管理職・マネージャーになると何が変わる? ─ミドル世代のキャリアを考える【伊藤羊一さん対談Vol.1】
キャリアアップしたい、給与アップを目指したい。さまざまな目標を持つ30〜40代のミドル世代も多いと思います。
そんなミドル世代に立ちはだかる、「管理職」の壁。管理職になると好きな仕事ができなくなりそう、チームメンバーの管理は大変そう、など、管理職という肩書に不自由さを感じてしまう方もいるのではないでしょうか?
今回は、マイナビ転職が送るVoicyチャンネル「しごと・転職・キャリアのお守りラジオ」で、著書『1分で話せ』(SBクリエイティブ)などでおなじみの伊藤羊一さんをゲストに迎えた対談のログをお届け。「管理職になると仕事がどう変わるのか」「誤解されがちな管理職の役割」など、必見のキャリアのヒントです。
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伊藤羊一(いとう・よういち)さん。武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部学部長、Musashino Valley代表、LINEヤフーアカデミア学長、Voicyパーソナリティ、株式会社ウェイウェイ代表。アントレプレナーシップを抱き、世界をより良いものにするために活動する次世代リーダーを育成するスペシャリスト。2021年に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)を開設し学部長に就任。2023年6月にスタートアップスタジオ「Musashino Valley」をオープン。「次のステップ」に踏み出そうとするすべての人を支援する。また、ウェイウェイ代表、LINEヤフーアカデミア学長として次世代リーダー開発を行う。代表作「1分で話せ」は60万部のベストセラーに。
「管理職」は一旦忘れて「マネージャー」として考えてみる
──ミドル世代のキャリアを考えると、管理職・マネージャーになる方も出てくると思うのですが、マネージャーと一般社員とは何が違うのでしょうか?
伊藤羊一さん(以下、伊藤):そうですね。そのままプレーヤーとして続けたいっていう方もいれば、いわゆる管理職・マネージャーになって階段を上がっていくという選択を取りたいと思う方に分かれると思うんですよね。
その道をどうやって進むのかというのは、自分の会社で上っていくのか、転職を視野に入れるのか、起業するのかという点を、分からないなりに考えていくなかで、まずは、マネージャー、管理職って何なの?というところをしっかり捉えておく必要があるんですね。
管理職というと「管理するのかあ」みたいなね。社員がちゃんと朝来てるかな、とか、ちゃんと仕事してるかな、みたいなことをやる仕事なのかなと思う方が多いと思うんですが。もちろん、そういう仕事もあるんですよ。だけど、何か管理することだけが仕事だとしたら、そんな仕事をやりたくない人もいるんですよね。
だから、管理職という言い方を一旦忘れてもらって、マネージャーとして考えていただきたいなと。何が違うのかというと、マネージャーのマネージって、その英単語の意味からすれば「何とかする」という意味があるんですよ。つまり「何とかすること」がマネージャーの仕事なんだ、というふうに思っていただきたいですね。
「何とかする」ってどういうことかというと、 要するに「チームをゴールに導いていくこと」だと思うんです。チームをゴールに導いていくために、何とかする。やれることを全部やるというのが、マネージャーの仕事だと考えると、めちゃめちゃわくわくする、楽しそうだなみたいに思っていただけるんじゃないかな。
チームをゴールに導いていくためには、例えばチームのメンバーを鼓舞するとか、みんなで進捗を見ながら一人ひとりの状況をケアするとか、目標を設定してチーム全員に共有するとか。これらはチームをゴールに導くための手法なんだということです。
──「管理職」というとプレーヤーの楽しみが全部奪われるみたいなイメージがあったんですが、チームをゴールに連れて行く存在と考えると、確かにわくわくしますね。
伊藤:もちろん楽しいことばっかりじゃなくて、チームメンバーから「やる気が起きません」とか「全然成果が上がりません」とか、「もうあの人とちょっとやってられません」とか、いろんな意見が出てくることもあって。
当然人間なんで、人が増えれば増えるほどいろんなことを解決しなきゃいけないわけなんですけど。そういう困難を乗り越え、高い山に登っていく。それを責任持ってリーダーとしてやってく存在が、マネージャーだと僕は思っています。
マネージャーは「ゴールを目指す」全員を「チーム」と捉える
──伊藤さんご自身が初めて管理職になられたときは、最初からそういうイメージを持たれていたんでしょうか
