エンジニアを組織としてまとめるために、手練れのCTOが意識していること【尾藤正人/聴くエンジニアtype Vol.62】
聴くエンジニアtype
組織が大きくなればなるほど、マネジャーは一人一人のエンジニアをフォローするのが難しくなる。メンバーに納得感やモチベーションを提供できず悩んでいるエンジニアリングマネジャーは多いだろう。
今回の対談では、多くの企業でCTOとしてマネジメントを担ってきた尾藤正人さんが常に意識している「メンバーとのコミュニケーションのコツ」に迫った。
株式会社オープンロジ
執行役員CTO
尾藤正人さん(@bto)
大学在学中にVine Linux SPARC版を開発。卒業後IPA未踏ユースソフトウェアに採択。 ウノウ(Zynga Japan)CTOを勤めた後、UUUMにジョインしCTOとしてIPOを牽引。Reproの執行役員CTOを経て、オープンロジ執行役員CTOに就任
【MC】
エムスリー株式会社 VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(
)
Sansan株式会社、Yahoo! JAPAN、エムスリー株式会社の機械学習エンジニア、チームリーダーの経験を経てCADDiにジョイン。AI LabにてTech Leadとしてチーム立ち上げ、マネジメント、MLOpsやチームの環境整備、プロダクト開発を行う。2023年5月よりエムスリー株式会社3代目VPoEに就任。業務の傍ら、趣味開発チームBolder’sの企画、運営、開発者としての参加や、XGBoostやLightGBMなど機械学習関連OSSのRust wrapperメンテナ等の活動を行っている
組織と個人のメリットを共存させる尾藤流マネジメント
ばんくし:マネジメントについて聞いてみたかったのですが、社員が個性を発揮することはとても素晴らしいと思いつつ、組織としてまとめるのは非常に大変ですよね。尾藤さん流のバランスの取り方を聞きたいです。
尾藤:まずメンバー視点に立つと、組織に属していて納得ができないことって往々にしてあると思うんです。そのときに僕が大事だと思うのは、「いったん受け入れる」ということ。組織には方針や文化があって、会社全体がそのルールの下で動いていますよね。そんな中で、「納得できないからやりません」という人がいると、周囲に混乱を与えるじゃないですか。混乱を与えることで自分が納得する形になるならいいけど、そうではないのならまずは受け入れるという姿勢が大事だと思うわけです。
一方で、マネジメント視点でいうと「相手に対してメリットを提示すること」が重要だと思っています。僕は会社の経営メンバーとして働いているので、基本的に「会社にとって良いか」という視点での発言が多くなるし、そういう視点でものごとを考えています。でも、それが従業員にとってメリットになるかというと、そうではない場合も多い。
「会社の事業が伸びれば将来的に給料が上がる」と言ったとしても、そのメリットとの距離が遠いから、あんまり響かないんですよね。
ばんくし:確かに、個人からすると遠いですね。
尾藤:だから、会社にとってプラスになるものごとを進めようとするときは、会社視点だけでなく個人レベルでのプラス要素もできるだけ伝えるようにしています。
もちろん全てのものごとにおいて個人レベルでのプラス・マイナスが存在するかというと、そうでは無いパターンもありますが……。
ばんくし:前回お話ししていたパーソナリティーの話にもつながりますね。相手にとって何がプラスになるかというのは、相手のパーソナリティーを理解していないとできないですし、受け取る側も自分への理解ができていないと自分にとってメリットかどうかを判断できないですし。
「パーソナリティーを理解する」というのは、尾藤さんのマネジメントにおいて相当重要なキーワードなんだなと感じます。
尾藤:そうですね。もちろん人数が増えてくると、全員に対して個別にカスタマイズすることは難しいので、ある程度汎用的なメリットにならざるを得ないですが。ただ、「個人レベルでのメリットを提示する」という意識は常に持っているべきだと思います。
次回も尾藤さんのゲスト回をお届けします。お楽しみに!
文/赤池沙希