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【青春18きっぷおすすめ旅】札幌発2泊3日、目指すは北の秘境駅・廃線跡(宗谷本線・函館本線ほか)

さんたつ

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旭川から日本最北の稚内(わっかない)まで全長259.4㎞を北上する宗谷本線。最果ての絶景と秘境駅と出合い、折り返しはバスで廃線跡を辿る。雄大な自然とノスタルジーが交錯する、忘れがたい旅路が待っていた。

「札幌発2泊3日 北の秘境駅、廃線跡を目指す旅」のルートはこちら!

【1日目】
札幌駅→函館本線・宗谷本線→音威子府(おといねっぷ)駅(泊)
【2日目】
音威子府駅→宗谷本線→稚内駅(泊)
【3日目】
稚内駅→宗谷本線→豊富駅…札幌駅

【1日目】札幌駅→音威子府駅 あの頃のSLと真っ黒そばに会いに行く

旅人はなぜ北へ向かうのか。理由は千差万別だろうが、“最果て”という響きに、センチメンタルな旅情をかき立てられるのは確かだ。

朝6時に札幌を発ち、旭川駅から日本最北の鉄路・宗谷本線の旅が始まった。市街地を抜けると、間もなく車窓には田園風景が広がり、剣淵(けんぶち)駅を過ぎてからは深川林地と呼ばれる林の中を縫うように突き進む。清々しい新緑のトンネルに、気忙(ぜわ)しい日常がスーッと溶けていく。

名寄(なよろ)駅で途中下車し、『名寄市北国博物館』へ。冬の鉄路を守ってきたSL排雪列車・キマロキと対面し、往時の雄姿に思いを馳せてみた。

夕方、音威子府駅に降り立ち、駅前の『ゲストハウス イケレ』へ向かう。かつて音威子府駅で“駅そばの聖地”として愛された、『常盤軒(ときわけん)』の真っ黒いそばが味わえると聞きつけたからだ。

「製麺所も廃業して一時は幻となったのですが、千葉県で食堂を営むこの村出身の店主が独自に開発し、新・音威子府そばとして復活させたんです」と宿主の竹本修さん。

真っ黒いそばをすすると、野性味あふれる力強い香りが鼻を抜け、遠い日の旅の記憶が蘇った。思い出の味を求め、遠方から足を運ぶファンの気持ちがよくわかる。

【名寄駅】『名寄市北国博物館』名寄でしか見られない! SL排雪列車を野外展示

SL排雪列車・キマロキ。機関車やマックレー車、ロータリー車が連結する編成からキマロキと名づけられた。
北国の冬の暮らしの変遷を、防寒具や除雪道具などの展示物でわかりやすく解説する。

北国をテーマに寒冷・多雪な名寄市の生活文化や自然現象などを紹介。旧名寄本線の線路上に野外展示されたSL排雪列車・キマロキの姿を求め、遠方から訪れるファンも多い。

☎01654-3-2575
9:00~16:30受付、月曜休。220円
北海道名寄市緑丘222
JR宗谷本線名寄駅から徒歩18分

【音威子府駅】北海道で一番小さな村に降り立つ

音威子府駅は宗谷本線では希少な有人駅。
音威子府駅内にある天北(てんぽく)線資料館(入館無料)では、貴重な鉄道史料が展示されている。

【音威子府駅】『ゲストハウス イケレ』アットホームな駅前宿では、思い出の味と再開できる

かけそば700円。碾(ひ)きぐるみの黒いそばは風味豊かで、利尻昆布が香るつゆとよく合う。
温かく迎えてくれる、宿主の竹本さん(右)と スタッフの北原郁子さん(左)。

音威子府駅前にあるアットホームなゲストハウス兼食堂。個室とドミトリーの2タイプがあり、共用のリビングルームでは、旅人同士の交流も。列車の発着時間に合わせて食事を用意してもらえる。

