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我々人類はかなり贅沢な理想を抱いていると思う。

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我々人類はかなり贅沢な理想を抱いていると思う。

どうも、ズイショです、よろしくお願いしますー。


さっそくだがみんな聞いてくれ!我が家にはこの春から小学二年生になる息子がいるんだ。

世の中には子どもが自分の人生の中心になったとか人生の主人公が自分から子どもになったとかそんな言説が溢れかえっているが俺の人生の主人公は死ぬまで俺に決まってるだろというスタンスの俺もそれなりに家族みんな仲良くやってはいるぜ!


生まれてから数年の間は犬と互角か犬にちょっと負けてるくらいで何もわかっちゃいねえし会話もろくすっぽ通じねえので色々な苦労もあったが最近の息子はなかなか話せるやつに育ってきて見どころがあります。

俺が息子に勝てないジャンルも増えてきた。英語のスピーキングやヒアリング、ピアノ、けん玉、神経衰弱、国旗当てクイズなどなど、息子の方が俺よりあきらか格上の対戦ジャンルが増えていくのは面白いもんだなと思う。この調子で行くと中学数学とかも負けるとちょっとムカつくのできっと将来は机を並べて昔取った杵柄を取り戻すように息子と共にドリルに励むようになるのだろう。


子どもが家にいて面白いなと思う一番のことは、実益にフォーカスして情報を選り好みして摂取してしまう錆びついた大人の脳に、知的好奇心の塊みたいな子どもの「なぜなにどうして」を俺の脳をまるでチャットAI扱いするかのようにぶち込まされて食わされて、現在の生活には特に何の役にも立たないかつて自分が子どもの頃に純粋な知的好奇心から取得した知識を呼び起こされ、その知識が今も間違ってないかを子どもと共に学び改め、そして数十年ぶりに掘り起こした知識をもとに自分の世界観を見直すことを迫られるところです。


いやもちろん「なぜなにどうして」を起点とした職業、たとえば研究職で飯を食ってる人は世の中にたくさんいてそんな人たちからすると何を当たり前のことを言っているんだと思われるかもしれないが、俺みたいな数字を追っかけてなんぼの資本主義に頭から飲み込まれてしまったビジネスパーソンをやってる大人からすると子どもの「なぜなにどうして」に付き合わされるだけで何かしらのデトックス効果を体感できる自分一人ではなかなか獲得しがたい貴重な経験なのだ。

説明しよう!俺みたいな数字を追っかけてなんぼの資本主義に頭から飲み込まれてしまったビジネスパーソンをやってる大人からすると子どもの「なぜなにどうして」に付き合わされるだけで何かしらのデトックス効果を体感できる自分一人ではなかなか獲得しがたい貴重な経験なのだ!「説明しよう!」を付けた方が気持ちよさそうかもと思ったので二回言っただけで特に大事なことを言ったわけではないです。


息子の興味関心のジャンルは鉱物、元素、音楽、世界遺産、恐竜、世界の言語、落語、QuizKnockなど多岐にわたるが、やはり小学生の小僧にとって気にならずにいられないのは動物たちの生態だ。哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類、昆虫、その他、人間とは違う生き物がどのように生きてどのように死ぬか、それを面白がる子どもの好奇心はとどまることを知らないし、いくつものそれを学ぶ教材の数に枚挙に暇がないのを眺めたりして。


一瞬ちょっと無邪気になにもかも桜井和寿っぽかったですけど、ここからが本題です。


そんなわけで、テレビとかで動物の一生みたいなドキュメンタリーを息子とよく観るんですね。ああいうのってどうやって撮ってるのかな、すごいよね。いろんな野生動物の特定の個体を一年スパンで追いかけるみたいなやつ。ああいうドキュメンタリー撮ってるカメラマン、たぶん俺の二十倍くらいお母さんに「ちゃんとご飯食べてるの!?」って電話で言われてるんじゃないかな。

で、そういうのを息子と観るわけですよ、二人でソファに寝っ転がって観てるんですけど、だいたい主役がメスなんすよ。メスがいて、親離れして、なんかオスと出会って交尾して、子どもを出産して、育て上げて、子どもも狩りを覚えて、みたいな構成が多くて。で、僕と同じソファで寝っ転がって頬杖をついてる息子は純粋な知的好奇心から父親に聞くわけです、「お父さんどこ行ったん?」て。「要らんからおらんくなったんやろなぁ」くらいしか言えないじゃないですか。

あれ、ちょっと待って、子育てしてるオスってもしかして自然界にあんまおらんの?少なくとも少数派っぽいのよな〜!!


いやおるんすよ、夫婦で子育てする生き物。人間以外でも全然おらんことはないんですけど。なんか岩場のペンギンとかね、何千何万おるんかわからんいかつすぎる集合団地みたいな岩場で夫婦が交代で海に魚を獲りに出てそのあいだもう一方は留守番して子どもの面倒見て、そして漁に出た方は魚を丸呑みして胃袋に収めてそれを持って帰ってきて子供にゲーして食わすみたいなんやってる生物もそりゃもちろんたくさんいるんすよ。何まる何号室みたいなん無いのに、よく自分の家族わかるね!みたいなペンギンとかもおるんすけど、どうも調べた感じ、そんな夫婦で子育てする生き物ってかなり少数派っぽいんですよね。カマキリとかサソリとかクモとかなんかになると、交尾した後メスがオス食ったりしてますからね。種付け終わったら栄養分くらいしか使い道ないかんかいな。人間ATMどころの話じゃないですよほんま。


