ケアマネジャー(介護支援専門員)とは?|資格取得方法や仕事内容、キャリアアップ方法などを紹介します!
執筆者/専門家
ささえるラボ編集部
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ケアマネジャー(介護支援専門員)は、ケアプランの作成、給付管理、関係者(利用者、自治体、サービス事業者など)の間に立っての連絡調整などを主な役割とする専門職です。
高度な知識とスキル、そして人間力が求められる大変な仕事ですが、自身が作成したケアプランで利用者や家族の力になれることを実感できる、大きなやりがいのある仕事でもあります。
この記事では、ケアマネジャーの仕事内容やキャリアアップの方法などを詳しく解説していきます。
ケアマネジャーになるには?
ケアマネジャーは、介護保険法に規定された公的資格者です。
居宅介護支援事業所や介護保険施設などに所属し、要介護者や要支援者からの相談を受けて、その人が自立した日常生活を営めるようにするためのケアプラン(介護サービス計画書)を作成すること、そしてそのプランを実現するために関係者間の連絡調整を図ることが主な仕事になります。
介護保険法において、ケアマネージャー(介護支援専門員)は以下のように定められています。
この法律において「介護支援専門員」とは、要介護者又は要支援者(以下「要介護者等」という)からの相談に応じ、及び要介護者等がその心身の状況等に応じ適切な各種サービス事業を利用できるよう各種サービスを行う者等との連絡調整等を行う者であって、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術を有するものとして介護支援専門員証の交付を受けたものをいう。(介護保険法第7条第5項を要約)
医療・福祉・介護などの国家資格を保有し実務経験を5年以上(従事日数900日以上)もしくは、相談援助業務への従事期間5年以上(従事日数900日以上)の実務経験を持つ人が、「介護支援専門員実務研修受講試験」(筆記試験)に合格し、「介護支援専門員実務研修」を修了することで、介護支援専門員証の交付を受けることができます。現在、最も多いのは、介護福祉士として経験を積み、ケアマネジャーになるというパターンです。
ケアマネージャー(介護支援専門員)は更新に研修が必要
介護支援専門員証には有効期間があり、5年ごとに更新する必要があります。
更新するためには、介護支援専門員証の有効期間満了日までに、更新に必要な研修を受講した上で、更新交付を申請します。ケアマネジャーは生涯、学習を続けていかなければ務まらない大変な仕事なのです。
なお、介護支援専門員の登録、介護支援専門員実務研修受講試験、介護支援専門員実務研修は、すべて都道府県知事のもとで行われています。詳細については各都道府県のホームページなどをご確認ください。
ケアマネジャーの主な仕事内容
ケアマネジャーの業務内容は多岐にわたるため、ここでは主な3つの業務に絞ってご紹介します。
1.ケアプランの作成・給付管理
2.関係者間の連絡調整
3.要介護認定調査
1.ケアプランの作成・給付管理
ケアプランは介護保険サービスの利用計画書で、これがなければ介護保険サービスを利用することはできません。利用者や家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、提供されるサービスの目標や達成時期、サービスの種類・内容とその利用料などが記載されており、以下の過程を経て作成されます。
ケアプラン作成の手順(1)利用者に聞き取り調査をしてアセスメント(課題分析)する
(2)利用者と家族の希望や、居住地域の指定居宅サービスの提供体制を考慮し、解決すべき課題に対して適切なサービスの組み合せを検討する
(3)ケアプランを作成する
また、利用者が介護保険サービスを利用すると、サービス提供事業者は介護給付費を国民健康保険団体連合会(国保連)に請求します。国保連は審査後、事業所に給付を支払いますが、その審査の際にケアマネジャーが作成した書類が必要です。この書類を適切に作成し、国保連に提出することが給付管理業務です。
2.関係者間の連絡調整
市町村、指定居宅サービス事業者、施設などとの連絡調整、入所を必要とする場合の介護保険施設の紹介などもケアマネジャーの仕事です。
利用者さんと、利用者さんを支える関係者それぞれが必要とする情報を提供し、関係性を調整することで、適切な介護保険サービスを円滑に利用・提供できるようにしています。
3.要介護認定調査
