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5/7リニューアルオープン予定!小さな町の深くてあたたかい時間旅行「鞍手町歴史民俗博物館」で出会う“未来へ続く坑道” (福岡・鞍手町)【まち歩き】

福岡・九州ジモタイムズWish

鞍手町役場の新庁舎を訪れたその日、隣にひときわ異彩を放つ黒い建物が立っていた。無機質な中にもどこか温もりを秘めたような佇まいに、思わず足が止まる。名前は「鞍手町歴史民俗博物館」。

この建物の中には、かつて九州・筑豊炭田の一角を担っていた“炭鉱の町・鞍手”の記憶が、息づいていたのだ。

2025年5月7日にリニューアルオープン予定の「鞍手町歴史民俗博物館」。
1985年の開館以来、鞍手の古代から現代までの歴史や文化を、考古・民俗・石炭の3つの柱で丁寧に紹介してきた。
中でも見逃せないのが、新延貝塚の実物の貝層や、国指定の古月横穴からの出土品など、各時代で途切れることなく発見されている文化財の数々。それはこの町の人々によって、代々受け継がれてきた歴史とともに、暮らしを大切に守ってきた証でもある。

そんな博物館の中に、今回新たに加わったのが体感型の展示エリア「石炭資料展示室」だ。
鞍手町の歴史を知り、文化を感じるその延長線上に、かつて炭鉱とともに歩んだ時代の記憶を伝えるこの空間が生まれた。

【あの頃へ、懐中電灯でタイムスリップ】
入口を抜けると、まず目に飛び込んできたのは壁一面に描かれた年表。「時空のトンネル」と名付けられたコーナーには、鞍手の石炭の歴史がぎっしり。照明の先には「未来への窓」と呼ばれる一角があり、昔のボタ山の写真と現在の新庁舎の風景が重ねられている。まっすぐに見つめていると、自分が時間をまたいで立っているような、不思議な気持ちになる。過去と今が静かに交差する、印象的な導入だ。

「未来への窓」からの風景を望み右手に進むと、そこからは真っ暗な「三菱炭鉱の坑道」を再現したゾーンに。見学者は、坑内にハーフサイズで造られた巨大な「石炭の運搬道」を、ライト付きのヘルメットを被ったり、懐中電灯を片手に進んでいくことができる。これがなんともワクワクする。

トンネルの中、光を頼りに道を探しながら進むと、信号機が。この信号機をライトで照らすと、それに合わせて音や映像が始まる仕掛けになっている。ドリルの音やダイナマイトの炸裂音が響く、過去の資料映像をスクリーンで見ることができる。まるでその現場にタイムスリップしたような気持ちになる。

館内を進むと、実物大の坑道やコヤマの採掘作業を再現した、リアルなセットや作業員(人形)が現れ、かつて炭鉱で実際に使われていたツルハシやヘルメット、運搬具などもずらりと並ぶ。暗がりの中でキャップランプだけを頼りに石炭を掘っていた作業の大変さがリアルに伝わってくる。見て、聞いて、感じる。まさに“体感する歴史”だ。

【記録ではなく、“記憶”にふれる時間】
館内を周り、最後に設置されているのが「鞍手町炭鉱Digital図書館」。
炭鉱で働いた人々の証言映像を中心に、かつての炭鉱作業や暮らしの実情を臨場感たっぷりに伝えてくれる。語り部たちが語る炭鉱の思い出や困難は、映像越しでも深く心に響く。現場の暑さ、暗さ、危険と隣り合わせの日々、そして仲間と支え合いながら働いたリアルな声が、まるで目の前にいるかのように感じられるのだ。

また、田川、飯塚、北九州市など福岡県内の他地域の資料館の情報も紹介されており、「鞍手だけで完結しない炭鉱の歴史」を学び渡ることができる。語りの中に生きた歴史が詰まった、まさに“記憶をひらく図書館”だ。

【ただの「資料展示」じゃ、もったいない】
この場所は、単に「昔の道具が並んでいる」だけの施設ではない。展示室全体が語り部のように、音や映像、光や空気までも使って、鞍手の過去をやさしく語りかけてくる。
展示室を出るころには、なんだか胸がほんのりあたたかくなる。知らなかったはずの町の記憶に、どこか懐かしさを覚えてしまうのだ。

石炭を掘っていたあの時代。それは単なる産業の記録ではなく、鞍手の人たちの生き方そのものだった。苦しくても、危険でも、誰かのために汗を流す――その精神は今も、「助け合い」「勤勉さ」「現場を大切にする姿勢」として、町のあちこちに生きている。

鞍手町の「石炭資料展示室」。そこは、過去を知り、今を見つめ、未来を想うきっかけをくれる場所。まるで坑道のように、ちょっと暗くて、でも奥の方からちゃんと光が見えてくる。

「光のさす方へ、ぜひ一度“未来への坑道”を歩いてみてください。」

■『鞍手町歴史民俗博物館」
住所:福岡県鞍手郡鞍手町大字小牧2097番地
TEL:0949-42-3200 
料金:無料
営業時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
定休日:毎週月曜・第3日曜・祝日・12月29日〜1月3日
駐車場:あり

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