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ペットと野生動物、人はどう共生していけばいいのか?

TBSラジオ

新世代の評論家・荻上チキと南部広美がお送りする発信型ニュース番組。

2024年9月20日(金)20時~Main Session

特集「犬や猫だけではなく、サル、カワウソなどもペットに~人と野生動物はどう共生していけばいいのか?」

9月20日から26日までの一週間は「動物愛護週間」です。国民の間に広く、動物の愛護と、適正な飼養についての理解と関心を深めるため、動物愛護管理法によって、定められています。その動物愛護管理法ですが、来年(2025年)、5年に1度の見直しが行われる予定で、今、一部の国会議員を中心に改正の議論がなされています。

しかし、これまでの議論は犬・猫の販売や飼養基準に関わるものが中心。 国内では、サルやカワウソなど様々な野生動物がペットやふれあい利用として飼育されていますが、そちらの基準に関する議論が進んでいません。野生動物のペットやふれあい利用が広がることで、絶滅に追い込むリスク、動物由来の感染症に感染するリスクなども指摘されています。

そこできょうは、犬・猫以外で、ペットやふれあい利用に適している動物、適していない動物。その線引きの在り方や、そうした動物を飼育する際には、どのような方法が望ましいのか。来年の動物愛護管理法の改正に向けて、専門家と考えます。

【スタジオ出演】

日本獣医生命科学大学・特任教授の田中亜紀さん

WWFジャパン野生動物グループの浅川陽子さん

ペットに適していない野生動物を飼うリスクとは

荻上:ペットに適してないとされる野生動物を飼うというのはどんなリスクが考えられますか?

田中:「動物福祉のリスク」ということと、野生動物の持っている未知のウイルスや、未知の病気というのも当然ありますので、そういったものは人に感染するリスクっていうのも当然あります。あとは、人に順化された歴史の無い(人と暮らしたことのない)そういった動物を、人と暮らすことによって、動物福祉が損なわれてしまう状態というのは、動物虐待にも繋がってしまいます。ですので、順化していない動物と一緒に暮らしても、野生の習性が残って、馴れなく、噛みつくからポカポカと殴ってしまったというような、虐待事件も発生しています。

荻上:そうした福祉が提供されない飼育が、虐待に当たるのだという認識をより広がってほしいですよね。

田中:それはもう本当にそう思っています。

田中亜紀さん(日本獣医生命科学大学・特任教授)

荻上:浅川さん、改めて野生動物を飼うというリスクというのはいかがでしょうか?

浅川:私からは環境の観点からお話したいなと思います。三つあると思います。まず一つ目が絶滅ですね。たくさん野生から捕まえられてしまうと個体数が減少して絶滅の恐れが高まってしまうという問題があります。二つ目が違法取引。野生動物の中には国の法律で守られていたり、国際条約によって輸出が規制されている動物も数多くいるんです。そうした規制下にある動物っていうのは、きちんとその条件を満たして輸入をしなければならないというルールがあったりするんですけれども、そのルールを守らずに日本に持ち込まれるケースと、いうのがあります。

三つ目が外来種ですね。トカゲとかヘビが脱走したという報道もされたりしていますけれども、ペットとして飼育されている動物が逃げたり、捨てられたりしてしまうことによって、野外に定着してしまって、日本に元々いた在来種の住処を奪うとか、食べ物を奪うみたいなことがあったりして生態系を壊してしまうと、そういう問題もあります。

浅川陽子さん(WWFジャパン野生動物グループ)

荻上:実際に大きく問題化されたような、動物の絶滅の事例や、違法取引が問題となった事例というのは、いかがですか。

浅川:絶滅の問題だと一番分かりやすいのがコツメカワウソの例ですね。2019年にワシントン条約という国際条約のもと、より規制を強化していきましょう、もう危機的な状況にありますよということで、取引が禁止、輸出入禁止となりました。また全般的にも絶滅危惧種というのは増えていって、今は絶滅危惧種のうち11%、2000種近い動物が、ペットの展示利用が確認されています。絶滅の恐れがあるにも関わらず、そういう利用っていうのがあるという状況です。

動物愛護管理法の改正に向けて

荻上:田中さん、この動物愛護管理法については、今の法律の建て付けなどどのようにご覧になっていますか。

田中:法改正が5年ごとにされてはいるんですけども、特に動物福祉の分野から申し上げますと、動物虐待に対する罰則が強化されただとか、そういったことはあるんです。ですが、犬猫に注力というか、中心になっているところが本当に否めないんですね。なので動物虐待に対しても、犬や猫に対する摘発であったり、そこに対してはものすごく注目されるんですけども、虐待の対象というのは、犬猫だけではなくって、様々な野生動物が虐待の対象になっています。

だけども、なかなかそっちの方に目が向かないというか、関心が向いてくれないっていうところに、非常にもどかしさがあります。また、もう少し何とか野生動物のペット利用だとかそういったところにも、目が向くような基準であり規制なりっていうのができるといいなと考えています。

荻上:今や街中でも例えば犬や猫だけではなくて、エキゾチックアニマルあるいは鳥類、様々な種類の動物が見られるようになったり、あるいはポスターなど貼ってあるということもあります。存在することは広く知られてきてはいるわけですけれども、医療面などでも、なかなか可視化されにくく、これまでの法の中の対象外になってきたということもあるんでしょうか?

田中:対象外ではないんです。本当は動愛法の中では犬猫だけではなくって哺乳類と鳥類と爬虫類までと、非常に幅広い動物たちが対象の中に入ってるんです。だけども日本の社会の中での関心事が、犬や猫の問題に集中しすぎてるっていうことと、動愛法の中で管理基準っていう数値規制が定められていて、それが犬や猫の業者に限られているっていうところがあるんですね。

なので、本来、動愛法というのは爬虫類までというふうに幅広く、本来であれば網羅している法律なので、野生動物であったり、野生動物のペット利用であったり、そういったことについてもきちんと規制を設けて、それで様々な観点からそういったこの野生動物を守れるような、そんな法律に、次回は改正ができれば良いと考えています。

荻上:5年ごとの見直しのタイミングである動物愛護管理法。今回の改正のポイントであるとか、必要性、あるいは必要な論点というのはいかがですか。

浅川:野生動物に関する議論っていうのはまだまだ足りないと思います。動物愛護法は、人と動物の共生社会を実現するという目的を掲げているので、共生社会のビジョン、「動物のことをよく理解して適切な関係を築くこと」だと思うんですね。誰もが好きなように何でも飼える状況は本当に共生なのかというところに疑問を持っています。

そういったことを踏まえて、適切な距離を保つべき動物。例えばサル、カワウソなどといった動物については、一般的に生態・習性といった行動を発揮させるのが難しいので、そういう動物を指定して、指定された動物については、十分な施設を保有する事業者だけが取り扱うことができるようにすべきという、使用制限を設けてはどうかと考えて、国会議員の方に働きかけをしております。

(TBSラジオ『荻上チキ・ Session』より抜粋)

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