「世代を越えて見てもらいたい昭和要素が詰まった学園モノ」映画『還暦高校生』公開記念/ひかる一平、直江喜一、河崎実 特別座談会
アイドルとして一時代を築き、俳優としても『3年B組金八先生』や『必殺』シリーズなどで印象を残してきたひかる一平。現在は子役の芸能事務所の経営者、いわば裏方として活躍している彼が43年ぶりに主演を務めた青春学園ドラマ『還暦高校生』が、6月27日より東京・池袋HUMAXシネマズ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開される。監督は「バカ映画の巨匠」の異名を取る河崎実。さらに『金八先生』で“腐ったみかん”こと加藤優役を演じた直江喜一も重要な役を演じ、見所の一つにもなっている。『昭和40年男』では3人とも登場済み、公開前から大いに話題を呼んでいる本作について、この3名から見どころやや撮影時のエピソードを存分に語ってもらった。
自分でもやれることがあるのだったら。
──そもそも、この『還暦高校生』はどういった経緯で企画されたんでしょうか。
河崎 日本橋三越伊勢丹の「福袋」企画で、「約500万円で河崎実監督に映画を撮ってもらえる」という企画がありまして、それを引き当てた一般人女性の長谷摩美さんが、『メグ・ライオン』に続いてもう一度引き当て、それで今回は自分が憧れていたアイドルに主演してもらいたいということで、ひかる一平さんの名前があがったんです。
──『昭和40年男』にひかる一平さんのインタビューが載っていたことがオファーにつながったとか。
ひかる 最初にオファーをいただいたとき、半分冗談のように思ったんです。僕はいま裏方な人間でもありますので、バラエティ番組から声がかかっても基本出ませんから。でも河崎監督から熱心にオファーされたので「自分でもやれることがあるのだったら」と言って、お受けすることにしました。まさか自分が還暦になって高校生をやる日が来るとは…ですよ。
──そこに直江さんが、今回久々の共演を果たすわけですね。
直江 はじめ(ひかる一平のこと。『金八』の役名に由来)とガッツリ一緒にやるのは『金八』以来だけど、すぐ昔のように楽しくやれましたよ。
河崎 青春映画のパロディみたいに思われるかもしれないけど、おふざけとかじゃなく、本当に好きなことを真剣に撮りました。
──42ダブ高校3年というありえない設定ではありますが、それが監督のやり方ですからね。
直江 だから出る方も真面目にやりましたよ。
──ひかるさんは久々のドラマ主演とはいえ、『金八』以降も映画『胸さわぎの放課後』や「必殺シリーズ」で活躍されてきました。
ひかる 「必殺シリーズ」は、いい経験になったし、その後も後輩が大勢出演していますから、橋渡しになれたのではないかなと思っています。今回は主演とは言っても、若い人たちにがんばってもらいました。何しろ歳が歳なんで(笑)。
──サッカーのシーンが印象的でした。昔の青春ドラマといえばスポーツですね。
河崎 青春ドラマと言ったら、昔からからサッカーかラグビーと話が決まってるんですよ。今回、部員4人しかいないんだけど(笑)。
ひかる 僕は野球少年だったけど、サッカーは全然やってこなかったので、若い子に蹴り方から教えてもらいました。「この角度でキックするとカッコ良く見えますよ」とか教えてもらって。
──カッコよかったですよ。
ひかる 悲しいかな60歳なんで、テイク重ねられないんです(笑)。
河崎 NGなんてなかったですよ。基本、一発撮りなんで。
直江 逆に怖かったけどね。失敗できないなって。リハーサルのつもりでやってたら、それが本番で一発OKが出たり(笑)。
河崎 50代の人が見てきたテレビの良い所が詰め込まれてますから。全編楽しめると思いますよ。特にラストなんて……。
ひかる 監督、そこは言わない方がいいんじゃないですか。
直江 若い人が見て、なんじゃこりゃって思うのも、却って楽しいかもしれないね。
──主題歌になかなかシブい曲が使われてますが。
河崎 葉山ユリさんの「熟れた果実」です。1972年に発売された隠れた名曲だけど、いま聴くと逆に新鮮かもしれない。
ひかる 初めて聴きましたけど、スタッフも豪華で、『還暦高校生』に相応しいと思いました。
河崎 葉山さんって、『飛び出せ!青春』にも出演してるんですよ。村野武範が先生やった作品に。青春ドラマつながりになってるんです。
先生が生徒を平気でビンタしてたからね。
──ほかに印象的なシーンはありますか。
直江 はじめとの居酒屋のシーンもよかったな。高校生が普通に酒盛りしてるなんて、普通ならあり得ないですよ。
──二人が並ぶだけで絵になると言いますか。
ひかる まさる久々に共演できてうれしかったけど、それを言うなら、休憩時間に学ランのままタバコ吸ってましたから。もし通報されたら問題になってたかも(笑)。
河崎 でも、もともと青春ドラマって、年齢がかなり上の高校生が大勢出演してたからね。先生より先輩の生徒だっていたから(笑)。
──今の学校ものだと見られなくなった「体罰」も、「還暦高校生」には出てきます。
河崎 昔は先生が生徒を平気でビンタしてたからね。もちろん生徒が悪いことしたからだけど。そう言った場面のオマージュでもあるんです。
ひかる 往年の学園ドラマで育った人には懐かしさを感じてもらえるし、若い人には新鮮に感じると思うので、世代を越えて多くの人に見てもらいたいですね。
ストーリー
星雲学園の新任教師・野々山健一は初日から騒動を起こした上に青春の謳歌をうたい、生徒たちを困惑させる。一方、星雲学園の生徒・椎名(ひかる一平)は42回も留年して還暦となっていたが、再び受験に失敗する。弱小サッカー部の部長になった野々山が椎名を勧誘するが、椎名は野々山がゴールを1,000本止めたらサッカー部に入ると宣言する。
『還暦高校生』
(2025年/日本/68分/G)
監督:河崎実
出演:ひかる一平、直江喜一、森井信好、石田泰誠、戸苅ニコル沙羅、みやのねり、ゆま、町田政則、長谷摩美、笑福亭鶴光、古谷敏
脚本:小野峻志、河崎実
製作:長谷摩美
配給:フリック
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