定型発達じゃないの?自閉症長男とは違った次男の幼児期。でも1歳半健診で発語なし、要観察に…
監修:鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
長男とは全く違った次男の乳幼児期
次男かーは長男りーとは3つ違いの兄弟です。妊娠中の経過は良好でしたが、当時は新型コロナウイルスが流行中だったため、家族は出産時の立会いや入院中の面会ができず、孤独な入院期間でした。ですが退院してからは、初めての育児だった長男の時よりも自分の気持ちに余裕があり、楽しんで育児ができていたと思います。
かーは赤ちゃんの頃から表情が豊かな子でした。また人の輪の中に入るのが好きなようで、家族(特に母親の私)にスキンシップを求めてくる様子が見られました。当時はちょうど、3歳を過ぎても発語がなかった長男りーが、知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けた頃でした。りーの乳児期とは全く違うかーの様子に、私は「これが定型発達の子の育児なのかな……?」と期待をしていました。
定型発達?発達障害?次男の成長に戸惑いも
かーの育児が大変だと感じ始めたのは1歳を過ぎてからでした。平均的な時期に歩き始めたかーでしたが、よちよち歩きでどこまでも一人で行ってしまうような、ものすごく活発な男の子だったのです。
買い物に連れて行き、ショッピングカートに乗せようとすると激しく拒否。一緒に歩きたがるので仕方なくカートから降ろすと、つないでいる私の手をさっと振りほどき、店内を走り回ります。幸い、私と触れ合っていると安心するのか、抱っこやおんぶは嫌がらない子だったので、買い物にはおんぶひもが必須でした。
店内を走り回るという行動は、幼少期の長男りーにもありました。しかし、りーは自分が楽しいから走る(後ろを振り返らない)という様子だったのに対し、かーは「親が追いかけてくれる」のを期待して走っているように見えました。私がすぐに追いかけずに待ってみると、ピタっと止まって振り返り、私の表情を見ているように感じました。
また、かーは手遊びやダンスが好きで、テレビの子ども向けの歌や私の手遊びを楽しそうに真似していました。りーも歌や手遊びが好きですが、自分でやるのではなく、人の歌やダンスを見聞きするほうが楽しいようでした。そういった点もりーとは違い、これも定型発達児の反応なのかな……と、私を迷わせることになります。
1歳半まで発語なし……でも「指差し」が希望に
かーは1歳半になってもまだ言葉を話すことはありませんでしたが、少しずつ指差しをするようになっていました。この「指差しができる」ということは、私の中ではかなり大きなポイントでした。というのも、長男りーはなかなか指差しができず、1歳半健診で発達を見てもらった際にも、指差しができるようになると言葉の発達につながるということを聞いていたためです。
かーは発語こそないものの、りーが1歳半の時にはできなかった指差しができていたので、話せないのは環境の影響か、個人差の範囲かなと考えていました。
1歳半健診では要観察。しかしある日突然……!?
そうして1歳半健診を迎えたのですが、その時点でもかーの言葉は出ていなかったので、経過を見ることになりました。しかしある日かーが……
「マンマ」「ママ」と言い出したのです。ごはんの時や私と一緒にいる時に、まるで私に呼びかけているかのように言い続けたのです。
うれしさのあまり、かーの経過を見てくれていた保健師さんには「言葉が出たのでこれからはもう大丈夫です!」と伝えました。早速私は「言葉が出る」「言葉が増える」という絵本や玩具を買い与え、かーの好きな手遊びや歌で言葉を引き出そうとしました。しかし、そこからかーの言葉が増えることはなかったのです……。
かーのそれからについては、また別の機会に書いていこうと思います。
執筆/かしりりあ
(監修:鈴木先生より)
発語がない場合、初めに否定しなければいけないのは難聴の有無です。先天性のものから中耳炎後の後天性のものまであります。正確にはABR(聴性脳幹反応)という検査で確認できます。難聴以外でも言葉の出方が奥手なお子さんはいます。表出性言語障害と言われており、集団に入ってから発語が増えていくのが特徴です。一般的には2歳までに単語が、3歳までに2語文が出ればいいとされています。難聴がないのであれば、早めに集団の中に入れてあげることもいいかもしれません。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。