来場者が足を止めた(筆者撮影)

富岡町での開催は、昨年に続き2回目。「うちの仔市場」としても、今回が記念すべき10回目の節目となった。町の職員たちもスタッフとして参加し、来場者と笑顔を交わす場面が随所に見られた。

特に晴天に恵まれた18日には特設ドッグランが登場。犬たちは自由に走り回り、飼い主同士の会話も自然と弾んだ。「人も犬も、こんなにのびのびできる場所があるなんて」と話す来場者の表情には、富岡という土地の新たな可能性を感じている様子がうかがえた。秋田県から家族で来た愛犬家は「富岡には初めて来た。思っていたより早く着いてよかった」と話した。

▲このイベントに合わせて郡山から飼い主と訪れたワンちゃん。うれしそうにドッグランを走り回った(筆者撮影)

店舗スタッフとの交流も盛んで、会場全体は終始なごやかな雰囲気に包まれていた。実行委員会代表は「来年もぜひ開催したい。ドッグランももっと広くして、わんちゃんのサイズ別にエリアを設けたい」と今後の展望にも意欲を見せた。

▲会場では犬種別の交流会も開催され、話に花が咲いた(筆者撮影)

このイベントは、犬と人とのふれあいを通じて、失われかけた町のコミュニティを取り戻し、震災の記憶とともに前を向いて歩むための一歩だ。そんな新しい“復興のかたち”が、ここ富岡町から確かに始まっている。

次回の開催は今秋を予定している。富岡の空に再び響く犬たちの足音と笑い声は、きっと町の未来を照らす明るい音色となるだろう。

昆愛

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