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イクラかがやく「三種丼」13席の食堂で52年…もてなす“浜のお母さん”の思い

Sitakke

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世界遺産の北海道斜里町ウトロの港に、観光客らに人気の小さな食堂があります。
この食堂を通して知床の今を取材しました。

サケの漬けやイクラがたっぷりのった三種丼。店一番の人気メニューです。

ここはサケの定置網・水揚げが日本一の斜里町。
そのウトロ地区の港に「漁協婦人部食堂」は店を構えて、52年になります。

漁協の女性部6人が切り盛り。人々のお腹を満たしてきました。

食堂の朝は早い。

米を研ぐのは、漁協女性部の部長で食堂の責任者、畠山美佐さん(57)です。

観光客で賑わう大型連休の最終日。

「きょうは多分お米4升(約6キロ)分以上はお客さんが来ると思うので、もう炊いちゃいます」

8時半の開店を前に、外には10人ほどが列を作りました。
開店からわずか5分で13席はいっぱいに。

注文の半分以上は、看板メニューの三種丼。
極上の朝ごはんを口いっぱいにほおばります

2日連続で食べに来る人も 常連にも愛され…

サケはもちろん漁協直送。
60センチはありそうなものを、あっという間に三枚おろしにしていきます。

サケを使った新しいメニューはないか…と考えて誕生した三種丼は、しばらくの間は「本当に売れなかった」のだといいます。

女性部のスタッフは「やっとです。最近は足りないくらい」と話します。

その味にフランス人観光客はなんと2日連続で注文するほど!

営業は、朝8時半から午後2時半まで。

時間帯によって、朝は主にウトロに宿泊する道外の観光客。
昼から午後は、近場の日帰りの観光客。
そして昼前か、閉店前に駆け込んでくるのが常連客です。

常連客の1人は「僕がカウンターに座ると、勝手に味噌ラーメンが出てきます(笑)。忙しい時間だと構ってもらえないので」と教えてくれました。

この大型連休中も多くの人で賑わった「婦人部食堂」ですが、あの事故の影はいまも消えていません。


「ぜひいらしてください」が言えなくなって

ウトロ漁業協同組合女性部の畠山さんは3年前の観光船沈没事故の影響についてこう話します。

「事故前は、知らない人にも勝手に観光大使をしていたんですけど、事故があってからは、『ぜひ、いらしてください』とは心から言えなくなりました」

「これからは、みなさん思い出を作って帰ってくださればいいなと思います」

開店から、あっという間の6時間。

この日は結局10.5キロのコメを炊きましたが、すべて売り切れ。
閉店後のまかないはラーメンです。

訪れた人たちを笑顔にする「ウトロ漁協婦人部食堂」。

ここでしか食べられない料理が、再び知床に人々を呼び込もうとしています。

連休には人口の10分の1以上の人が訪れる人気

畠山さんによりますと、大型連休の多い日には約150人が婦人部食堂を訪れました。

ウトロ地区の人口が1200人なので、“浜の母さん”の味がいかに人気なのかがわかります。

1970年の加藤登紀子さんの「知床旅情」のヒットで、訪れる観光客のために誕生したのが婦人部食堂でした。

地元産=ウトロの味を前面に押し出すようになって人気に火が付いたということです。

食堂では、これから旬の「ウニ」も提供される予定です。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年5月8日)の情報に基づきます。

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