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日本人の装飾文化と水産物<貝紫と貝殻> 食べるだけじゃない水産品の魅力とは?

サカナト

京紅(提供:PhotoAC)

「水産」というと食べ物のイメージが強いですが、水産物は食用以外にも私たちの暮らしと密接につながっています。

そんな「食以外の水産物」の中で、日本人の装飾品文化と関わりの深い2つの貝がいるのです。

潮干狩りが教えてくれた<貝紫>の不思議な魅力

先日、潮干狩りでアカニシという貝を見つけたことがきっかけで、「貝紫(かいむらさき)」という特別な染料があることを知りました。

この貝紫は、アッキガイ科の巻貝からほんのわずかに採れる、美しく深い紫色の染料です。

アカニシ(撮影:halハルカ)

日本では弥生時代の吉野ケ里遺跡で出土した絹織物から貝紫が検出されており、古くから珍重されてきたことが判っています。古代の人々にとって、「紫」は高貴で神聖な色だったようです。

ちなみにアカニシという貝は、貝殻に赤紫の筋が入っている個体も多いですが、貝紫はアカニシの身にある鰓下腺(さいかせん)、別名パープル腺という臓器から採取されるそうです。

そのままでは黄色っぽい色をしている鰓下腺に日光を当てることで、美しい紫色になるといいます。古代の人々は、その不思議にも神秘を感じていたのかもしれません。

世界で愛された「紫」 地中海の帝王たちの色

そんな貝紫ですが、日本だけでなく世界的にも歴史が深く、古代地中海地域では「帝王紫(ティリアンパープル)」と呼ばれていました。

ローマ皇帝やエジプトのクレオパトラなど、一部の特別な身分の人だけが身に着けることを許された色です。

ロイヤルパープル(提供:PhotoAC)

貝紫の染料を得るには、大量の巻貝が必要で、その希少さから一般人が簡単には手に入れられないものでした。

権力や富の象徴として世界中の王族や貴族から愛され、特別な意味が込められていたんですね。

貝殻に入った口紅 舞妓さんも愛する日本の美

日本には、貝殻をもっと身近な形で使う装飾品があります。

それが、ハマグリの貝殻にクチナシの赤い色素を入れた昔ながらの口紅。自然由来の美しい発色はもちろん、貝殻そのものの丸みや手触りが、心を和ませる魅力を持っています。

ハマグリの貝殻が持つ美しい艶感は、昔から人々を魅了していたんですね。

京紅(提供:PhotoAC)

この貝殻入りの口紅は、現代でも京都の舞妓さんが使っていることでも有名で、現在でも購入することができます。女性がハマグリをそっと開けて口紅を指先につける姿はなんだか素敵ですね。

なお、海外でも貝殻を容器として使う文化があり、ヨーロッパやアフリカの国々では貝殻が器や装飾品として活用されてきました。

昔から日本人は海の恵みと暮らしてきた

私たちは普段、「水産物」と聞くと魚介類の食材を思い浮かべがちです。でもこうして見てみると、古代から日本人は海から様々な形で恵みを受け取ってきたことが分かります。

貝紫の染料も、貝殻を使った口紅も、食べること以外で海の資源を暮らしの中に取り入れてきた素敵な例です。今あらためて海の恩恵を感じ、自然の美しさや先人の知恵を大切にしていきたいですね。

(サカナトライター:halハルカ)

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