Yahoo! JAPAN

いつまで続くの?自閉症息子の激しいこだわり、癇癪に疲弊。4歳で出た「まぁいっか」に成長を感じて

LITALICO発達ナビ

いつまで続くの?自閉症息子の激しいこだわり、癇癪に疲弊。4歳で出た「まぁいっか」に成長を感じて

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

こだわりの強いたーちゃん。それに付き合う保護者はしんどいことも……

2歳頃から徐々にこだわりが強くなっていったたーちゃん。服も、食べるものも、遊びも、生活のリズムも、自分なりのルールやルーティンが決まっています。

こだわり1 服

例えば、服はお気に入りしか着ないので、いつも決まった2、3着をヨレヨレになるまで着回していました。3歳頃、特に嫌がっていたのは新しい服です。着せようとしても大暴れ、大泣きで、袖を通すこともできませんでした。

なので、ちょっとしたお出かけの時に着てほしいオシャレ着が、新品同様のままサイズアウトすることも多々あり……。特に衣替えの季節は、すんなり服を着てくれるかどうか、癇癪がおきないかいつもハラハラしていました。

こだわり2 テレビ

もう一つのこだわりは、テレビでは気に入った動画しか見ないことです。同じアニメや動画を、何回も何回も繰り返し見ることが好きです。これは4歳半の今でも変わりません。

私が見たいテレビ番組をつけようものなら、すぐに癇癪を起こしていました。そのため、ニュースはスマートフォンで、ドラマはたーちゃんが寝た後に録画を見るような生活でした。幅広く興味を持ってほしくて、同年代の子どもに人気のキャラクターの出てくるアニメや、お勉強になりそうな動画も見せようとしましたが、頑なに同じ動画を見続けました。

こだわり3 ルーティン

たーちゃんは、1日のルーティンが崩れることを嫌がります。幼稚園から帰ってからすぐ、公園に行くことがルーティンになっていた時期がありました。

「暑いから、涼しくなった夕方に遊ぼう」「午前保育だから、昼ごはんを自宅で食べてからにしよう」「ほかの用事があるから、今日は行けない」という大人の事情は通じません。公園に行けない時は、もれなく癇癪をなだめることがセットになるので、気が重かったです。そして、毎日休みなく公園で遊ぶことに、私はすっかり疲れていました。「幼稚園から帰った後は自宅でのんびりしている」というママ友が心底羨ましかったです。

こだわりにずっと付き合うのがつらい。いつこだわりはなくなるの?

たーちゃんが2歳の頃は、いつになったらこのこだわりはなくなるのだろう……と思いながら、育児をしていました。そんな不安や心配をよそに、3歳頃までこだわりは増え続け、ルールやルーティンも細かくなっていきました。

たーちゃんはこだわりをつくることで自分のことを守っていたのかもしれませんが、かえって窮屈な生活になっているように思えてなりませんでした。そして、こだわりと癇癪に付き合い続けていた私と夫は精神的に参ってしまいました。

「まぁいっか」。突然出てきたその言葉が、うれしい。

4歳になってすぐ、新しい服を着せようとした時のことです。ばぁばに買ってもらった服でした。

始めはいつものように嫌がって、下着姿で逃げ回っていたたーちゃん。それでも、「この服でばぁばに会いに行こうよ」「この服かっこいいよ」と言葉を投げかけました。しかし、やはりたーちゃんは着る気はないようで。「やっぱりだめか……」と、ヨレヨレの服を取り出そうと腰を上げたところでした。

「まぁいっか」ふと近づいてきたたーちゃんがそう言って、「服を着せて」という風に頭を差し出してきたのです。
それはエコラリアのような、誰かの真似のようなイントネーションで、少しぎこちない「まぁいっか」でしたが、たーちゃんはまるで呪文のようにその言葉を言って、新しい服を受けいれてくれたのです。そして服を着せると、泣きもせず、けろりとした顔をしていました。

驚きとともにじわじわとうれしさが広がっていき、何度も「着てくれてありがとう」「その服、かっこいいね」「まぁいっか、って良い言葉だね」とたーちゃんに伝えました。

たーちゃんが癇癪という形ではなく、「よく考えたらそれでもいいか」「自分が折れてもいいか」と自分で気持ちの整理をしてくれたことが、うれしくてたまりませんでした。

たーちゃんの成長が、うれしい。たーちゃんも、頑張ってるのだと感じた。

たーちゃんは、たとえゆっくりでも、自分のペースで心も成長しているのだと、このなんでもないひとことが感じさせてくれました。そして、今までこだわりに付き合っていた過去の私が報われたような気持ちにもなりました。その日の夜、帰宅した夫にもすぐに共有して、夫からもたくさん褒められたたーちゃんはとてもうれしそうでした。

4歳半の今も引き続きこだわりはありますが、「まぁいっか」と言ってくれる頻度も増えてきました。そして、たーちゃんの「まぁいっか」の後には必ず「ありがとう」を伝えています。

この記事が、いつまで激しいこだわりが続くんだろう……と悩んでいる方の希望になればうれしいです。

執筆/みかみかん

(監修:室伏先生より)
たーちゃんのこだわりの詳細と成長のご様子を共有してくださり、ありがとうございます。この記事をお読みになられて、救われるご家族がたくさんいらっしゃることと思います。少しずつ、まぁいっかと受け入れられるようになってきたとのこと、本当にうれしいですね。受け入れられるものが限られていたこれまでの期間、ご家族もたーちゃんも本当にお苦しかったですね。

着られる服が限られてしまうということに関しては、柄や色の好みの場合もありますが、触覚過敏(感覚過敏のひとつ)が大きく影響しているお子さんも少なくありません。多くの人にとっては特に不快に感じないものでも、ある素材や凸凹(タグや縫い目、縫い代など)、新しい布地などに対して痛みや大きな不快感を感じることがあります。新しい服はパリッとして少し繊維がかたいですが、着古してよれよれの服はやわらかいので、古いものをパジャマにしたいという方もいらっしゃいますよね。そういった違いも敏感に感じ取ってしまうことがあります。

また、ルーティンが変更することに関しては、予定変更に柔軟に対応することが得意という方もいらっしゃれば、予定が変更すると不安を感じたり、イライラしたりするという方もいらっしゃると思います。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの多くは後者で、かつその程度も強いお子さんも多くいらっしゃいます。「いつも通り」がとても安心なのです。

みかみかんさんは、たーちゃんの嫌なことを受け入れて、たーちゃんの気持ちを尊重して向き合われてきたのですね。きっとそういった環境の中で、たーちゃんも安心して過ごすことができて、少しずつ受け入れることができるようになってきたのだと思います。上記のような感覚過敏や予定変更への不安については、年齢とともに少しずつ和らいでくることも多いですが、その時期はさまざまです。感覚過敏やこだわり行動は、ご家族にとっても大きな負担になりますので、ご家族の精神的なサポートも必要です。どのように向き合っていったらよいのか分からないなど、ご不安があれば医療機関や療育先の先生、保育士、自治体の相談先などに相談してみてください。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

【関連記事】

おすすめの記事