2月最初の午の日「初午」に食べるのは、京都でしか見かけない野菜・畑菜の辛子和え
1~2月頃、京都市内の昔から営んでいる八百屋さんを訪れたことってありますか? その時期の京都でしか見かけない野菜が並んでいるんです。それは畑菜。そして、そんな畑菜を京都の旧家では、2月の初午の日に辛子と和えて食べる風習があるといいます。また同じ初午の日に、おいなりさん(いなり寿司)と粕汁も食べるんだとか。イラストを拡大して見てください~。
畑菜の辛子和えを食べるのはなぜ?
伏見稲荷大社を創建した秦伊呂巨(はたのいろこ)(秦伊呂具〈はたのいろぐ〉)の名前の「はた」と畑菜の「はた」をかけているとか!
また、稲荷大神の使いである白狐の好物が辛子なので、辛子を和えたといわれています。白狐はもちろん、油揚げも大好き♡
畑菜ってなに!?
京の伝統野菜のひとつ。1~2月が旬で、小松菜と似ています。足が早いため、京都以外で出会うことは少ない野菜。
江戸時代初期に刊行された日本最古の農業書『農業全書』にも登場するので、その頃にはすでに作られていた模様。もともとは、菜種油を採るために栽培されていたものなのだそう。
今の畑菜は、在来種と明治頃に西洋から入ってきた菜っ葉をかけ合わせて品種改良されたものです。
初午ってなに?
2月の初めての午の日を「初午」と呼びます。
奈良時代の和同4年(711)の初午の日に、稲荷大神が稲荷山(京都の伏見稲荷大社があるところ)に降臨し、そこから稲が生えたとか。なので稲荷大神は食物の神様であり、降臨された初午の日に五穀豊穣や、そこから転じて商売繁盛などを祈ります。
稲荷大神の別名は宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)です。
京都旧家の初午の食はこんなかんじ
【畑菜の辛子和え】
畑菜は霜にあたるとやわらかくなってさらに美味♪ 小松菜に似ているけど、小松菜よりもやわらかくて甘い。
【おいなりさん】
関西では三角形が主流。
【粕汁】
酒粕多めの白い汁物。
取材・文・イラスト・写真=松鳥むう
松鳥むう
イラストエッセイスト
離島・ゲストハウス・民俗行事・郷土ごはんを巡るコトがライフワーク。著書に『トカラ列島秘境さんぽ』『粕汁の本 はじめました』(ともに西日本出版社)、『むう風土記』(A&F)などがある。