授業中立ち歩き、常にイライラ…小2息子に合った「放課後等デイサービス選びのポイント」は?
監修:新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
わが家が放課後等デイサービスを探し始めたきっかけ
わが家が放課後等デイサービスを探し始めた理由は、息子が小学2年生の頃学校で過ごすのがつらくなってしまったからでした。
当時、息子はまだ通常学級に在籍していました。授業の間おとなしく座っていることが難しく、立ち歩いたり、大きな声を出したりしていました。その頃は新型コロナが流行し始めていて、息子にとってもストレスが大きかったのか、常に何かにイライラしたり怒ったりしている状態でした。
学校で対応してもらうのにも限界があり、だんだん学校に行くのがつらくなってきているようでした。
そこで、学校以外にどこか息子の安心できる居場所があればいいなぁと思って、放課後等デイサービスを探すことに決めたのでした。
最初に施設を選んだポイントは「自宅からの近さ」
最初は心配も大きかったので、何かあったときにすぐに帰ってこられるように、家から近いというのを1番の条件にして施設を探していました。
そこで、まずは息子の通う小学校の学区内にある唯一の放課後等デイサービスに見学に行くことにしました。実際に見学に行ってみると、職員の皆さんが子どもたちと全力で遊んだり、関わったりしていて、ここなら安心して預けられるかもしれないなと思いました。
しかし、スタッフの方に詳しく話を聞いてみると、こちらの施設には主に知的障害(知的発達症)のお子さんが多く通っているということでした。そこで初めて、放課後等デイサービスは事業所ごとに特色があり、違いが大きいということが分かりました。
施設を探し始めた当初は、とにかく息子が安心して過ごせる居場所になればとしか考えていませんでした。でも、やっぱりせっかく通うのだから、安心だけではなく、少しでもお友だちとの関わりや生活習慣を身につけてくれたらいいなぁと考えるようになりました。
次第にはっきりしてきた「放課後等デイサービス」に求めること
そこでもう1件見学に行ってみることにしました。次に見学に行った施設も、職員さんたちはとても誠実に対応してくれました。
部屋の中にはいろんな工夫がしてありました。入り口から連絡ファイルを提出するまでの流れがイラストになって書かれていて、行動の導線が分かりやすくなっているのは、さすがだなぁと思いました。あまり広くない部屋でしたが、お勉強をするスペースと遊ぶスペースがきちんと区切られていたし、一人になりたい時はなれるようなそんな工夫もされていました。
そのような工夫を見て、1件目の施設よりも、こちらの施設のほうが息子にとって学びが大きいかもしれないと感じました。そこで、2件目に見学に行った放課後等デイサービスでお世話になることに決めたのでした。
放課後等デイサービスに通い始めて4年。現在の様子は?
小学2年生の秋から通い始めて小学6年生になった今でも、息子はとても楽しく放課後等デイサービスに通っています。
外遊びは好きではない息子ですが、デイサービスでみんなと公園に行くときには「あんまり行きたくないなぁ」と言いながらも、年下の子と手をつないで歩いて行っているそうです。職員さんが公園のゴミ拾いをしようと声をかけてくれると、息子は喜んでたくさんのゴミを拾っているみたいです。
初めて施設を探すときには何を目的にどんなところを探したらいいのかよく分からずに悩んでしまいましたが、実際に行ってみることで、どんなことを求めたいのか自分の中ではっきりしたような気がします。
デイサービスの職員さんはみんな子どものことよく見てくれていて、私が家で関わっているだけでは気づけないような息子の改善点なども共有してくれて、とてもありがたいと思っています。
執筆/メイ
(監修:新美先生より)
放課後等デイサービス探しについて具体的に聞かせていただきありがとうございます。
メイさんの息子さんは、学校で過ごすのがつらくなったのをきっかけに放課後等デイサービスを探し始めたのですね。このようなニーズの場合は、放課後等デイサービスではとにかく居心地よく安心して楽しく遊べるかどうかを大事に探されるとよいですね。学校で頑張ったあとの気分転換、ストレス発散ができたり、もし学校に行きづらくなったとしても、家以外に他者とつながって自宅でできない活動ができる居場所があることはお子さんにとって大きいメリットになると思います。
メイさんの息子さんは2年生から6年生までずっと同じ放課後等デイサービスに通っているとのことですので、きっと息子さんにとって居心地の良い大事な居場所になっているのですね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。