Yahoo! JAPAN

伊藤銀次とウルフルズ ⑩「びんぼう」に続いて大滝詠一「福生ストラット」をカバー!

Re:minder

1995年03月15日 ​​ウルフルズのマキシシングル「トコトンで行こう!」発売日

連載【90年代の伊藤銀次】vol.15

「福生ストラット」をウルフルズでカバー


1995年3月15日にリリースされたウルフルズのマキシシングル「トコトンで行こう!-Mission UNBELIEVABLE Vol.1-」の制作がはじまるとき、東芝EMIのA&Rであり、ウルフルズの担当ディレクターだった子安次郎さんがすんごいアイデアを振ってきた。

それは、なんと「びんぼう」に続いて、大滝詠一さんの「福生ストラット」をウルフルズでカバーしてはどうかという、強力なナイアガラーを自他共に認める子安さんらしいアイデア。大阪出身のウルフルズだから、福生を大阪に変えて「大阪ストラット」というのはという提案に、これはおもしろいと思わず僕は膝を打ったものだった。

ナニワの “どろソース” のようなこってりサウンドのウルフルズ


ただ、大滝さんのオリジナルバージョンはとてもおしゃれなノリのサウンドなので、これをナニワの “どろソース” のようなこってりサウンドのウルフルズでやるのはどうしたもんかと悩んだが、すぐに閃いたのは、ニューオーリンズのザ・ミーターズというグループ。泥臭くもあるがどこかオシャレなノリの彼らのレパートリーには、山というほど “○○ストラット” と名のつく曲がある。

そこでドラムのサンコンにミーターズは好き?と尋ねてみたら、なんと大好物でコピーまでしているという。おお、ラッキー‼バンドのプロデュースの場合、スタジオミュージシャンと違ってなんでもできるわけじゃないから、彼らが得意とすることにしっかり着目してそれを伸ばして使っていくのがもっとも大事なことだからだ。

そして続いてベースのジョンBに最近どんなベースを聴いてるの?と何の気なしにたずねてみると、G・ラヴ&スペシャル・ソースが好きで、彼らのファーストアルバムに収録されている「ザ・シングス・ザット・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ 」という曲をコピーしているという。このバンドは、ジャズやブルースなどのルーツミュージックを新しい解釈でラップと融合させたような音楽を作ってシーンに登場したばかりのグループ。

ラッキーなことにこの曲のリズムはまさにミーターズの得意としていたストラット的。僕もこのバンドが気に入ってよく聞いていたので、頭の中でそのベースを鳴らしてみると、僕がイメージしていた「大阪ストラット」にぴったりのベースラン。 “OK!ジョン​​B、大阪ストラットはそのパターンでいこう!” と即、リズムの大枠の方向性が決まった。

「大阪ストラット」では、さらにストーリーを再構築


「福生ストラット」を「大阪ストラット」としてカバーする場合の一番大きな問題点は、オリジナルのほうがインスト曲に近いくらい歌詞が少ないこと。このまま福生を大阪に変えただけではあまりにも芸がなく面白みに欠ける。そこでトータスとミーティングをして、若いカップルがよくデートに行く場所を歌詞の随所に織り込んで、さらにストーリーを再構築していくことにした。

大阪の盛り場といえば、キタとミナミといわれる梅田や心斎橋。さらにその頃の大阪の若者たちがよくデートする場所として、ナポレオンフィッシュが見れる海遊館がある天保山や、東急ハンズのある江坂などの名前も織り込んで作っていくことにした。

そしてそのコンセプトで歌入れされたものが 幻の 「大阪ストラット Part1」。このバージョンはその後いろんな事情があって残念ながらリリースされることがなかった。実際にリリースされた「大阪ストラット Part2」は、大滝さんからの、“大阪の人間でないと多くの地名が入っていてもわかりにくいと” いうアドバイスを得て、梅田と心斎橋、いわゆるキタとミナミにしぼって歌を録り直したもの。

さらになんとなく入れてあった “アベックだらけ” というトータス以外のメンバーによるバックコーラスがおもしろいから、もっとあちこちに入れたらという大滝さんの提案でそれも増やすなど、幻の「大阪ストラット Part1」よりもはるかにコンパクトでキャッチーな仕上がりとなったのは、オリジナルの原作者である大滝さんの、俯瞰でみているクールな視点のおかげ。

ごまのはえで実現しなかった大滝さんと僕の共同作業が、はじめてここで、ぐるっと地球を一周して帰ってきたブーメランのように形をなしてきたようでとても感慨深いものがあったね。さて、次回はそのレコーディングで起こった奇跡のような出来事を‼

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 【THE ROOTS(ザ ルーツ)】体をいたわり、心華やぐクッキーを

    愛媛こまち
  2. 【旨すぎ】生まれて初めてペッパーランチで『ビーフペッパーライス』を食べてみたら…ちょっと待て、コレが1000円は嘘だろ!

    ロケットニュース24
  3. 声優・前田誠二さん、『from ARGONAVIS』『高良くんと天城くん』『【推しの子】』『色づく世界の明日から』『カードファイト!! ヴァンガード ディアデイズ2』など代表作に選ばれたのは? − アニメキャラクター代表作まとめ(2025 年版)

    アニメイトタイムズ
  4. 平将門を愛した美女は“裏切り者”だったのか?桔梗姫の悲劇と咲かぬ花の伝説

    草の実堂
  5. 【京都ラーメン】激戦区の人気店が四条烏丸に!ランチはお得、通し営業で便利「麺屋 聖 離れ」

    キョウトピ
  6. PFAS実態把握の請願は不採択、四日市市議会、中央通り再編関連の補正予算案は可決

    YOUよっかいち
  7. 農家発!山奥&完全予約制!わざわざ行くべき贅沢朝ごはん「朝食イタリアン キッキリッキー」(福岡・久山町)【Oasis~心の休息地をめぐる旅~】

    福岡・九州ジモタイムズWish
  8. <ハラスメント>部活の外部コーチが嫌なあだ名で呼ぶので怒ったら謝罪を要求された!なんで悪いの?

    ママスタセレクト
  9. 女子プロゴルファー臼井麗香、菅沼菜々コラボステージ決定!<関西コレクション2025A/W>

    WWSチャンネル
  10. 本場パリの味が心斎橋に!ビスケット専門店「アラン・デュカス」が関西初上陸

    PrettyOnline