超美味魚『カイワリ』と大衆魚代表『マアジ』の【ハイブリッド魚】の養殖が開始 気にあるお味は?
マアジとカイワリを掛け合わせたハイブリッド魚の養殖が千葉県の南房総で開始されました。マアジは知っているけどカイワリを知らない方も多いのではないでしょうか?この記事ではハイブリッド魚とカイワリについてご紹介します。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
あまり知られていないけど美味しいカイワリ
カイワリはアジ科カイワリ属に属する1属1種の海水魚。別名で「ベイケン」「ヒラアジ」などと呼ばれています。学名では Kaiwarinus equula であり、属名までカイワリになっているのです。
なお、カイワリの名は尾鰭の形状が「貝割(発芽したばかりの草木の葉の状態)」に似ることが由来とされています。アジ科には標準和名に「カイワリ」と付く魚としてインドカイワリ、ナンヨウカイワリが知られていますが、カイワリとは異なる属に分類される魚たちです。
カイワリは食用になる他のアジ科と比較するとややマイナーなイメージですが、分布が広く北海道以南の日本各地に分布するだけでなくインド~太平洋の各地で見られます。国内では各地で食用となっており、塩焼きで食べると非常に美味しいことから地域によって高い値段で取引されるそうです。
一方、マアジはカイワリと同様にアジ科に属するもののマアジ属に分類されます。本種も食用として非常に需要が高く、定置網や釣り、様々な漁法で漁獲される大衆魚です。
今回、養殖が開始された魚はこの2種を掛け合わせたハイブリッド魚ということになります。
ハイブリッド魚とは?
ハイブリッド魚とは異なる種を掛け合わせた交雑種のことです。
交雑種は自然下でも稀に生じる現象であり、これを人為的に発生させ養殖に適した種を生み出しています。同属の魚は交雑種が生じやすく、自然下においてはニシキベラ×オトメベラ、カケハシハタ×イヤゴハタ、イシガキダイ×イシダイなどの個体と思われる目撃情報があるようです。
なお、イシガキダイとイシダイの交雑は近畿大学で養殖研究が行われており、近畿大学にかけて「キンダイ」とも呼ばれています。
養殖業においては種間交雑種としてブリヒラ(ブリ×ヒラマサ)やクエタマ(クエ×タマカイ)、属間交雑種としてベステル(オオチョウザメ×コチョウザメ)が開発されました。今回のハイブリッド魚はマアジ属のマアジとカイワリ属のカイワリの属間交雑になります。
ハイブリッド魚のメリットとして味などの点で両種のいいとこどりすること、成長速度が早いことなどが挙げられる一方、海上養殖ではハイブリッド魚の逸散による生態系への影響も懸念されているようです。この対策としてハイブリッド魚は先天的に不妊の個体が養殖されていますが、自然繁殖する可能性もあるのではないかという指摘もあります。
カイワリ×マアジのハイブリッド魚
今回、話題となったハイブリッド魚(カイワリ×マアジ)の養殖は千葉県南房総市にある富浦漁港で開始されました。
本プロジェクトは、岩井富浦漁業協同組合の協力のもと東京海洋大学の研究者とベンチャー企業「さかなドリーム」が手掛けており、最先端の養殖技術を駆使したオリジナルのハイブリッド魚の養殖に成功。先天的に不妊の個体のみを販売・飼育することから、生態系への影響は極めて限定的だといいます。
現在は3,000~4,000匹の個体を養殖しており、1匹200~300gまで成長させるとこのとです。2,000~3,000匹を来年の春~夏への販売を目指し、1キロ3,000円での販売を見込んでいます。価格は天然アジと比較すると高価ですが、味が大変良く寿司職人からの評価も高かったそうです(マアジ×カイワリ=「世界一うまい養殖魚」 すし職人らも出荷待望-毎日新聞)。
このように養殖技術の発達で生態系へ影響を減らししつつ美味しいハイブリッド魚が開発されています。この先、ハイブリッド魚の技術がどのような進化を遂げるのか今後も目が離せません。
<サカナト編集部>