アメリカ大統領選挙、「妊娠中絶問題」が大きな争点となる理由
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日~金曜日15時30分~17時)、10月31日の放送にハフポスト日本版編集長・泉谷由梨子が出演。11月5日のアメリカ大統領選挙に向けて注目を浴びる「妊娠中絶問題」について解説した。
長野智子「いよいよ11月5日(アメリカ大統領選挙)ですね」
泉谷由梨子「激戦になるので今年も3日ぐらい決まらないんじゃないか、とハフポストUS版の編集長と話しました」
長野「その中でも大切なイシューである妊娠中絶問題。どういうことでしょうか?」
泉谷「今回大きな争点として注目されているうちのひとつです。なぜ今回か。最高裁判所が2022年に全米で中絶の権利を否定して初めての選挙、ということがまずあります」
長野「はい」
泉谷「人工妊娠中絶をめぐっては民主党のハリスさんが『中絶の権利は保証すべき』、共和党のトランプさんはその反対の立場、というのが基本的にあります。中絶はアメリカで議論されてきた重大な政治問題のひとつで、背景には宗教が存在します。キリスト教の宗派で福音派というのが、アメリカ国民の20~25%を占めるといわれる、大きな集団で。中西部から南部に多く住んでいて、キリスト教の伝統的な価値観に基づいているという立場から中絶、同性婚にも反対してきました」
長野「はい」
泉谷「福音派が多い州で、もともと中絶は禁止でした。しかしご存じの方も多いでしょう、1973年に連邦裁判所が判断した『ロー対ウェイド判決』。これによって全米規模で中絶はいったん認められるようになったんですね。それ以降、この判決を覆そうと福音派は共和党に熱心に働きかけていて、この問題が選挙運動にも多く利用されるテーマとなりました」
長野「逆に、禁止されている州はどれぐらいあるんですか?」
泉谷「いま20ぐらいの州です。トランプ政権がこの判決を覆して、州ごとに判断できることになった。覆されたあと、20以上の州で中絶が完全に禁止、もしくは厳しく制限、という状態になっています。日本からすると『えっ?』という感じですね」
長野「それを命と見て『それは……』という考え方もわかります。一方で望まない妊娠をしてしまった女性もたくさんいるわけです。たとえば性暴力であるとか。そういう中で自分の体のことを自分で決められない、というのも非常に難しい」
泉谷「そしていまどのような状況かというと、いろんな理由、母体の危険がある、性暴力を受けた、経済的に余力がない、という女性がいる。合法な州に移動して処置を受ける、というのが基本的な流れになっています。移動して、お金はかかっても安全に完了すればいいんですけど、州をまたいだのに合併症を発生したり、戻ってきたあと緊急搬送されて手術しなければいけなかったり。このとき問題なのが、医療関係者も罪に問われるんです」
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「え~っ?」
長野「中絶が原因で合併症になったとして、それを治療するのというのも……」
泉谷「治療というか中絶の『途中で終わってしまったような状態』になると、もう一度子供を出す、という手術もありますね。これが中絶にあたるのかどうか、と判断が遅れて、亡くなった女性もけっこういる、というのが、いま判明している事実です」