【三石忍が解説】鹿島沖一つテンヤ釣果UPのコツ3選
豊富な経験に裏打ちされたリズミカルな釣りと、初心者にも分かりやすい「ズバッと端的」なアドバイスで人気のアングラー・三石忍さん。今回は1年を通じて楽しめる、鹿島沖の一つテンヤのコツを解説してもらった。
写真と文◎編集部
協力◎マルキユー
鹿島沖一つテンヤで釣果を上げるコツ
5月上旬、三石さんがやって来たのは、茨城県鹿島港(鹿嶋旧港)の不動丸。鹿島港は多数の船宿が軒を連ね、朝から大勢の釣り人で賑わう。今回の釣りは一つテンヤ。目の前の鹿島灘は、関東でも屈指の一つテンヤフィールドだ。
今シーズンの鹿島灘のマダイ釣りは、春の乗っ込みが好調だった。「春爆」の言葉も聞かれ、3~4㎏クラスの中ダイが数出る日もあり、5㎏を超える大ダイの釣果も聞かれた。連休明けの今回は、春爆こそ一段落したものの、3~4㎏は場所によりチャンスがあり、手ごろなサイズなら数もねらえるというタイミング。海の模様に期待しながらの出船となった。
1.冷凍エビはシャキッとチューン
鹿島港や近隣の飯岡港から出るテンヤ船では、エサに生きたエビ(サルエビ)が使える。生きエビの料金は10匹で1000円ほどだが、ハリから外れにくいのでエサ持ちがよく、マダイの反応もよいので人気だ。ただし、数には限りがあるので、冷凍エビも上手に組み合わせて使うとよい。その時におすすめなのが、「エビシャキ!」などを使って身をしっかり締め、なおかつ魚を寄せる成分も加えるチューンをしておくこと。三石さんも乗船後の準備時間を使って、冷凍エビを流水で解凍したら、まずチューンナップをして釣りに備えた。
一つテンヤ用のエビエサをしっかり締めてフレーバーも加える定番アイテム。あとはザル付きのタッパーを用意しておく
鹿島灘は1年を通じて一つテンヤが楽しめ、砂地底、砂利底、ツブ根といった根掛かりのしにくいボトムが続く。そして、マダイ以外にもハナダイ、ヒラメ、ホウボウ、カサゴなどゲストが多彩。一つテンヤをこれから覚えたいという人にもストレスなく釣りがしやすい。一点だけ、砂地底のポイントで厄介なのが小型のサメだが、慣れてくればテンヤを底に置きすぎないなどの対策が取れる。
エビの付け方と締め方の手順
2.幅広い状況に対応できるタックルをチョイス
不動丸で一つテンヤを担当する加瀬秀和船長は、海や潮の状況、魚の反応、水深や地形などを、常時マイクでアナウンスしてくれる。そのわかりやすさは、多くの船長を知っている三石さんも「抜群にていねい」と太鼓判を押すほど。釣りをする際はよく聞いて参考にしたい。
午前5時に港を出た船は、1時間ほど南に走って最初のポイントに到着した。水深は40m。結果的にこの日の釣りでは、終日それくらいのポイントを釣ることになった。ちなみに不動丸のテンヤ船は、タイラバもタイジグも使用は自由。「日によっては、巻きものへの反応が明らかによいタイミングもある」とのことで、これらも用意した二刀流、三刀流の準備をしておくのもよい。とはいえ、「アタリが安定して多いのはテンヤです。お客さんも大半はテンヤオンリーですよ」とのことだ。
テンヤは底が取れる範囲で軽めを使い、さらに可能であればキャストしてなるべく広く探るのがよいが、自分の足もとまで来たら無理に送らず、回収して投げ直すことでオマツリを防ぐ。
そのうえで鹿島灘は1年を通じて浅場も深場も釣るため、テンヤは3、5、8、10号は揃えておき、さらに固定式と遊動式も両タイプがあるとよい。
なお、基本的なところでは、外洋に面して太平洋のウネリが日常的に入る鹿島灘では、サオは長めのほうが軽いテンヤをじっくりフォールさせ、なおかつアワセのストロークを取りやすい。この日の三石さんも、2.5mの専用ザオを使って安定した操作をしていた。そんなタックルチョイスもあらかじめ意識しておくとよいだろう。
専用ザオの穂先を注視しながらじんわりテンションフォール。ねらいどおりにククッと反応が出る瞬間が面白い
3.テンヤは底に置きすぎず、本アタリを慌てずに掛ける
当日の三石さんは、朝の一流し目からさっそく本命のマダイをキャッチ。その後も順調に釣果を伸ばし、マダイはトータル5尾をキャッチした。船全体では、マダイのほかにホウボウ、イナダ、カサゴ、メバル、ヒラメ、ハナダイといったゲストが掛かることも多かったが、誰かがマダイをキャッチする流しでは、確実にマダイをゲットしていた点が注目される。ゲストが多彩なのは鹿島灘の利点だが、パターンが掴めないと、釣れはするがゲストばかりという現象も起きる。
「一つテンヤはボトムを取る釣りです。ただ、底だけになってしまうとゲスト地獄になることもあります」と三石さん。それを避けるには、一定の頻度で底はしっかり取りつつ、ラインのマーカーも見て、底から1~2m、あるいは1~3m、意識してテンヤを上に漂わせる時間を取ることが本命のアタリに繋がると指摘する。
マダイとホウボウのほかには、タマガンゾウビラメやカサゴも出た
そのほかには、三石さんはキャスト後にイトを送り出しながらテンヤをフォールさせていく際、ボトムが近づくとリールのベールアームに手の平を添え、パラパラとイトを送り出しつつ、アタリが出ればすぐにベールアームを手で戻して、サオによるアワセが利くようにするといった細かいテクニックも駆使していた。さらに「ビギナーと経験者で大きく違うのはアワセです。私は一つテンヤでも本アタリで掛けることを意識しています」と言うとおり、多くの場面で三石さんは即アワセではなく、穂先が震える初期アタリを一度確認したら、慌てずようすをみて次の本アタリで合わせるというリズムを守っていた。
それにより「空振り」の頻度も確実に減り、魚の活性が上がり切らず、食いが浅い状況でも、着実にアタリをとらえていた。そして、仮に空振りして「あーっ!」となった時も、すぐにサオを下げてテンヤを落とし直し、もう一度食わせるリカバリー率も上げていた。即アワセだけを意識していると、空振りした時にテンヤが大きく動いたり、つい力が大きく入ってリールを巻きすぎてしまうことが多い。そうなると落とし直して2回目のチャンスをねらえる確率が低くなるのだが、アワセの前後に余裕がある釣りをすることで、そうしたミスも未然に防いでいた。
テンヤ1つを海中でイメージどおりに動かし、他のエサ釣りとも、あるいはルアーフィッシングとも違う釣趣が味わえるのがこの釣り。年間を通じてマダイがねらえる鹿島灘で、ぜひその醍醐味を味わってみてはいかがだろう。
この日は1~2kgクラスが主体だったが、1日をとおしてアタリを楽しめた
※このページは『つり人 2025年7月号』を再編集したものです。