秋アニメ『しゃばけ』音響監督・菊田浩巳さんインタビュー|手応えを感じたアバンの収録。お芝居の自由度は人間側と妖側で違う!?
シリーズ累計発行部数1000万部を突破した畠中恵氏の妖怪時代小説『しゃばけ』シリーズのTVアニメが、現在、全国フジテレビ系“ノイタミナ”にて絶賛放送中です。
本作の舞台は江戸時代。日本橋有数の大店である長崎屋の若だんな・一太郎が、“白沢”の仁吉と“犬神”の佐助をはじめとした妖と協力しながら猟奇的な殺人事件を解決していく、江戸の町人と妖たちが織りなす愉快で不思議な時代劇ミステリー。
このたび、アニメイトタイムズは、本作のスタッフ陣にメールインタビューを実施。第8話終了後にお届けするのは、音響監督の菊田浩巳さんです。江戸時代ならではの音作り、キャスト陣のお芝居などについて語っていただきました。
人と妖で違う、お芝居の自由度
——『しゃばけ』の原作を読んだときの印象、作品の魅力についてお聞かせください。
音響監督・菊田浩巳さん(以下、菊田):時代劇が好きで、江戸の文化が好きで、妖も割と好きなので大好物な作品でした。
私の好きなリズムの文体で、とても体に入りやすく映像もよく浮かび勢いよく読み進んだ記憶があります。
——人間と妖が織りなす『しゃばけ』では、どのようなコンセプトで演技を含めた音作りをしていったのでしょうか。
菊田:お芝居の話でいうと、妖側は人間側よりお芝居の自由度をちょっと高くしたと記憶してます。その両方の間を割と行ったり来たりする屏風のぞきは両方をミックスした芝居で行けたら面白いな、と。
もっとも浪川さんにお願いできた時点で、自然に行き来できるキャラクターになるだろうな、と安心してました。本当に素敵な屏風のぞきでした。
——音響監督として、本作で特に意識したこと、こだわった点を教えてください。
菊田:この時代の人々の生き方や文化、生活習慣とか、衣装とか。自己流ではありますが、改めて勉強してから臨みました。
今の時代にはない考え方とか大切にしていたこととか……とても参考になりました。
音で言うと、洋服、靴ではないのでその辺りの所作とか着物の裾捌きとか、面白かったです。
——キャストのオーディションの際は、どのようなことを大切に選んでいきましたか?
菊田:現代っぽくならないことと品があること、を大切にしました。
——江戸の町で起こる事件を通して描かれる一太郎、仁吉、佐助の3人の関係性に魅了されると思います。一太郎役の山下さん、仁吉役の沖野さん、佐助役の八代さんのお芝居の印象、そして、どのようなディレクションをされたのか教えてください。
菊田:普段使わない言葉とか、言い回しとかがセリフに多くて。それをいつも使っているように……言い慣れてる感じでセリフにしてもらうって言うのが意外と課題でしたでしょうか。
3人ともかなり魅力的だったと思います。良いキャスティングが出来たと本気で思っています。
手応えを感じたアバンの収録
——アフレコやダビングなどの音響作業の際に、特に印象に残っている出来事やエピソードがありましたら教えてください。
菊田:アフレコの話で言うと、どのキャストさんも時代の空気感を作ることを大切にしてくれていて、みんなが江戸を現場に持ち寄って芝居をしていた雰囲気がありました。
江戸の物売りの声とかも遠くに聞こえる……江戸という雰囲気を作るためのセリフなのですが、実はすっごい種類収録していたりして。毎週楽しかったです。
——第8話までで、心に残っているシーンを教えてください。
菊田:初手の初手なのですが、実は#1のアバン(※)のセリフを収録した時に「あ、いける」って手応えを感じたんですよね。
「一太郎、起きているかい?」「犬神と申します」「白沢と申します」そして「おはよう、仁吉、佐助」
良い加減だったと思ってます。
よって、実は1話のアバンの雰囲気がとても好みです。
あと、OP、EDが音楽、映像ともに心を鷲掴みにされています。
(※OP前に流れる短い導入部分のこと。)
——第8話以降の見どころ、菊田さん自身が注目してほしいシーンがありましたらぜひ教えてください。
菊田:なんでしょうね。人の業というものや肉親や仲間や、人の命や愛情や……時代は違ってもそういうものはいつも存在し、同じことを繰り返すんだなぁ、と。
物語ではあるのですが、今の時代にも重なるところはあるなぁ、と。そんな風に思えるシーンが多いと思います。
——最後に、視聴者の皆さま、これから配信等で見てみようかな、と思っている方へメッセージをお願いいたします。
菊田:作品作りに携わっている間、楽しかったという幸福な記憶しかない作品です。
ストーリーであっても、キャラクターであっても、江戸の風景であってもセリフであっても、音楽であっても、音であっても……何かひとつでもお気に召していただけたら幸いです。
最後までどうかお楽しみくださいませ。