【車中泊】湯沸かしに最強なのはバーナーか電気ケトルか? 非力バッテリーでも使える低電力ケトルを愛車に導入!
新たな国内旅行のスタイルとして定着しつつある車中泊の旅。車中泊公認スポット「RVパーク」を利用すれば、ホテルの半分以下の価格で全国各地に滞在できる。オートキャンプ場とは異なり、がっつり野外調理はできないことが多いけれど、車内で飲む1杯のコーヒーは乙なものだ。
筆者はバンをベースにしたキャンピングカーで出歩いているのだが、実は最近困っていることがある。「お湯が欲しいのに、上手く沸かせない」のである。
・アウトドアバーナー「ジェットボイル」のメリット
筆者が長らく愛用しているアウトドアバーナー「JETBOIL(ジェットボイル)」。キャンパーにはお馴染み、爆速でお湯が沸くことで名高いギアだ。
※写真のモデルは販売終了している古いものだが、他にもラインナップ多数
ジェットボイルのよいところは、とにかくコンパクトで、ちょっとしたスペースにも広げられるところ。平坦な作業台さえあれば、狭い車内でも使える(ギャレーがない場合、火災や換気には十分注意を)。
パーツ一式がクッカーの内部に収まるオール・イン・ワン構造も優秀。電源コードも電池も不要で、地の果てだろうが停電時だろうが、スタンドアロンで使えるのが便利。「電力に依存しない」のがサバイバルには一番強い。
さらに燃費が抜群によい。400mlのお湯を沸かすのにかかる時間は、室温20度の実測値で2分19秒! 「お湯を沸かしているあいだに別の作業……」なんてできないくらい速い。
熱効率は一般的なクッカーの約2倍に達するという。結果的にガスの消費量も少なくなり、一度カートリッジを買えば相当長く使える。
……と、文句なしに優秀なギアなのだが、最近上手く活用できていなかった。つい先日は、冬の車内でガスカートリッジが冷え切ってしまったためか、点火不良に。
また、ガスカートリッジは安全上の理由から、温度40度以上の場所に放置してはいけない。夏の車内は軽くそれくらいの温度になってしまうので、積みっぱなしにせずにガスカートリッジだけ自宅に持ち帰っている。すると起こるのが、「あぁぁぁガス缶、家に忘れたぁぁぁ」という悲劇だ。
筆者がお湯を欲する理由はほぼコーヒー。夜に車中泊地に着いてひと安心、「さぁ、コーヒーを飲んで一日の締め!」というシーンでお湯がないときのみじめさときたら! 再びクルマを出してコンビニに出かける気力は尽き果てている。
また、本体の組立や点火の手間もある。たいした作業量ではないし、このプロセスが「いかにもバーナーを使っている」感じがして気持ちいいけれど、ガス漏れさせずに着脱するのも少し気を遣う。
タイマーなどはないので、吹きこぼれないよう湯沸かし中は目を離せない。実際に炎が出るから、小さなお子さんやペットがいると使いにくいというのもあるかも。
沸騰したお湯を注ぐとき、筆者のモデルはクッカーを握り込むように持つのだが(ハンドル付きのモデルもあり)、スリーブ越しでも手のひらに熱さが伝わるのが個人的には少し苦手なところだった。バーナー部分も当然、めちゃくちゃ熱くなるから火傷注意。
・「Aliliy ポータブル電気ケトル」のメリット
以上のようにプチストレスが積み重なってきた最近、購入したのがAliliyのポータブル電気ケトル(Amazon参考価格:税込3250円)だ。
目を引いたのは、消費電力が300Wと低い点! 保温もできる家庭用の電気ポットで1000~1500Wと言われているので、かなり低電力であることがわかる。
電気ポット、ホットプレート、ドライヤーなど熱を発する家電は大きな電力を消費する。筆者のクルマにはサブバッテリーを積んでいるが、家電向けにAC変換するインバーターが非力で、調理家電はほぼ使えない容量。
ポタ電ことポータブルバッテリーをお持ちの方も、消費電力は気になるポイントだろう。
本体は大きめの水筒くらい。トートバッグなどに入れて外出先に持ち歩けるサイズになっている。
内部はすっきりキレイなステンレス製。タンブラーのようにも使える。
手提げ用のちょっとしたハンドルが付いているほか、小さな注ぎ口も開いている。
実際に車内に持ち込んで使ってみよう! セッティング中に気づいたのだが、付属の電源コードがかなり短く、延長コード必須だ。これはマイナスポイント。家庭のキッチンでも、これほど近くにコンセントがあるシーンはそうそうないのでは。
操作は水を満たしてボタンを押すだけ。容量は400mlなので、ホットコーヒーだと2杯分といったところだ。
加熱が始まると丸いスイッチ部分が青く点灯する。温度調節などの機能はなく、ワンボタンでお湯を沸かすのみのシンプル動作。
5分経過頃からゴーッという沸騰音が出るが、それほどうるさくはない。およそ8分30秒で静かにLEDが消灯し、お湯が沸いたことがわかった。このとき、物理ボタンが自動で戻るわけではないので「忘れて放置」は厳禁だ。
吹きこぼれ防止のため、2分待ってからフタを開けるよう注意書きがある。前述のジェットボイルが沸騰まで2分強なので、速さではバーナーが圧勝だ。
本体はほんのり温かくなるが、熱いというほどではない。注ぎ口からお湯が細ーく出るので、ドリップコーヒーを淹れやすかった。
まぁ、ちょっと注ぐ角度を間違えるとお湯がこぼれるけれど、これは慣れの問題だろう。耐久性に関しては不明だが、筆者の非力な電源環境でも十分にお湯を沸かすことができた!
使用後の丸洗いは不可で、普段は内側をゆすぐ程度のメンテナンスとなる。クエン酸洗浄は可能。
温度調節はできないから、ミルクを作りたいなど繊細な工程には向かない。また、メンテナンスをして長く使えるという点では、信頼を積み重ねてきたジェットボイルブランドには敵わない。安価な海外製品なので、ふいの故障などの可能性も否定できない。
ただし、スイッチを入れるだけの簡単操作や、炎が出ないことによる安心感はなかなかだ。本体が熱くなることもないので扱いやすい。ガスバーナーよりも気を遣うべき部分が少なく、気軽に使えると言えるだろう。
筆者もそうなのだが、今はホテルや旅館のポットを使いたくない人も多いと思うので、トラベル用にもよさそう。
・車載用12Vケトルはダメ?
類似の商品に車載用DC12V/24Vケトルというジャンルがある。クルマのシガーソケットにつなぐもので、特別な機器を必要としないのは利点だが、個人的にはオススメしない。
「安全のため走行中は使えず、アイドリングが必須であること」「沸騰まで20分以上(製品によっては60分も)かかること」「クルマのバッテリーへの負担が否定できないこと」などから、現実場面での実用性は高くないと考える。
なお、AliliyはAmazon内でのユーザー評価は高いものの、やらせレビューを識別する「サクラチェッカー」での判定は「危険」となっている。中国メーカーのようで、サポート体制なども未知数だ。
筆者の環境では問題なく使えているが、熱湯が噴出したという報告もあり、不良品・粗悪品が混入している可能性は皆無ではない。火傷、漏電、発火などに十分に注意して使用したい。
参考リンク:Amazon「JETBOIL」
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.