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“青い炎のような歌”を放つモーツァルトの知られざる一面――春アニメ『クラ★スタ』モーツァルト役・伊東健人さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2025年4月5日よりTOKYO MX・BS11にて放送スタートとなったTVアニメ『クラシック★スターズ』。本作は偉大な音楽家たちの「ギフト(才能)」を体内に移植された少年が仲間たちと出会い、音楽の魅力に触れながら、コンテストでの優勝を目指す姿を描いたオリジナルアニメーションです。UNISON(アリア・エンターテインメントのオリジナルコンテンツ制作ブランド)とキングレコードが原作を手掛け、音楽はElements Gardenが、アニメーション制作はプラチナビジョンが担当しています。

♪Emotion 2「ナハトムジークは翼に変える」では、私立グロリア学園に通いながら、新人アーティストやモデルとしても仕事をするモーツァルトの活躍が描かれた。彼の音楽に対する情熱を、どのように演じていったのか。モーツァルト役の伊東健人さんに話を聞いた。

 

 

【写真】春アニメ『クラ★スタ』伊東健人インタビュー|“青い炎のような歌”を放つモーツァルトの知られざる一面

『クラシック★スターズ』の世界観について

──第2話の冒頭で、ここが「興奮、歓喜、高揚感……様々な生の感情が解析され、データ化されるようになった世界」で、それが可視化されたものが「エモージョン」=エモーショナルなビジョンであるという、この作品の世界観の説明がありました。この世界について、伊東さんはどう感じましたか?

モーツァルト役 伊東健人さん(以下、伊東):設定自体は、ちょっと近未来のSFっぽくて、人の感情があやふやなものではなくなっている、みたいなところは、すごく面白いなと思いました。そんな未来があったら良いなぁとも思いましたし……。

ただ、それには難しい問題もあって、音楽とかエンターテイメントの良し悪しって、そうじゃないじゃん!っていう気持ちもあるんですよね。だから実は語りだすと深いテーマなんですけど、それをアニメでやろうとしているんだなと思いました。

 

 

──確かに、人によって好きな音楽も違いますからね。

伊東:そうなんです。僕も音楽が好きな人間だから、「そうじゃない!」と思ったりするし、人の感情が数値化できるはずがないと考える人も出てきたりするだろうし。その中で『クラシック★スターズ』は、それをめちゃめちゃシリアスに描くのか、ポップに描くのか、どっちなんだろうと最初は思っていました。

──どちらだと思いますか?

伊東:絶妙なバランスを突いていると思っていて。皆さんが見やすい、あるいは聞きやすいようなポップな作りになっているけど、とはいえ、怪しいところはあるんですよ。

このギフトと呼ばれるものは、誰がどういう狙いで作ったものなのかとか、はたして本当に我々にとって手放しで喜べる、良いものなのか?とか。そういう不穏な要素も感じたりするので、視聴者が釘付けになるような作りになっているとは思いました。

──そういう意味で、第2話は、大事な話をさり気なくしているんですよね。リストとベートーヴェンの会話で、リストが「かつての偉大な音楽家たちの因子を移植されてるってわけ」と言っていたり、モーツァルトとショパンの会話では、ショパンが「ギフト…まったく我ながら悲しきモルモットですよ」と言っていたり……。

伊東:この世界では、それが当たり前だから、さらっとしているんですよね。第1話はベートーヴェンにスポットがあたっていて、視聴者もベートーヴェン視点で見るから、みんな戸惑いながら見ていたと思うんです。「何だ? この世界は!」って。

でも第2話は、モーツァルト視点でもあって、モーツァルトは、この世界やエモージョンのシステムも受け入れて、その中で自分は何を成すのかを考えているから、すべてが当たり前に進んでいくんです。よく「ツッコミ不在」と言われるんですけど、それはこの世界において、これが当たり前のこととして成立しているからなんですよね。

 

 

──そうですね。因子が組み込まれているってどういうこと?と思いますけど、そこでは止まらず、そういう世界なんだと、みんなが受け入れているんですよね。

伊東:だからこそ、第1話でベートーヴェンが歌い出して、それが可視化されたとき、視聴者的に「どういうこと?」ってなるという。あそこもシリアスに描ききらないのが良かったですよね。だってリストやショパンの吹っ飛び方、面白すぎましたから(笑)。