要介護認定調査とは、介護保険サービスの必要度を判断するための実地調査で、自治体から委託された場合にケアマネジャーが担当することもあります。調査は日頃の状況を把握できる場所で、多くの場合、利用者の自宅で行います。心身の状況について利用者本人やその家族から聞き取りなどの調査を行います。
要介護認定調査の結果と主治医の意見書を踏まえて、保険・福祉・医療の学識経験者による介護認定審査会が開かれ、利用者の要介護度(要介護1~5または要支援1~2)が判定されます。
ケアマネジャーのやりがいと大変さ
ケアマネージャーのやりがい
ケアマネジャーの方が多く挙げるやりがいは、以下の通りです。
・自身が作成したケアプランで利用者さんやご家族の力になれる
・利用者さんのそばで元気になる様子を見守ることができる
・利用者さんから直接感謝の言葉をいただける
たしかに、自身が作成したケアプランで利用者の要介護度が低くなったり、同居家族の生活の質が改善したりすれば、やりがいや達成感は大きいでしょう。利用者に寄り添って生活の様子をうかがうなかで、「私の仕事で利用者さんを良い方向へ向かわせることができた」と実感する機会も多いはずです。
ケアマネージャーの大変な点
一方、ケアマネジャーの大変さとして、次のような意見もあります。
・5年更新の資格なので、常に勉強し続けなければならないし、そのための費用もかかる
・場合によっては、業務時間外でも緊急時の呼び出しがある
・利用者とサービス提供事業者との板挟みで精神的負担が大きい
ケアマネジャー業務は、高度な専門知識と豊富な経験が求められる責任の大きい仕事です。
利用者の生活全体を支える重要な役割を担いながら、書類作成や事務作業をこなし、精神的にも疲労しやすい環境で働いているのが現状です。
それに見合うほど報酬面での評価が高くないのが残念という声もありますが、近年になって介護職員の処遇改善を図るための環境整備とともに、賃金改善に充てることを目的とした「介護職員等処遇改善加算」が創設されたことは喜ばしいことだといえます。
※「介護職員等処遇改善加算」がケアマネージャーにも配分されるかは、事業所によって異なります。各事業所でご確認ください。
ケアマネジャーの1日の流れ
ケアマネジャーの勤務先はさまざまですが、居宅介護支援事業所、入居型介護施設、地域包括支援センターなどが主なところです。
ここでは、就業者が多い居宅介護支援事業所を例に取り、ケアマネジャーの1日の業務の流れをご紹介します。
あくまでモデルケースとして1日の業務の流れを紹介しましたが、実際のケアマネジャーは日々変化に富み、判で押したような同じ日が続くことはあり得ないと言っても過言ではありません。
人々の関係性の中で動く仕事であるため、自分でタスクの量やタイミングをコントロールできる余地は大きくないことも考えられます。しかし、そうした状況の中で調整力を発揮し、物事を仕切ることができればできるほど、利用者さんは確実に暮らしやすくなっていきます。
ケアマネージャーのキャリア形成
ケアマネージャーは合格率も低く、介護職員等がキャリアアップの1つの道として選択することが多いです。一方で、ケアマネージャーになったらキャリア形成は終了かというと、そうではありません。
ここからは、ケアマネージャーのキャリア形成について解説していきます。
1.生涯学習による成長
専門的な知識やスキルをさらに伸ばしていくことで、ケアマネジャーは自身の可能性を広げ、利用者さんのためにより貢献できるようになります。
先述のようにケアマネジャーには生涯学習(更新研修)が義務づけられており、資格更新のためには数十時間に及ぶカリキュラムの研修を必ず受講する必要があります。ケアマネジャーとしての専門性を高め、多様な疾病や生活状況に応じたケアマネジメントを実践できるようになることを目的とした研修で、このルートに乗って学んでいくだけでもケアマネジャーとして相応の成長を果たすことができるでしょう。
2.キャリアアップやチェンジを見据えた資格取得
ケアマネジャーの資格に加えて別の資格を取得し、その相乗効果で自身のキャリアを広げていくパターンも考えられます。ケアマネジャーの上位資格に位置付けられるものや、親和性が高い資格の取得を視野に入れるといいでしょう。
その例となる資格をいくつかご紹介します。
■主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)
主任介護支援専門員は、「主任介護支援専門員研修」を修了することで取得できる資格です。この研修は、他の保健医療サービスまたは福祉サービスの提供者との連絡調整、他のケアマネジャーに対する助言や指導、その他の介護支援サービスを適切かつ円滑に提供するために必要な業務に関する知識や技術を修得する目的で実施されています。
つまり、これらの能力を身に付けた上級ケアマネジャーが主任介護支援専門員だというわけです。