☎01656-8-7565
1 泊素泊まりドミトリー3000円、個室4000円
北海道音威子府村音威子府511-6
JR宗谷本線音威子府駅から徒歩1分

【2日目】音威子府駅→稚内駅 日本最北の無人駅に降り立ち絶景のクライマックスへ

抜海(ばっかい)〜南稚内間は、紺碧(こんぺき)の日本海に浮かぶ秀峰・利尻山を一望できる、宗谷本線のクライマックス   写真=マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ

翌朝は始発列車に乗り、いよいよ稚内を目指す。天塩中川(てしおなかがわ)駅を過ぎると、鉄路は悠々と流れる天塩川に寄り添うように進む。そこから先は秘境駅の宝庫だ。

小さな物置小屋がぽつんと佇む糠南(ぬかなん)駅、築70年の木造駅舎の雄信内(おのっぷない)駅、かわいいキャラクターが描かれた下沼(しもぬま)駅……。それぞれに個性を放ち、凜と構える無人駅の姿に元気をもらい、車窓から夢中でシャッターを切った。

宗谷本線の秘境駅。よくばりさんはここも!

牧場に囲まれて佇む糠南駅。この駅を舞台に、毎年開催されているクリスマスパーティーは名物イベントだ。
1953年築の雄信内駅の木造駅舎は、時間が止まったかのような趣。廃止の危機を免れ、地域住民に守られている。
貨車を再利用した下沼駅舎の外観には、駅のキャラクター「ぬまひきょん」が描かれている。秘境駅には珍しいポップさ。

やがて終着が近づくと、鉄路は内陸から日本海沿岸へカーブを描き、その途中の抜海(ばっかい)駅に降り立つ。この駅は日本最北の木造駅舎・無人駅で、2024年6月に100歳を迎えた。古びた外壁や屋根には、厳しい風雪に耐えてきた歴史が刻まれている。

「ホームから眺める駅舎の風景が忘れられず、30年ぶりに来ました。再会できて涙が出そうです」。駅舎内のノートをめくり、旅人たちの書き込みに思いをめぐらす。帰り際、私もそっと思い出を綴ってみた。

抜海駅から南稚内駅までの区間は、宗谷本線のクライマックス。日本海の向こうに残雪の利尻山がそびえる絶景をしっかりと目に焼きつけた。

終着の稚内駅に着いたのはちょうど昼どき。まずは腹ごしらえと稚内港前の『海鮮炉端 うろこ亭』で新鮮魚介が満載の海鮮丼を味わう。とりわけ春から夏が旬の地物の生ウニはとろりと甘く、感動的なおいしさだ。

お腹を満たしたあとは、北緯45度31分、北海道本島最北の地に位置する宗谷岬まで足を延ばす。夏とはいえ、潮風はひんやり冷たく、サハリンの島影を望みながら、最果てに辿り着いた到達感をかみしめる。

【抜海駅】コバルトブルーの海と残雪の利尻山の絶景コラボレーション!

抜海駅から2㎞ほどの海岸線からは残雪の利尻山を望む。5~10月はレンタサイクル(https://reserva.be/bakkaistation。1時間500円、前日までに要予約)も利用できる。

ホーム側から見た駅。軒下は壁でしっかり覆われ、風除室になっている。
白い貝殻で駅名がかたどられた看板。
一日の乗り入れ列車は上り4本、下り3本のみ。

【稚内駅】『海鮮炉端 うろこ亭』稚内港を眺めながら豪華海鮮丼を味わう

稚内・宗谷産の生ウニをトッピングした4~9月限定のムラサキウニ・うろこ市丼3300円~。イクラやカニ、ホタテ、甘エビなど9種類の魚介がたっぷり。

創業70年の老舗水産加工会社が営む海鮮食堂。稚内近海の新鮮な魚介を使った海鮮丼や刺身定食をはじめ、稚内名物のタコしゃぶや宗谷黒牛のステーキなども味わえる。

☎0550-81-2233
10:30~21:30(物販は9:00~17:00)、日休(連休の場合は要問い合わせ)
北海道稚内市中央5-6-8
JR宗谷本線稚内駅から徒歩11分

