災害時に備えて、平時から溜めておく「技術」!
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今日は災害時のために、平時から溜めておく「技術」のお話。
「技術」そのものを平時から溜めておく!
まず一つ目が、技術そのものを溜めておく専門の部署、技術部があるという、大成建設株式会社。土木本部土木企画部企画室の齋藤雅道さんにお話を伺いました。
大成建設株式会社土木本部 土木企画部企画室 齋藤雅道室長
「当社の技術部は、色んな、ダムや橋梁の分野に分かれて10チーム、その中に10年以上の経験を持つ技術者が80人くらいいるということで、かなりプロフェッショナルな集団ということになります。
基本的には現場の様々な課題に対して、技術的な課題を解決する部署となっています。技術部に聞けば、なんかしらの解答はいただける、問題解決ができるということで、やっぱり一つの分野だけになると出てくる答えが限られてくるんで、色んな選択肢を提供してもらえるということは非常に有用だなと思っています。
災害時に、初めて新しい技術を使うってことが非常に難しいもので、やっぱり一刻も早い復旧ですとか、応急復旧しなきゃいけない中では、確実に実績のある技術を採用して、確実に最短で復旧していくってことが我々の使命だと感じているので、そういう意味で、平時の時点でストックされた、確実に適用可能な技術を災害時に迅速に適用していくということが、今、技術室の役割の一つとなっていると思います。」
社内の技術が一か所に集められているんです。その道のプロのような人がいても、その人が退職してしまうと、その技術が無くなってしまいます。そこで、そうした技術を溜めて、しかも出し入れすることが出来るプロ集団が作られています。
ダムの、橋づくりの、トンネルの・・・それぞれのプロが知恵とアイデアを出し合って、工事現場の課題解決をしています。トラブルや課題によっては、橋づくりにトンネルの技術を使っては?といった違う分野の技術の提案も。
そうした技術の貯蔵庫・技術部が、平時の技術を溜め、課題解決の実績を作ることで、普段の工事とは全く環境の違う災害時の復旧工事に、確実に使える技術が溜まっていっている、ということなのです。(同時に、災害時の技術が、また平時に活かされることもあり、技術が循環しながら磨かれていきます。)
実際に、熊本の地震のあとの橋梁工事でも、技術部からの提案で予定と違うアプローチの仕方に変更し、工期を1年4か月も短縮できました。
平時から電気を溜めておく技術「雑草発電」!
そしてもう一つ。今度は平時から電気を溜めておくことができる「雑草発電」という技術。「雑草発電」の装置を開発した石川県立大学の馬場保徳准教授のお話です。
石川県立大学 馬場保徳准教授
「雑草を積んできて、微生物が入っているタンクに入れると、微生物がメタンガスを作ってくれるんですね。メタンガスっていうのは料理で使ってる都市ガスになります。で、その作った都市ガスを専用の発電機に入れることで電気ができます。
2011年の東日本大震災の時に東北大学にいました。で、私は避難所にいてガスや電気が使えない生活をしていました。その時に、雑草だけは生えていたので、この雑草を電気変えることが出来たら、もっと避難所での暮らしがみんな楽になったんじゃないかなっていう風に考えていました。
実は、2011年の時も、ゴミからメタンガスや電気を作る装置を研究してたんですが、停電して電気が止まってしまうと、そもそもその装置を動かすことができなかったんですね。なので、これからは、停電してもゴミさえあれば電気が作れるような装置を作らなきゃいけないという風に気づいて、停電しても動く装置っていうところにこだわって作りました。」
停電しても動く、雑草で発電する装置!
ご自身が被災した経験から、避難所生活でも、わざわざ用意しなくていい雑草を使って電気を生み出せれば、と。しかも、停電したら動かせなかったその時の装置じゃダメだ!と気づき、大学に戻れるようになった直後から、電気ナシで動く装置の開発を始めました。そこから12年かかって、停電していても使える「雑草発電」の装置は完成しました。
(雑草発電の装置『エコスタンドアロン』真ん中のGEPという所で、雑草をメタンガスに発酵させています!)
平時から動かしていなければ備えにはならない!
そんな中、起きた能登半島の地震。これをすぐに能登に届けて役立ててもらえれば、と思ったのですが、かなわなかったそう。再び馬場先生のお話です。
石川県立大学 馬場保徳准教授
「しかるべきところに、持って行っていいですか?と尋ねたら、今は道が寸断されているから自衛隊のトラック輸送を優先したいですって。当時私たちが頑張っても一つか二つしか運べなかったので、そういった小口な支援は迷惑になりかねないという風に言われてしまいました。
なので、やっぱり、普段からその場所で動いていないと、迅速に役に立つことは出来ないんだな、ということを思い知らされました。
だから、普段から地域のスーパーマーケットさんとかでこの装置を置いてあって、野菜くずとか生ごみって、よくスーパーさんって毎日出ますよね、キャベツの外側の葉っぱとか。こういった物で発酵してもらっていて、普段から動かしていれば災害時になってもいつもと同じように、キャベツの葉っぱ入れたり雑草摘んできて入れたりすれば、ガスや電気が作れるよ、地域のみなさん、そこに集まれば最低限あたたかいごはんや携帯電話充電できるよ、っていう状況を実現したいです。」
今は、馬場先生のいる大学の近くのスーパーに、この装置を置いて毎日発電しています。スーパーは野菜の葉っぱなどの生ごみの処理費用が無くなり助かっている、と。今年の5月か6月くらいには福島県の浜通り地域に、来年には能登に、置く予定。
近所のスーパーに一台、うちのマンションに一台ある、という形で設置して平時から使いながら、災害時に備えられるのはいいですよね。
ただ、雑草を発酵してメタンガスにしたときにどうしても出る、発酵液。これを農家などが肥料に使うなどしてくれればいいのですが、捨てる場合は浄水曹で綺麗にしないと川や海には流せないので、お金もかかるし手間になるところが課題。
今後は、設置場所を増やして普段から備えるとともに、肥料会社や農家の方とも一緒に課題を解決していきたい、と話していました。
大成建設の「技術部」も馬場先生の「雑草発電」も、同じように平時から溜めておくことで災害時に対応できるものになっています。
自分自身も、身近な自分たちの備えを、そういう目で改めて見直してみるのも大事だな、と思いました。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)