主任介護支援専門員研修を受講するためには、介護支援専門員更新研修を修了した上で、以下の要件のいずれか1つを満たす必要があります。
・専任のケアマネジャーとして従事した期間が通算して5年(60カ月)以上である者(管理者との兼務期間も算定可能)
・ケアマネジメントリーダー養成研修修了者または日本ケアマネジメント学会が認定する認定ケアマネジャーであって、専任のケアマネジャーとして従事した期間が通算して3年(36カ月)以上である者(管理者との兼務期間も算定可能)
・主任介護支援専門員に準ずる者として、現に地域包括支援センターに配置されている者
・その他、ケアマネジャーの業務に関し十分な知識と経験を有する者であり、都道府県が適当と認める者
また、都道府県の実情に応じて受講要件を設定することもできるため、都道府県ごとに少し異なる要件が定められている場合があります。
※出典:厚生労働省主任介護支援専門員研修ガイドライン
■認定ケアマネージャー
一般社団法人日本ケアマネジメント学会が、ケアマネジャーの資質向上に寄与するため、2003年に創設した資格です。認定ケアマネジャーの養成を通して、ケアマネジメントを一層充実させ、利用者さんの生活の質向上や住民の福祉に貢献するとともに、ケアマネジメントの専門性と社会的地位の確立に資することを目指しています。
認定ケアマネジャーになるためには、以下のすべてを満たす必要があります。
・介護保険法の定めるケアマネジャーとして登録されており、ケアマネジャーとしての人格および見識を備えていること
・ケアマネジャーとして3年以上の実務経験を有すること
・日本ケアマネジメント学会が行う資格試験(年1回)に合格すること
本資格は、試験合格後に登録された翌年度の4月1日より5年間有効です(5年ごとに更新が必要)。更新のためには、学会の学術大会や研修会への参加など活動実績が求められます。
※出典:一般社団法人 日本ケアマネジメント学会認定ケアマネージャーとは
■関連領域の国家資格(介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士など)
―介護福祉士
介護福祉士からケアマネジャーになる方も多いですが、そうでない方は介護福祉士資格を取得すると、より深いケアマネジメントができるようになるかもしれません。
また、介護施設との関わりの中で主導権を握ったり、介護職員への指導・育成担当としての役割を果たしたりすることも期待できます。さらに、介護福祉士の知識を生かして、地域包括支援センターでの相談業務など、活躍の場が広がるでしょう。
ー社会福祉士
社会福祉士資格を取得すれば、より幅広い社会資源に関する知識と支援スキルを獲得できるでしょう。
地域包括支援センターのソーシャルワーカーや福祉施設の管理者として活躍したり、行政機関で地域の政策立案に携わったりと、キャリアの選択肢が大きく広がるでしょう。
ー精神保健福祉士
精神保健福祉士資格を取得すれば、精神障害者や認知症高齢者に対して専門的な支援が可能になります。
精神科病院、障害者支援施設、地域活動支援センターなどにも活躍の機会が広がり、精神保健福祉分野でのキャリアアップが期待できます。
■関連領域の専門資格(認知症ケア専門士など)
認知症ケア専門士は、一般社団法人日本認知症ケア学会が2003年に創設した資格です。認知症ケアに対する優れた学識、高度の技能、倫理観を備えた認知症ケア専門技術士を養成し、認知症ケア技術の向上と保健・福祉に貢献することを目的としています。
認知症ケア専門士になるためには、以下のすべてを満たす必要があります。
・認知症ケアに関連する施設・団体・機関等において試験実施年の3月31日より過去10年間において3年以上の認知症ケアの実務経験(教育・研究・診療を含む)を有する者
・認定委員会の専門士認定試験(第1次:筆記試験、第2次:論述・面接試験)および審査に合格すること
なお、認知症ケア専門士としても生涯学習が求められており、5年ごとに資格更新する必要があります。
※出典:一般社団法人日本認知症ケア学会認知症ケア専門士認定試験
最後に:ぜひケアマネージャーに挑戦してみてください!
ここまでで、ケアマネジャーの仕事内容から、やりがいや大変さ、業務の流れ、キャリアアップの方法までを解説してきました。
利用者さんを中心として、関係者たちをチームとして捉え、そのチームワークを最大化させることこそ、まさにケアマネジャーの仕事だといえるかもしれません。魅力とやりがいに満ちたケアマネジャーの仕事に興味を持ったら、ぜひ挑戦してみてください!
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