副業型の地域活性化起業人 釜石市、初登用 都市圏のデジタル人材に期待「地方に刺激を」
釜石市は23日、「地域活性化起業人」として、IT(情報技術)を活用したものづくりや中小企業のコンサルタント業務などを手掛ける「Crossover Group」(東京)の最高経営責任者(CEO)、野辺地葵さん(27)に委嘱状を交付した。三大都市圏の民間力を地域活性に生かす総務省の制度を活用するが、これまでの企業派遣型とは異なり、「副業型」での受け入れ。野辺地さんは従来通り同社で働きながら、市が依頼する業務に取り組む。
地域活性化起業人制度は、地域の課題解決に民間企業のノウハウや知見を活用しようと総務省が2014年度に創設した。地方自治体と協定を結んだ民間企業が社員を一定期間派遣し、即戦力として業務に取り組んでもらうもので、国は特別交付税措置で財源を支援する。
この企業派遣型に加え、24年度からは企業に所属する社員個人と自治体が協定を結ぶ形の副業型制度がスタート。企業派遣型は月の半分以上は受け入れ自治体に滞在して働く必要があるが、副業型は月に4日以上、計20時間以上を自治体業務に充て、受け入れ自治体での滞在日数は最低月1日とする。居住の必要をなくし参加のハードルを下げた形だ。国は副業期間中の経費や交通費(上限合計200万円)を補助。自治体のホームページ運営など主にリモート対応が可能な分野で、都市部のデジタル人材らに働いてもらうことを想定する。
野辺地さんは岩手県九戸村出身。3年ほど前に同社を立ち上げ、中小企業が抱える課題についてITデータなどを使って解決策を練ったり、ネット通販サイトやアプリ制作などの事業を展開する。釜石には母方の実家があり、年に数回訪れる「故郷のような街」だったことから、「活気ある街づくりの一助になりたい」と参加を決めた。
任期は来年3月末まで(最長3年)。「地方創生・政策推進研究員」として、市の人口統計データや市内企業に関するデータなどを分析し現状と課題を整理、それに対応する施策の立案・展開に向けた助言といった活動に取り組む。
市役所であった交付式で小野共市長から委嘱状を受け取った野辺地さんは「故郷が抱える課題に向き合い、解決の後押しができる取り組みだと感じ、一念発起。一朝一夕にはいかないだろうが、市の職員や企業関係者、市民の活動を全力で手伝いたい」と気合十分。もともと同起業人に関心があり、副業型の開始を耳にしていたことから、いち早く市の募集に手を上げた。拠点を移さず地方創生に携わったり、自身のキャリアを生かせることに魅力を感じていて、「関わる人と互いに刺激し合い、活動や施策を磨き上げたい」と力を込める。
市はこれまでに企業派遣型で4人を受け入れ(全員任期終了)たが、副業型での受け入れは今回が初めて。小野市長は「目に見える課題だけでなく、裏に隠されている事実に対応した施策や事業を作り、精度を上げることが重要。民間の刺激、面白い指摘を期待している」と述べた。