“最も偉大な王”ラムセス大王の豪華な至宝を目の当たりに 特別展『ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金』レポート
2025年3月8日(土)から9月7日(日)まで、東京・豊洲市場前の「ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo (豊洲)」にて、特別展『ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金』が開催中だ。
エジプト史上“最も偉大な王”と称され、古代エジプト史上最長となる67年間もの間エジプトを統治し、92歳まで⽣きたとされるラムセス大王(ラムセス2世)。和平に貢献した最強の戦士であり、巨大な建築物を制作、多くの側室を抱えて100人以上の子どもをもうけたと伝えられる。
古代エジプト展として最大級にしてエジプト政府公認の展覧会である本展は、古代エジプトの遺物(アーティファクツ)を最高の状態で管理・保存しているエジプト考古最⾼評議会特別支援のもと、約180点もの重要な芸術品を紹介するものだ。
“最も偉大な王” ラムセス大王に注目
古代エジプトにまつわる展覧会といえば、日本ではツタンカーメン王やクレオパトラ7世に着目されることが多く、ラムセス大王を取り上げることは少なかった。歴史に名を残し、エジプトでも人気が高いことを考えれば不思議であるが、今回はそんなラムセス大王にスポットをあてた意義深い展覧会である。
会場冒頭で出迎えるのは《ラムセス2世の巨像の頭部》。古代エジプトは、デルタ地帯を境として上(かみ)エジプトまたは下(しも)エジプトと呼ばれるが、特徴的なとがった冠は、上エジプトの王でもあることを示す。また本像は、エジプト中王国時代の王の像を再利用して作り変えたものだ。
古代エジプトの王は5つの名前を持っており、ラムセス大王はさまざまな場所に自らの名を刻んだ。《謎かけで自身の名を捧げるラムセス2世の跪拝像(きはいぞう)》は、ラムセス大王が捧げる城の上にラー神と子ども(エジプトの子どもは「メリ」)とアメン神が刻まれており、ラムセス大王の誕生名「ラムセス・メリ・アメン」を示すという、まるで絵で示す謎解き「判じ絵」のような遺物である。
ラムセス大王が建築した「アブ・シンベル神殿」は、ラムセス大王に捧げられた大神殿と王妃ネフェルタリのために建造された小神殿からなる建築物。神殿奥にある王たちの像には、ナイル川の氾濫が起こり生を想起させる春分の日、昼夜が同じ時間になって夜の割合が増える秋分の日に光が当たるという。本展では神殿正面の模型があるが、神殿内部は会場最後にある没入型VR体験に登場するので、是非確認してほしい。
ラムセス大王のミイラが入っていた《ラムセス2世の棺》はもともとラムセス大王の棺ではなく、ミイラを別の棺に入れ替える際に使われた、王族の棺を再利用したもの。通常の棺は薄い板を貼り合わせるが、こちらは大木をくりぬいて贅沢に作られており、もともと表面に金箔が貼られていた貴重な逸品である。
エジプト政府公認 豪華な180点もの至宝を目の当たりに
エジプト政府公認の本展は、エジプトから来た豪華な至宝が数多く紹介されている。会場にはマスクや皿、剣や王冠、ネックレスやガードルなど、黄金をふんだんに使った遺物やジュエリーがずらりと並ぶ。
《アメンエムオペの棺から出土した金箔が施された木製のマスク》は、ラムセス大王より少し後の王のミイラマスクで、木製で金箔が貼られている。こちらはラムセス大王のつくったものが数多く運び込まれて再利用された場所、タニスで発見されたもの。なお、会場には他にもタニスで発見された金銀の作品が紹介されている。こういった王族の遺物が数多く展示されているのも本展の特徴だ。
他にも、輪と鐘をあしらった鎖が連なる《プスセンネス1世の襟飾り》、金や銀、黒曜石やラピスラズリなどが光を放つ《シトハトホルイウネト王女の鏡》、両側にあるハヤブサがユニークな《ハヤブサの頭をあしらったネフェルウプタハ王女の襟飾りと吊るし錘》、金やラピスラズリ、カーネリアンの輝きがゴージャスな《シトハトホルイウネト王女の髪飾り》《イタ王女の短剣》など、金銀や宝石を贅沢に使い、当時の技巧を結集させた素晴らしい作品が揃っている。これほどの至宝が日本に結集しているとは、まさに一生に一度の機会といえるだろう。
三千年前の歴史や遺物を素晴らしい展示空間で体感
荘厳な音楽、美しい照明、鮮やかな映像やダイナミックなプロジェクションマッピングなどにより、まるで別世界のような展示空間で古代エジプトの世界観に浸ることができるのも本展の魅力。各章の説明や配置なども分かりやすいので、数多くの至宝を理解しながらじっくり堪能することができる。
エジプトと周辺諸国の権力と支配を示す作品の付近には、エジプトとヒッタイトの戦争であり、最古の国際平和条約が結ばれたとされる「カデシュの戦い」のプロジェクションマッピングがあり、当時の戦いの様子をリアルに伝える。なおこの戦いは、当時の国際的な戦争としては珍しく詳細な記録が残っており、映像も記録をもとにしているそうだ。
会場は、ラムセス大王の生涯を紹介する映像に始まり、《ラムセス2世の巨像の上部》とともにラムセス大王のミイラや調査の様子などを伝える映像で締めくくられる。ラムセス大王の生涯や歴史を学び、遺物や模型で偉大な足跡を実感し、近年の調査や研究について知ることができるという、知識や情報が増え、深く記憶に残る構成だ。
物販コーナーの奥では没入型VR(バーチャル・リアリティー)体験が可能。視界がすっぽりと覆われるゴーグルをつけ、大きなチェアに体を沈めれば、王妃ネフェルタリに誘われてアブ・シンベル神殿を探索する冒険の旅の始まりだ。リアル映像でラムセス大王の生涯を知ることができるコンテンツで、鑑賞の興奮と余韻がよみがえるだろう(VRは別途チケットが必要)。
本展は物販コーナーが非常に広く、3種類の図録や青山デカーボとコラボしたクッキー缶、各種文房具やアパレルなど、充実の品揃えだ。他にもロボットが名前をヒエログリフでパピルスに描いてくれる企画や、エジプトを背景にした写真撮影ができるコーナー、特別メニューを味わえるコンセプトカフェなど楽しめる要素が盛りだくさんなので、是非堪能してほしい。
ラムセス大王の偉大な生涯を最新の映像や貴重な遺物で学習し、VRで古代エジプトの栄華を体感できる特別展『ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金』は、2025年9月7日(日)まで、東京・豊洲市場前の「ラムセス・ミュージアム at CREVIA BASE Tokyo (豊洲)」にて開催中。
文・写真=中野昭子