伊藤:僕は初め銀行に14年間いて、その後プラスという文房具オフィス家具の製造流通の会社に転職しました。14年いたその銀行自体は課長代理というポジションになりましたが、課長がやることをサポートするポジションで、純粋な管理職ではなかったかなと思います。
その後プラスに転職して、2年目ぐらいに物流企画部長をやることになりました。
チームとしては4人ぐらいだったんですけど、物流の仕事って、子会社に仕事の一部を委託しているんですね。その子会社の人たちも含めてワンチームとして考えると、200人ぐらいのチームになるわけです。マネジメントするのは4人なんだけど、「チームをゴールに導いていく」という目標を持つと、200人を導かなきゃというふうに思うんですね。
大事なのは、「チーム」をどう捉えるかということ。いわゆる評価とか「何とかする」という対象は4人なんだけど、アルバイトやパートの方も、よくよく考えてみると「チームじゃん」と思ったりして。マネージャーにとって、「どこまでがチームなんだ」と考えることは、すごく大事なことだなと初めて気づきましたね。
──確かにそうですよね。チームをゴールに連れていくと考えると、子会社やそこで働く方々も含め、取引先もチームということですもんね。
伊藤:そうなんですよ。マネージャーっていうのは「何とかする人」なので。管理職って考えると、管理するのは本来4人だけなんですよ。だけど、マネージャーとして考えるとかかわる人たちは一心同体っていうかね、同じ船に乗ってるわけですよね。そう考えると、その200人に対して働きかけをしていくことってすごく大事だと思うんです。
好きな会社・キャリアに出合うにはコミュニケーションが重要
──部長になったことは伊藤さんにとって大きな変化だったと思いますが、望んでそのポジションになったのでしょうか?
伊藤:プラスには一般社員として入社しました。そもそも4人しかいないなか、当時の部長は65歳ぐらいの大ベテランでした。その部長から「そろそろ俺は引退したいんだ。伊藤さんその辺、考えてやってくれよ」と、入社した当初から言われていました。それを聞いて、僕は「部長をやるんだろうな」という雰囲気を感じていました。
ただ、部長になるまでは、部長ってなんかプラプラしてるし、遊んでるみたいで本当に仕事してるのかな、みたいな感じも表面的にはありました。ただ部長になってみて初めて、これは面白いなって思うと同時に、最初はつらいことばっかりだったんですよね。マネジメントの仕事とプレーヤーの仕事は違うというのは心の準備をしていたとはいえ、実際やってみると全然違うと感じました。
ただ、僕は、「ここの会社で鍛えたいんだ」「この会社好きだな」という気持ちが強くて。のし上がりたいという感覚よりも、「こういう会社で働きたい」という思いがあったからネガティブな感情ばかりではありませんでした。綺麗ごとみたいに聞こえるかもしれませんが。
──自分が働きたいと思える理想的な会社に出合えるのって、すごくいいですよね。とはいえ、入社前に会社の雰囲気を知るのは難しい。そういう転職者の悩みをよく聞くんですが……。
伊藤:確かに難しいんですよ。でも、37年働いてみて分かったんですが、雰囲気ってやっぱり会社によって違うわけですよ。そこを知るには、もちろんホームページやネットで取れる情報は収集していることは大前提だけど、やっぱり人と触れる、話す、コミュニケーションをとるのが大事かなって。
中途採用だと最近は、面接だけではなくて、カジュアル面談ってあるじゃないですか。選考というよりざっくばらんに会社の方とお話できる機会ですよね。そこでしっかり確かめることがいいんじゃないかなと思います。もし可能なら、1人に話を聞くより、2、3人で時間かけて話すと、肌感というか、この人と友達になれそうかなれそうじゃないかという部分が分かってきますよね。なんか合う合わないや、楽しくできそうだなという感覚的な部分です。これはやはり、実際に会って話してみないと分かりづらいので、「話してみる」というのはすごい大事かなって。
先ほどのマネージャーになる、ならないの話も多分同じで、結局、マネジメントの仕事って「チームをゴールに導いてく」ことですよね。それは人間関係というか、人とコミュニケーションを取るということでしか、成立しないわけですよ。
なので、コミュニケーションは、転職の時も、転職した後にマネージャーになる、ならないという時も、一番重要なスキルだといえますね。コミュニケーションをしっかりしようという思いと、それからコミュニケーションをちゃんと拾えること。話を聞いて、自分の言いたいことを伝えられるというのは、すごく大事なスキルだと思いますね。
■次回、伊藤羊一さん対談Vol.2「『評価されない』という悩みはコミュニケーションで改善されるかも?」( https://meetscareer.tenshoku.mynavi.jp/entry/20241011-radio-04 )に続きます。
文・ミーツキャリア編集部