懐かしの「10円ゲーム」を自作!音からギミックから本物そっくりのクオリティ
「新幹線ゲーム」などのタイトルが知られる、左右のレバーを交互に弾いて、10円玉をゴールまで運ぶアナログアーケードゲーム。通称「10円ゲーム」。
駄菓子屋さんや個人商店の店先に置かれていて、1プレイ10円と非常に安価なことから、小学生時代に熱中した人も多いはず。
そんな10円ゲームを自作してしまった人が現れました。
■ 小学生の時に10円ゲームに大ハマリ!半年かけて完成させた「令和版新幹線ゲーム」
Xユーザーの「とおまる」さんがこのほど、「自作令和版新幹線ゲームついに完成!」というコメントとともに投稿した動画と画像。
映っているのは左右に3つずつ、計6つのレバーが付いた青色の直方体です。透明なアクリル板の向こうには、白い素材で作られたコースが組まれ、背景にはデフォルメされた新幹線の路線図と観光名所のイラストも描かれています。
どこからどうみても「新幹線ゲーム」です。
実際にとおまるさんがプレイしている動画を見てみると、説明がなければ「手作り」とは絶対にわからないクオリティです。レバーに弾かれる10円玉の動きから、各ギミックの音まで全部本物そっくり。
筆者は偶然にも最近、アタミロープウェイの展望台に置かれていた10円ゲームで遊んだばかり。プレイ動画を見ながら「こんな感じだった!」とはげしく頷いてしまいました。
とおまるさんは「10円ゲーム」を作るのも遊ぶのも趣味だという、20代前半の会社員。
小学生のころに近所の駄菓子屋さんで10円ゲームをプレイしたことがきっかけで大ハマリし、自分でも作るようになったそう。最初に作ったのは小学5年生のときだとか。
以来10円ゲームづくりに挑戦しては挫折するを繰り返したのち、今回「新幹線ゲーム」のリメイク版である「令和版新幹線ゲーム」の着手。半年をかけて完成させたとのことです。
「夢は自分の作った10円ゲームが駄菓子屋さんに置かれて子供達に遊んでもらうこと」と話すとおまるさんに、制作の裏側や攻略のコツなどを詳しく聞いてみました。
■ 筐体の素材は既存の10円ゲームとほとんど同じ!一部は3Dプリンターで制作
−− 10円ゲームの制作は、子どものころに駄菓子屋で初めて10円ゲームをプレイしてハマったのがきっかけとのことですが、初めてプレイしたときはどんな感じでしたか?
初めてプレイした時は、アナログゲームならではの音、10円ゲームでいうならレバーの弾く音や10円玉がコースに当たる時の「コン」という音、当たり券が出る時の「ガチャコン」という重い音にびっくりしたのを今でも覚えています。
また、10円玉がそのままゲームをする上でのアイテムといいますか、弾になるのが新鮮でしたし、レバーを弾く時にちゃんと10円玉の重みを感じるところも10円ゲームにハマるきっかけになったと思います。
−− 動画や画像を拝見するとかなり本物に近いクオリティに感じるのですが、素材は本物と同じなのでしょうか?
素材は基本的には既存の10円ゲームと同じようにしています。箱はラワンベニヤの15mmの分厚い木材で重厚感を出し、透明のアクリル3mmの板を3枚使用しています。
1つ大きく違うところはレバーやコインセレクター、あたり機構など複雑なパーツは全て3DCADソフトで3Dデータを一から制作して3Dプリンタで印刷をしています。
−− なるほど、3Dプリンター
現在、10円ゲームの製造が終わってしまっていることからそういったパーツは既存のものから流用するか、一から制作するかぐらいしかなく、大変な道のりにはなるのですが後者を選びました。
3Dプリンタで印刷したものは耐久性に問題があると言われているので壊れにくいようにパーツごとに分けて組み立てるなどの工夫をしています。
−− ゲームだけでなく、景品が排出されるところまで再現されていて驚きです。構造などはどのように調査したのでしょうか?
SNS等で知り合った駄菓子屋さんの方々から画像や動画などの情報をいただきました。景品が排出される機構に関しては既存のものと同じものではなく、自分で一から考え設計したオリジナルのものにしています。
−− ゲーム筐体もさることながら、プレイ動画に映っていたとおまるさんの腕前に驚いています。よく遊ばれているのでしょうか?
家に自作の10円ゲーム(「令和版新幹線ゲーム」を含めて)が2台と、「ホームランキング」という既存の10円ゲームが1台ありまして、時間があれば遊んでいます。また、今でも近所の駄菓子屋さんに休日は10円ゲームを遊びに行っています。
−− 家に既存の10円ゲームがある……!アツすぎです。ちなみに10円ゲーム攻略のコツってあるのでしょうか?
今回制作した「令和版新幹線ゲーム」は「新幹線ゲーム」のリメイクにあたるのですが、新幹線ゲームはかなり実力の要素が多いのでコツは結構ありまして……例えば2段目は30%の加減で打つみたいな感じですね。
あとは「カーレース(インターチェンジ)」という10円ゲームに関しては1回目の当たりのチャンスの時は50%の加減で、2回目の当たりのチャンスはバネの加減にもよりますがフルパワーで弾くと当たりに入りやすいなと感じています。
−− 「カーレース」!近所の商店にありました!小学生のときにこのコツ聞きたかった……
実際は10円玉が丸いためイレギュラーな軌道を描くことが多くて、完全な攻略法というのはなく、それが10円ゲームの面白さなんじゃないかと思います。
−− とおまるさんの夢は「自分の作った10円ゲームが駄菓子屋さんに置かれて子供達に遊んでもらうこと」とのことですが、この夢にかける思いにはどんなものがありますか?
正直、10円ゲームというのは消えていく寄りの文化だと考えているのですが、10円ゲームならではの遊び方や魅力、10円ゲームを通しての出会いは間違いなくあると思っていて、そこで今の子にも10円ゲームを知って欲しい、当時世代だった方には懐かしいと思ってもらえるように「懐かしくも新しい」をコンセプトに自作10円ゲームを作っています。
10円ゲーム、また駄菓子屋さんの文化を後世に残していくためにも今後も自作10円を制作していく予定です。
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筆者も小学生のころ、よく近所の個人商店の10円ゲームで遊んでいました。
ゴールまでたどり着ければその店で使える20円、50円程度の金券がもらえる仕組みだったので「欲しいお菓子があるけどお金が足りない」というときには一発逆転でチャレンジし、よく全額失っていました。
10円ゲームは確かに消えゆく文化なのかもしれません。しかしとおまるさんのような方がいる限りしばらくは残り続けるでしょうし、ひょっとすると令和らしさが加わって、新しいブームを巻き起こす可能性だって十分にあります。
とおまるさんの「令和版新幹線ゲーム」を見て、実際にお話をうかがって、また10円ゲームで遊んでみたくなりました。
〈記事化協力〉
「とおまる 10円ゲームクリエイター」さん(@jhaieh86780325)
(ヨシクラミク)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025061809.html