知る人ぞ知る美味なローカル食材『枕貝』 しっかり加熱する調理法と相性抜群
知る人ぞ知るローカル食材「枕貝」。二枚貝ですが、ちょっと変わっている個性的な貝です。
アカガイの仲間の変なやつ
寿司ネタや缶詰の材料として名を知られるアカガイ。実は「赤貝の缶詰」に使われているのは近縁種のサルボウガイなのですが、いずれも「フネガイ科」というグループに属します。
フネガイの仲間は浅瀬や内湾に生息しており、古くから食用にされてきました。近年では干潟の減少により高級食材と化しつつありますが、それでも我々の暮らしに欠かせない著名な食材です。
そんなフネガイ科に、アカガイたちとはちょっと毛色の違う変わった食用貝があります。それは「枕貝」です。
ちょっと不思議な「枕貝」とは
枕貝とはこの貝の数ある地方名のひとつで、標準和名をカリガネエガイといいます。枕貝の名前は、扁平で真ん中が軽く凹んだ形が枕のように見えるからだと思われます。
ぱっと見はアカガイの仲間と近いものとは思えませんが、よく見ると殻の表面に数多くの縦筋が入っているところが共通しています。
しかし、アカガイやサルボウガイといえば干潟や砂浜の表面に軽く埋もれていますが、このカリガネエガイは全く異なり、浅瀬の岩の裏にくっついています。そのためアカガイなどのように動くための足がついていますが、カリガネエガイはほとんど退化しています。
料理のコツ
この枕貝ことカリガネエガイ、東京湾をはじめ各地の浅い海に生息していますが、食用にする地域はほとんどないようです。それでは全然美味しくないのかというとそんなことはなく、アカガイやサルボウガイと同じくおいしい貝だといえます。
利用されていない理由は、岩の裏にへばりついているためにひとつひとつ手で剥がさないといけないことでしょう。しかしその価値があるほど味は良いです。
オススメの調理法は味噌汁か煮付け。濃い旨みとしっかりした歯応えがあります。他の二枚貝のように酒蒸しで食べることもできますが、軽く加熱したくらいでは殻が開かず、また軽い渋みをともなった酸味が少し気になります。そのためしっかり加熱することができる調理法が向いています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>