納豆が570円で売れる!「円安」が意外な追い風に 北海道の食を世界に売り込む
納豆もお菓子も世界を目指します。
今年も食品の値上がりが続いています。その理由のひとつが「円安」です。為替相場は、2022年から急激に円安が進みました。
4月には、一時1ドル160円台という34年ぶりの円安も!輸入品の価格はあがってしまいますが、逆に、輸出をする会社にとっては「意外な追い風」で「どんどん売るチャンス」!
例えば、日本から輸出した商品を1ドルで販売した場合、日本円にした売上高は、円高の3年前なら、およそ110円。
しかし、円安の今なら、およそ160円になるんです。
円安を追い風に、北海道の「食」を世界へ売り込む企業を取材しました。
北海道北斗市の澤田米穀店は、米の販売のほか、米を原料にしたポン菓子を製造・販売する会社です。
ポン菓子は、子どもでも素材の米のおいしさを感じられるよう、油をまったく使わない特許製法で作っています。この特徴が輸出には最適でした。
油は酸化してしまいますが、その油を使わないことで、賞味期限が1年以上に延長できるメリットがあるのです。
4年前にはじめたポン菓子の輸出は順調に伸びていて、従業員も5人から15人に増やしました。
1月には、タイで開かれた北海道産食品の商談会に参加し、新たな取引先を開拓。
これで輸出先は7か国となりました。
澤田導俊専務は「最近、引き合いや声のかかることが増えたと感じている」と円安の影響について話します。
仕入れ業者が実質2割引きくらいで商品を買えているようなものなので、「日本製品がお買い得」というイメージになっているのだといいます。
6月には新たな工場の建設に着手し、生産力をアップします。
アメリカでは納豆が570円!
納豆も世界へ!
北海道江別市の「北海道はまなす食品」は、17か国に冷凍納豆を輸出しています。
円安の今、日本で138円ですが、アメリカでは3ドル70セント=およそ570円で売っています。
増え続ける輸出に対応するため、2023年7月には、工場を新設。生産能力は2倍になりました。
しかし、新工場ができた翌月、原発の処理水の海洋放出を受けて、中国が日本からの水産物の輸入を停止。
納豆のタレに使っているカツオ節や煮干しなども、輸入停止の対象とされました。
そこで、水産物由来の原料を使わない新たなタレを急きょ開発しました。従来のタレとの味の違いをHBCの堀内大輝アナウンサーが食べ比べてみましたが…
「違いがわからないですね。おいしい!」
中国への輸出は、4か月間ストップしましたが、2023年12月に再開。その後は順調に売り上げが伸びています。
北海道はまなす食品の渡邊浩司社長は「円安の波に乗りたい」と話していて、「あと2割ぐらいは輸出を伸ばせるのでは」とにらんでいます。
旭川の有名店も円安で「がっちり」
一方、店ごと海外へ飛び出したのは、旭川市の「梅光軒」です。
トンコツと魚介のコクがあって濃厚なのに、食べ終わったらあっさり!これぞ旭川の味です。
「梅光軒」は、これまで海外6店舗を展開していましたが、2月に初めてアメリカ本土に進出。サンディエゴに店を出しました。
アメリカ出店のメリットは、日本円換算による売上高の増加。
デメリットは、人件費・材料費・家賃などの増加だと話しています。
醤油ラーメンは日本では980円ですが、アメリカでは3倍ほどの価格で提供。
これでハンバーガーセットと同じくらいの価格です。
一方、円安で日本から見た売上高は増えますが、現地でかかる経費も日本より増えます。
単価も3倍なら、人件費も3倍に増えています。
梅光軒の井上雅之代表取締役は「これが今の世界の常識だとするのであれば、そこにみんなで一緒に向かっていくことが、大事だと思う」として、今後もアメリカやヨーロッパなどに出店をしていきたいとしています。
「世界に負けないように、逆に言うと、もっと世界を追い抜いていけるように、円安をいい機会とするべきなんじゃないかな」
札幌市の西山製麺でも、2013年にドイツに現地法人を設立しています。
輸出した冷凍麺を現地法人が欧州約200店に販売していますが、コロナ後の外食需要アップや円安により、円換算の売上高が上がったということです。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年5月16日)の情報に基づきます。