「サウザー遺伝子」に「ピカチュリン遺伝子」...どこかで聞いたことのある珍名・奇名な遺伝子たち【眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話】
どこかで聞いたことがある!? 珍名・奇名の遺伝子たち
遺伝子の世界のキラキラネーム
遺伝子の名前といってもあまりピンときませんよね。なんとなくアルファベットと数字の羅列のようにイメージしがちですが、意外とそうでもないんです。全力でウケを狙いにいった結果か、それとも大真面目に考えた末の暴走かはわかりませんが、思わず笑ってしまうような珍名・奇名の遺伝子がたくさんあります。ここではその一部を紹介していきましょう。
最初に挙げるのは「サウザー遺伝子」です。人気漫画『北斗の拳』に登場する人物・聖帝サウザーにちなんで名付けられました。理由はこの遺伝子が内臓逆位(内臓の位置が左右逆になる先天的な奇形)に関連しており、劇中でのサウザーの設定と同じだったから。これを発見した研究者は「お前の身体の謎、見切ったぞ!」と言ったとか、言わなかったとか。
超人気ゲームのキャラクター名をほぼパクったようなネーミングの遺伝子も存在します。それが「ピカチュリン遺伝子」と「ソニックヘッジホッグ遺伝子」です。前者は動体視力に関する遺伝子で、後者は全身にトゲがあるショウジョウバエの突然変異に関する遺伝子です。他にも名前の候補はいくらでもあったように思えますが、発見した研究者はその瞬間、すばやく駆け回る黄色いネズミや青いハリネズミのシルエットが脳内を駆け巡ったに違いありません。
人気の漫画やゲームから名付けられた遺伝子たち
珍名・奇名遺伝子はまだまだ他にも
● サトリ遺伝子(satori)
メスの求愛に無関心なオスのショウジョウバエに見つかった遺伝子。「悟り」を開いた僧侶のようだと名付けられたが、実際は性同一性障害( 性別違和)に関連するものだったとか
● 死の接吻遺伝子(kiss of death)
植物のプログラム細胞死を司る遺伝子。有害、あるいは不要となった細胞を自殺(自壊)に導く役割を持つことから、死を宣告する意味で「死の接吻」「死神のキス」と名付けられた
● ヨーダ遺伝子(YODA)
シロイヌナズナという植物の変異体から発見。背丈が低く、葉が小さく縮れた様子が『スター・ウォーズ』の老いたジェダイ・マスターに似ていたことからヨーダと名付けられた
● 暴走族遺伝子(bozozok)
ゼブラフィッシュの変異体で発見された稚魚の背骨の発達に関連する遺伝子。英字表記は「bozozok」だが、「バイクに乗る傍若無人な少年」の注釈から「暴走族」の意味だとわかる
● マッチョ遺伝子(macho-1)
ホヤ(マボヤ)の筋肉細胞に関連する遺伝子。日本では筋骨隆々な人を「マッチョ」と呼ぶことからこの名がついたかと思いきや、じつは「マボヤのちょーおもしろい遺伝子」の略称らしい
● 暑がり遺伝子(atsugari)
ショウジョウバエの研究でより涼しい場所を好む変異体に対してつけられた名前。逆に暖かい場所を好む変異体には「寒がり(samugari)」という名前がつけられている
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 遺伝の話』著:安藤 寿康