【高知グルメPro】福建省出身のご主人が創り出す本格的でありながらも地元食材を活かした料理「創作中華と和食の桜華」食いしんぼフードジャーナリスト・マッキー牧元の高知満腹日記
「おや、こんな所に中国料理店がある」
高知市内から車で西へ1時間、四万十町の窪川駅の近くながら、繁華街ではない場所に、その店はポツンとあった。
「お客さんがくるのだろうか?」
そんな余計な心配をしながら店に入ると、20席ほどの店内は満席であった。
皆様々な料理をテーブルの上に並べ、楽しそうに飲んでいる。
そんな客の賑わいが醸す雰囲気には、「いい店」という空気が流れていた。
しかも町中華ではない。
メニューを開けば、おなじみの料理もあるが、創作料理もある。
途端にお腹が空いてきた。
「これを是非食べてください」
メニュー見ていると、奥さんらしき方に勧められたのが、「海老のカダイフ巻」だった。
カダイフとは小麦を糸状にしたもので、これをパン粉がわりにエビに巻きつけて揚げているのだ。
本来はトルコ料理で、一時フランス料理でも盛んに使われていた。
それを中国料理で、しかも四万十町で食べられるなんて。
ここのご主人、面白いぞ。
まずなんといっても、海老の質がいい。
サクッバリバリッとカダイフが弾けると、みっちりとしたエビに歯が入り、優しい甘みが溢れ出す。
「ビールください」。
そう思わず叫んだ。
次に頼んだのが内臓好きとしては最も気になる「病みつきホルモン」である。
現れたのは、濃茶色に染まった豚のシロ(大腸)である。
表面に唐辛子がたくさん見えて、辛いものが好きな私としてはたまらない。
食べれば、甘く辛い味付けで、そこに山椒の刺激が追いかける。
つまり麻辣味ですな。
この甘く、辛く、痺れの中で、クニュクニュとシロが脂の甘みを滲み出る。
「紹興酒ください」。
もはや、酒も箸も止まらない。
次は中国料理の基本、季節の青菜炒めでしょうと、「空芯際ガーリック炒め」を頼む。
火の料理でもある中国料理は、青菜炒めで差が出る。
青菜の香りは出ているか、ニンニクはそれを邪魔していないか、味付けが濃すぎないか、薄すぎないか、炒めすぎていないか。
ついプロの目で頼み、チェックしてしまう。
が、的確であった。
空芯菜は、みずみずしく、噛めばシャキッとみずみずしく、生き生きとしている。
そこにほんのりニンニクが香ってご飯や酒が欲しくなる。
次は四万十ポークが入った、おなじみ「回鍋肉」である。
運ばれれば、ピーマンと長ネギ 豚バラ肉が茶色く炒まっている。
その姿を見て嬉しくなった。
本来の「回鍋肉」には、キャベツが入っていないのだ。
食べれば肉が味わい深い。
この四万十ポークポーク自体の味が濃いのだろう。
その四万十ポークを使った、焼餃子を頼んでみた。
うむ、皮がいい。
カリッムチッとした皮が破れると、豚の肉汁が一気に溢れ出る。
野菜は少なく、あくまで豚肉主体の餃子という点も素晴らしい。
「すいません、もう一度ビールをください」
次に登場したのは、「香辛料香るガーリックシュリンプ」である。
クミンや辛子、細かく刻んだニンニク、ピーマン、ネギ、玉葱で味付けしたエビである。
香辛料が多いとくどくなることがあるが、これは軽やかで、香りのまとわせ方が、実にうまい。
最後の締めは「中華やきそば」をお願いした。
オイスターソース、玉子、豚肉、ピーマン、ネギとしめじ、人参、玉葱の焼きそばである。
丸いうまみが麺全体にまとわりついて、箸を口に運ぶスピードはが加速する。。
「焼きそばを作れない?」というお客さんの要望で作った、オリジナル焼きそばだという。
焼きそばを食べていたら満腹のはずなのに、なぜだかお腹が空いてきた。
ゆえにもう一品「ナスと絹サヤのガーリック炒め」を頼む。
ナス、豚肉、絹サヤを醤油味とニンニク風味で炒め合わせた料理で、主役はナスである。
トロトロになったナスが甘く、そこ絹サヤの香りが効いている。
思わず叫んだ。
「すいません。ご飯ください」
満腹だ、満腹のはずなのだ。なのに、箸が進んで仕方ないのだ。
食後に話を伺うと、ご主人は福建省出身で、上海に留学に来ていた奥さんと知り合い結婚したのだという。
奥さんが、地元高知にゲストハウスを作るのが夢で、それならということで高知に移住し、中国料理店を開いたのだという。
どうりで本格的である。
だが本格的でありながら、本格的になりすぎていない。
地元の食材を生かし、日本人の味覚に合うよう少しアジャストしている。
それが今日の成功につながっているのだろう。
店名は中国で桜を意味する。
異国の地で彼は見事な桜を咲かせ、愛されたのである。
高知県高岡郡四万十町北琴平町2-7「創作中華と和食の桜華」にて
店舗情報
インスタグラム https://www.instagram.com/ouka40010/