で、息子を脇に抱えてソファに寝っ転がる僕は思うわけですよ、「あ、俺って生き物としてかなり変なことをやってるんだ」と。息子からの質問にも困りますよね、「なんかライオンのお父さんどっか行っちゃったんだけどなんで?」て言われても、いや説明はできるけどお父さんがいない方がいい理由をお父さんに説明しろって言われてもお父さん困るんだけどってなりますよね。そもそも息子がお父さんに側にいてほしいかどうかすらそれは知らないし。


で、この「人間は自然界のほかの生き物と比べてかなり変なことをやっているんだな」という感覚ってすごい大事なんじゃないかということを考えてたんですね。入口としては子育てをメスがするかオスも一緒にするかって問題ではあるんですけど、それに限らずなんでもですよね。「僕たちはちょっと生物としておかしいことをやろうとしている、それをずっとやってきた、自然界では一般的じゃない変なことをやってるんだからそりゃ当然工夫がたくさん必要だ、当たり前じゃない、なんとかしてみんなで力を合わせて実現するんだ」ってもうちょっと思ってもいいんじゃないかなみたいなことを考えてて。

たとえば子育ての話でいうと「女が子どもの責任を一挙に引き受けて、男は逃げて許される!おかしい!」は現代の倫理観でいうとそうなんですけど、自然界では合理性を追求した結果まあそうなってて、人間の方がむしろよっぽど風変わりなことをやってるんだなというのがただそこにある事実だと思うんですよね。それは資本主義だったり貨幣制度だったり国家領土の概念だったり農耕文化だったり、あんまり他の生物がやってないことをホモ・サピエンスがずーっとやり続けて反映したいびつな結果で、その無茶の恩恵をみんなで受け入れてきた結果なんだから、こんな変なところまで来ちゃったけどこれからどうしようかってのは「どうしてくれるんだ!」じゃなくて「これからどうしようか」ってひとつひとつ考えていくしかないんだなって。人間は、ほかの生き物にはできない無茶苦茶をやってきたことを認めようよみたいな。僕らが理想と呼ぶそれは全然自然なことじゃないんだよ、と考えるわけです。


ほんでね、こういう話を書こうかなと思って、「でもこれくらいのこと同じようなこと考えてすでに本にしてる人なんぼでもいるでしょ」と思って軽く調べてみたんですけど、むしろ僕の考えてることと真逆で「夫婦で子育てする動物」みたいなテーマで「パパさんも動物に倣って子育てちゃんと参加しようね!」みたいな本しか出てこないんすよ。いや、大事だよ、子育てするオスの動物から人間のオスも子育てのやり方学ぶことも大事かもしれないけど、その動物が夫婦で子育てする理由と人間が夫婦で子育てする理由はそもそも根本的に違うだろうし、その動物らも結局少数派なんだから「これがあるべき姿です!オスも育児しましょう!」みたいに言われてもそれは違うんじゃねえかな、みたいな。


いろんな生物の生態を見ていくとね、どっちの方が優しくなれるんだろうなと思うんですよね、いや、どっちかを選ぶって話では全然ないんですけど。「人間には人権があります。誰でも平等に幸せに生きれない社会なんて間違ってます」っていう正論はわかるんですけど、一方で「弱い個体が淘汰されて弱肉強食で死んでいく」っていう自然界の掟を真っ向から否定しようとする人間はすごく優しい生き物で、一方で誰一人取りこぼさない社会の実現なんてのはとんでもない茨の道なんだってところまで分かったうえでそれでもみんなで力を合わせてやっていくんだってちゃんと受け止めたい。

生物としてかなり不自然なことをやっている、無理を通せば道理が引っ込むレベルのことを、道理で押し通してしまってここまでやってきた、人間って相当に不思議な生き物だなって前提がもうちょっと共有されてほしいなというか、どれくらい共有されてるのかちょっと自信ないなって自分自身がどれくらいわかってるのかも含めて思うわけですよ。


贅沢言うなって話ではないんです、「弱者救済なんてそんな余裕はない贅沢言うな」とか「女は家に引っ込んでた方が効率的だ、社会進出とか贅沢言わずに家事育児だけやっとけ」とかそういうことを言いたいわけでは全くないんです、これから人類がやりたいこと目指す社会を考えるうえで「我々人類はかなり贅沢な理想を抱いている、だからみんな協力しながら、なんとか自然に逆らってでもやっていくやり方を探していきたいね」くらいのそういう相互協力みたいなコンセンサスが家族にも会社にも地域にも政治でも、もっと当たり前になるといいねって思いました。


わかってるんよ、こんなん人に話したらね、育児するの嫌な無責任な父親だみたいなそしりを受けてどうせ怒られることはわかってるんよ、でもそうじゃなくてね、人間という存在がいかに変なことをやっているか、自然に背いて理想を追求しているか、僕達が目指すみんなが幸せな社会は「そうあるのが当たり前の本来あるべき社会」じゃなくて「だいぶ無茶やって実現しようとしている協力し合わないとできっこないすごいかっこいい社会」なんだっていう、そういう意識をもっとみんなで共有できたらいいと思うんだよねお父さん最近そういうこと考えてるんだよね、って春休みでずっと家にいる息子と在宅リモートの昼休憩時間に二人で飯食いながらざっくり話してみたら「だいたいわかったわ、頑張っていこ」て言われました。頼もしいね。

***


【著者プロフィール】

著者名:ズイショ

関西在住アラフォー妻子持ち男性、本職はデジタルマーケター。
それだけでは物足りないのでどうにか暇な時間を捻出してはインターネットに文章を書いて遊んだりしている。
そのため仕事やコミュニケーションの効率化の話をしてると思ったら時間の無駄としか思えない与太話をしてたりもするのでお前は一体なんなんだと怒られがち。けれど、一見相反する色んな思考や感情は案外両立するものだと考えている。

ブログ:←ズイショ→ https://zuisho.hatenadiary.jp/
X:https://x.com/zuiji_zuisho

photo by Piron Guillaume

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