【稚内駅】『稚内港北防波堤ドーム』稚泊(ちはく)航路の記憶を伝える壮大な歴史的建造物

かつて稚内と樺太を結んでいた鉄道連絡船・旧稚泊航路の防波堤として昭和初期に建設された半アーチ形ドーム。古代ローマ建築物を思わせる70本の円柱と427mの回廊は、世界でも類のない独特の構造と景観が見どころだ。

☎0162-23-6468(稚内市観光交流課)
見学自由
北海道稚内市開運
JR宗谷本線稚内駅から徒歩6分

【稚内駅】「宗谷岬」サハリンの島影を望む北海道最北の地

日本のてっぺん、北海道本島最北の地に位置する岬。先端には北極星の一稜をモチーフに、北を表わす「N」の文字をあしらった「日本最北端の地の碑」が立つ。

☎0162-23-6468(稚内市観光交流課)
見学自由
北海道稚内市宗谷岬
JR宗谷本線稚内駅からバス50分の宗谷岬下車すぐ

【3日目】稚内駅→札幌駅 日本海沿いをバスで南下し、哀愁の廃線跡を訪ねる

豊富駅から札幌駅前までは、地域住民の足として活躍する沿岸バスを利用。約380㎞を走る道路、日本海オロロンラインへ出発!

稚内からの折り返しは、路線バスに乗って日本海沿岸に点在する国鉄羽幌(はぼろ)線の廃線跡をめぐる計画だ。

羽幌線は1958年に留萌(るもい)駅から幌延(ほろのべ)駅の全線が開通し、石炭やニシンの輸送を支えてきたローカル線。廃線から37年経ったいまも、橋梁やトンネル跡がひっそりと姿を留めている。

なかでも、現存するうちに見ておきたかった金駒内川(きんこまないがわ)橋梁を目指し、初山別(しょさんべつ)郵便局前で途中下車。海沿いを20分ほど歩くと、古びた橋梁の姿が。草木に覆われ錆びつきながらも、圧倒的な存在感を誇示する姿は、勇壮でどこか切ない。そんな哀愁に浸れるのも、最果ての旅の醍醐味だ。

【沿岸バス】道中にも続々と。車窓から眺める鉄道遺構

遠軽(えんがる)町のモオタコシベツ川に架かる旭川橋梁。 国道232号沿いにあり、車窓からよく見える。
苫前(とままえ)町の国道232号沿いで見つけたトンネル跡。線路はないが、路盤の名残がある。
羽幌町の入口にはオロロン鳥(ウミガラス)の巨大なモニュメントが!

【初山別郵便局前バス停】バスから降り、大地に眠る橋梁へ

初山別市街地から豊岬に向かう途中にある金駒内川橋梁。 海を見渡す高台にあり、車窓からはさぞかし絶景が楽しめたことだろう。

【留萌駅前バス停】あの駅はいま、どうしてる?

2023年3月、役目を終えた留萌駅跡。フェンス越しに跨線橋(こせんきょう)やホームが見える。

【留萌駅前バス停】『おみやげ処 お勝手屋 萌(もえ)』留萌の特産品を使った数量限定の名物おむすび

磯むすびは、ほどよい塩味の糠ニシン、カズノコと昆布の佃煮の2個入りで380円。数量限定で売り切れ必至なので予約(前日の16時まで)がおすすめ。
「ニシンの粉末が入ったにしんパイもおすすめ!」

留萌観光協会が運営するアンテナショップ。カズノコや糠(ぬか)ニシンなど留萌の名産品をはじめ、近郊市町村の特産品が幅広くそろう。留萌産の米・ゆめぴりかを使った磯むすびも人気。

☎0164-43-1100
9:00~18:00、無休
北海道留萌市栄町3-2-13
沿岸バス幌延留萌線留萌駅前バス停から徒歩3分

取材・文=葛西麻衣子 撮影(名寄市北国博物館・宗谷岬を除く)=計良一春
『旅の手帖』2024年7月号より

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