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「JR九州と九州の観光」で三題噺 年末年始にお勧めの鉄道歴史旅もご案内します【コラム】

鉄道チャンネル

門司港~鳥栖4景① 「ハイパーサルーン」の愛称名で知られる783系電車。最近も復刻版夜行列車「ドリームにちりん」の2025年1月の博多~宮崎間往復運転が発表されました(写真:JR九州)

2024年が間もなくラストを迎える今、周回遅れのニュースで誠に恐縮ですが、アメリカの有力経済紙、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の「2024年の行くべき場所ベスト10」に、日本で唯一選出されたのが九州でした。

九州観光は国内旅行、インバウンドの双方でブームですが、本サイトで注目すべきはその理由。WSJは、「『ななつ星in九州』に代表されるJR九州のD&S列車(デザイン&ストーリー列車=観光列車)が、九州観光の魅力を高めている(大意)」と高評価します。

なるほど。「観光列車が九州観光のブランド価値を高める」は分かりやすい構図ですが、JR九州はそこに満足しません。もう一歩踏み込んで、観光目的地としての九州7県の魅力発掘や発信に力を入れます。

本コラムは「JR九州と観光」を共通キーワードに、「九州観光まちづくりAWARD(アワード)2024」、「『熊本デスティネーションキャンペーン(熊本DC)』2026年7~9月開催決定」、「年末年始にお勧めの九州鉄道ヒストリー旅」の三題噺で、〝九州を走る鉄道〟の魅力をあらためて考えます。

熊本県南小国町の工房・カフェに大賞

一題目は「九州観光まちづくりアワード」。スタート3年目の2024年、8月の受賞者発表に続き、表彰式が12月4日に東京都内で開かれました。最優秀賞の大賞を受賞したのは、熊本県南小国町の木工家具工房で喫茶・竹の熊を併設する「Foreque(フォレック)」です。

「JR九州観光まちづくりアワード」フォトセッション。前列は穴井フォレック代表(中央)をはじめとする受賞者。後列は古宮JR九州社長(同)ら審査員(筆者撮影)

セレモニーで表彰状と記念のガラス盾を受けたフォレックの穴井俊輔代表取締役、こんなエピソードを披露しました。穴井さんが南小国町に受賞報告した際、高橋周二町長から掛けられたのはこんなセリフ。「駅がない町なのに、よくJR九州の賞を取れたな」。

その通り。熊本県北東部、人口3800人の南小国町に鉄道路線はありません。町中に水田や森林が広がり、収穫祭や神楽などの催しが盛ん。鉄道路線はなくても南小国への来訪者が増えれば、阿蘇、熊本、そして九州のにぎわいアップにつながる構図です。

フォレックにとっても、大賞受賞は活動の励み。穴井さんは、アワード審査委員長を務めたJRの古宮洋二社長へのこんなジョークで決意表明しました。「今度はぜひ駅を造ってください(笑)」。

佐賀、長崎の西九州2県から7県全域に

あらためてJR九州の九州観光まちづくりアワードとは。「九州に根付き、その土地ならではの伝統や伝承を守りながら新しい『もの、こと、風景』を生み出す『ひと』にスポットライトを当てた表彰制度」です(JR九州のプレスリリースから)。西九州新幹線開業の2022年に佐賀、長崎県の地域事業者を対象に創設され、2023年の2回目から九州7県にエリアを広げました。

成果はいかに。前回、2023年の大賞は大分県別府市のNPO法人・BEPPU PROJECT(ベッププロジェクト)です。プロジェクトはアワードも追い風に観光イベントを連発。「竹瓦温泉アート浴」、「別府市制100周年記念『ベップ・オンセン・ウィーク』」などで、地域観光をリードします。

今回の表彰式で古宮社長は、「九州各地で頑張っている皆さんを応援できれば……」の思いを語り、2025年2月21日に博多駅ビルのJR九州ホールで、アワード受賞者やまちづくりを学ぶ学生らが集うシンポジウムを開催するプランを発表しました。

