現代では考えられない『犬のしつけ方法』3つ 常に進化している考え方を学んで最適な方法を見つけよう
アップデートが必要!現代では考えられない「犬のしつけ方法」
動物行動学の発展により、犬のしつけやトレーニングの考え方は常に進化しています。その中には、今まで良しとされてきたことが犬との関係を悪化させる原因となることもありました。
1.主従関係が絶対のしつけ
個人や世帯で犬を飼育するようになったここ100年程度の間で、まず主流となったのが「主従関係」に重きをおいたしつけ方法でした。「飼い主は犬より上の順位にならなければならない」とされるものです。
そのためには「飼い主より先に犬がごはんを食べてはいけないし、悪いことをしたら口をつかんだり、ひっくり返したりしなければならない」というトレーニングです。
そもそもこの考えは、犬は狼の血を受け継いでいるという『リーダー論』が元となっていますが、現在では犬と狼は違う動物であるという説が濃厚になり、このようなリーダー論は無意味だといわれています。
また、家畜化が進んだ犬にはそもそも「群れ」の概念があまり無いのではないか、ともいわれています。
2.体罰を用いるしつけ
前述の考え方が広く普及した影響もあり、主従関係を構築させるためには体罰も「お仕置き」として行われていました。叩く蹴る殴る、マズルを掴む、ひっくり返して抑えつける…このような行為がしつけと称して当たり前となっていたのです。
犬や猫に過度のストレスを与え続けると「学習性無力感」という状態になり、全く抵抗しなくなることが明らかになっています。
分かりやすくいうと「虐待を受けた人が相手の言いなりになる」ような状態です。主従関係を基盤とした強引な手法により、学習性無力感となる犬が多く存在していたのです。
現在はこのような体罰を加えると「虐待」として捉えられることが多いものの、残念ながらいまだに行われている方法でもあります。
3.番犬のためのしつけ
一昔前の犬は外飼いがほとんどでした。これは「番犬」として飼育されることが多かったためです。しかし現在は「家族」という認識に変化し、ペット可の物件も大幅に増えたことも相まってほとんどの家庭が室内飼育をしています。
そんな室内飼育が主流となった今では、「吠える」ことをコントロールすることが求められます。実際、行政に寄せられる苦情で最も多いのは「犬の鳴き声」だそうです。
犬は吠える動物であることはその通りですが、人間と共に暮らすうえでのルールを教えることは飼い主の責務です。外飼いの番犬としてのイメージを持ち続けたままでは、現在の飼育環境とはそぐわない部分が出てきます。
犬のトレーニング論の変遷
犬のしつけ・トレーニングの歴史は浅く、牧羊犬から始まり軍用犬や警察犬、そして家庭犬へと移り変わっています。1970年代に広まったのが、前述した主従関係が絶対の「リーダー論」でした。
犬の世界で初めての科学的なトレーニング論ということもあり、一世を風靡したのです。しかし、のちに研究者本人が間違いだったと告白しています。
その後、1990年代に欧米で「ほめるしつけ(陽性強化法)」が広まり、日本にも「やさしいしつけ」という考え方が入ってきました。ほめることで犬の意欲を高め、人が求めている行動ができるようになろうという考え方です。
このように、犬のしつけは福祉的に好ましくない主従関係の方法から、褒めて伸ばす方法へと大きく変化しています。どちらも人の指示により犬の行動をコントロールすることには変わりありませんが、犬の精神的ストレスの差は歴然です。
動物行動学の研究が進み、人と犬の関係は「上下関係」ではなく「母子関係」に近いと考えられるようになったのです。
まとめ
いかがでしたか。犬のしつけも日々進化していることがお分かりいただけたと思います。しかし残念なことに、いまだに体罰を虐待ではなくしつけと誤認している飼い主がいることも事実です。
そもそも犬のしつけは一筋縄ではいきません。愛情と長い時間をかけて犬は習得していきます。しつけもひとつの方法に固執せず、愛犬の個性やトレーナーさんとの相性も大事に根気強く行っていきましょう。愛犬があなたの素晴らしいパートナーになることを願ってやみません。