慶應SFC 世界的な自然保護地域認定へ 希少種59種 生物多様性育む
慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC・遠藤)と周辺の自然環境が先月11日、生物多様性が保全されていれる環境省の「自然共生サイト」に市内で初めて認定された。同大の保全に向けた取り組みが実を結んだ。
「自然共生サイト」は、世界153の国や地域などが参加した生物多様性条約第15回締約国会議に基づき、2030年までに世界の陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する目標(30by30)達成に向けた国の取り組みの一つ。23年度から始まり、国内ではこれまで328区域が認定されている。
認定されると国から保全の支援が受けられるほか、国際データベースに登録される。SFCは現在、データベースの登録審査中だ。
認定されたのは、キャンパスと隣接する遠藤笹窪谷戸や、藤沢市少年の森、農地などだ。
キャンパス内には、ビオトープ(生物生息空間)や樹林地、芝地、調整池など豊かな自然環境が広がっている。
動植物の生息場所としての高い機能が育んだ生物多様性が認められた。一昨年には474の生物種が確認される中、オオタカなど国や県が指定する59の希少種も確認。そのほかホンドキツネが市内で30年ぶりに確認された。
オールSFCで保全へ
自然環境の再生、保全に尽力した環境情報学部の学部長で「一ノ瀬友博研究会」を率いる一ノ瀬友博教授(56)は「認定を通して民間事業者が後に続いてくれたら嬉しい」と期待を口にする。
同研究会はキャンパス内で発生するバイオマス資源の有効活用の研究のほか、谷戸内に位置する看護医療学部棟裏の湿地性ビオトープの維持管理を行っている。
生物保全の中心である同ビオトープは2001年に作られた。「当時谷戸は公園でなく、大学と市とのバッファ(緩衝地帯)の役割もあったのではないか」と一ノ瀬教授。だが、着任した08年には同地は荒れており「どう管理をしたものかと、少し持て余しているようだった」と当時を振り返る。
生態系の空間配置やプロセスを研究する景観生態学が専門の一ノ瀬教授は、学生とともに維持管理に着手。セイタカアワダチソウやオオブタクサなどの外来種植物の抜き取りを手作業で行い、生物の種類や関連の調査に取り組んだ。
22年からはキャンパス全体の生物の把握を実施。同年、SFCの教職員や中高等部を含めた学生らが連携し持続可能な遠藤・御所見地区の実現を目指す「SFCサステナブルキャンパスプログラム」を開始。地域の農家や自然保護団体と協力し、里山環境への保全に努めている。
現在は発見された動植物をまとめた図鑑を学生たちと作成しているという一ノ瀬教授。「藤沢市を含め近隣の都市化が進むなか、ここで生物多様性を守っていくことで、これからも少しでも貢献していきたい」と話した。