7年ぶりに「熊本DC」

二題目は、JRグループ旅客6社と地元共催の「デスティネーションキャンペーン(DC)」。珍しい列車が運行されることで鉄道ファンの関心も高い大型観光キャンペーンで、2026年7~9月の熊本開催が決まりました。

三浦JR九州熊本支社長(右)から熊本DCの開催通知を受ける木村熊本県知事(左)。熊本観光をめぐっては訪日外国人の来県滞在者が大きく増えるニュースもあります(画像:熊本県)

「熊本DC」は2019年7~9月以来7年ぶり。DCの2026年は、2016年4月に発生した熊本地震から10年の節目。そういえば熊本では、2020年7月に球磨川のはんらんもありました。2年後のDCでは、地元が災害からの観光復興をアピール。JRグループは、JR九州を中心に全国規模で宣伝・送客します。

DCといえば特別列車が呼び物。前回はD&S列車「A列車で行こう」の博多~三角(あまくさみすみ線)間直行運転、夜行列車「『サロンカー明星号』で行く熊本の旅」といった企画ツアーが、シャッターチャンスを提供しました。

熊本県庁で2024年11月28日、JR九州の三浦基路執行役員・熊本支社長からDC開催決定を告げられた木村敬熊本県知事は「DCは県の観光や経済に大変な追い風。震災からの創造的復興を、全国にしっかり発信したい」と抱負を述べました。

明治・大正の駅舎で感じる「汽車旅」

ラストは、「列車に乗ること=九州の地域観光」の視点でJR九州お勧め旅。地域観光振興の旗を振る日本観光振興協会の小冊子「魅力ある鉄道の旅2022」に、JR九州から選ばれたのが「鹿児島線門司港~鳥栖間」です。

理由は「鉄道史をテーマに乗ってみたい鉄道」。「明治・大正の駅舎に汽車旅の香り」のサブタイトルが付きます。

九州の鉄道史は明治中期の1889年、博多~千歳川仮停車場(久留米の対岸、佐賀県鳥栖市)間開業で幕を開けました。建設したのは九州鉄道。途中駅の一つが鳥栖でした。

2年後の1891年には、鳥栖~佐賀間が開業しました。

手狭になった鳥栖駅は1903年に拡張され、2代目駅舎に移転しました。その時の駅舎は今も現役で、ホームの古レールなどが1世紀を超す歴史を伝えます。

門司港~鳥栖4景② 明治、大正、昭和、平成、令和の5つの時代を生き抜いた鳥栖駅。長崎線の西隣、九州新幹線に接続する新鳥栖駅(2011年開業)とは1世紀超の時を超す新旧コントラストが楽しめます(写真:JR九州)

鹿児島線から長崎、佐世保方面への分岐点として、SL時代から多くの特急列車が停車していた鳥栖駅。(途中)下車したら、立ち寄りたいのが駅ホームの立ち食いうどん・そば店です。人気駅弁が「焼麦弁当」。焼麦の読みは「シャオマイ」で、その正体はもちろんシュウマイです。

重文の門司港駅舎

門司港~鳥栖4景③ 国鉄時代の421系や715系といった近郊形の流れをくむ813系電車。コーポレートカラーの赤の基調色がJR九州の電車としての存在感を表します(画像:JR九州)

紹介が逆順になりましたが、鹿児島線の起点・門司港駅の駅舎は重要文化財です。開業は鳥栖駅より2年遅い1891年。現駅舎は、時代が大正に変わった1914年の建築です。

門司港駅は開業時の姿への復原事業が2019年に完成。優美なデザインが際立ちます。隣接するJR九州鉄道記念館も、鉄道ファン必見のスポットです。

門司港~鳥栖間は山陽・九州新幹線とほぼ重なりますが、往復の片道だけでも在来線移動するのもファンならありでしょう。

門司港~鳥栖4景④ ライトアップされた門司港駅舎。駅や近隣の建築物群は門司港レトロ地区として国土交通省の都市景観100選に選出、にぎわいが絶えません(写真:JR九州)

記事:上里夏生

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