──作品内にツッコミはいないですけど、視聴者は思わずツッコんだでしょうね(笑)。

伊東:そうですね。そういう演出をどこかで待っている自分もいました(笑)。作品中は本当に誰もツッコんでくれないから、ツッコませるのは、僕らの役割なんですよ。「そんなことなるかー!」って思うけど、なるんだよなって思いながら、セリフを言っていますし、視聴者はそれを見てワクワクする。これはもう、日本のアニメの様式だから、僕も好きです。

 

 

──ただ、深く考えられるところもあるよ、という。

伊東:基本的にはエンタメとして楽しんでもらいつつ、たまに立ち止まって、深い話をしてみても面白いのかなと思います。

──だって、このシステムによって、国家間の争いが、文化的で平和的な解決法にシフトしていってるわけですからね。

伊東:そうなんですよ。歌で世界を救えるわけですからね。

 

 

面白いシーンも、深読みすることができる

──第2話は、モーツァルトの紹介みたいなところがありましたが、改めて、どんなキャラクターだと感じましたか?

伊東:第2話では、まだモーツァルトのすべてが語られているわけではないんですけど、彼がなぜ“モーツァルト”なのかが、少し見えてくるというか。

すでに音楽の仕事をしていて、フィギュアスケートの貴公子であるミーシャに嫌がらせをされても、第2・第3の矢を準備している。仕事をしている人として、完璧な動きをするわけですよ。それが学生でできちゃうのがモーツァルトなんですよね。

それと同時に、彼の原動力は、歌で語られたりする。クールではあるんですが、音楽や歌に対する情熱がすごいというのが感じられるんです。「KISSとナハトムジーク」の2番で「歌は青炎-ほのお-だ」と言い切っていますから、彼にとって歌は炎なんです。これはすごく強い言葉だなぁと思いました。彼にとっての音楽って、そういうものなんだなというのが、歌で知れるんですよね。

 

 

──クラシックでいうと、個人的に、モーツァルトの曲は華麗で繊細なイメージがあったんですけど、こんなにも情熱的なんだと思いました。

伊東:音楽に対する思いは、いちばん重たいかもしれないですね。それは、それぞれのソロ曲にも反映されていて、ベートーヴェンは軽やかなロックで、ボクシングっぽいと思うし、ショパンだったらEDMのリズムやラップが入っていたり、リストならば和のテイストが入ってきていたりする。その中でモーツァルトの「Kissとナハトムジーク」は、原曲により近いところで、炎を燃やしている。だから、パンチの重さで言ったら、いちばん重いものを繰り出そうとしているのが、この曲なのかなと思いました。

──ちなみにモーツァルト役だと、モーツァルトを聴いてしまう、とかはあるのですか?

伊東:ありますよ。クラシックは好きなので。でも、誰がいちばん好きなのかというとショパンなんですけど(笑)、モーツァルトも聴きます。歴史上のモーツァルトを演じたこともあるんですけど、彼の生きていた時代の音楽の性質とか、彼自身の歴史を知るのも好きですし、ミュージカルでも『モーツァルト!』という作品があって、観に行ったりもしました。

そこでは「僕こそ音楽」と言い切っていましたから、ワードとしてすごいですよね。歴史上のモーツァルトに魅力があるから、そうやっていろんな作品に派生していくと思うので、僕ももう少しモーツァルトを掘り下げたいなと思っています。

 

 

──きっとその目的もあるんでしょうね。偉大な作曲家の音楽を聴くだけでなく、その歴史も知ってほしいという。

伊東:ですね。興味を持って辿ってくれたら、もっと楽しくなると思うので、ぜひやってほしいです。「モーツァルトってどんな人なんだろう?」と調べてみたら、結構面白いと思うんです。別にそこまで神聖なものではないらしいというのもわかってもらえる気もするので。ベートーヴェンもモーツァルトも、結構反骨というか、ロックみたいなところがあるので、ぜひ皆さんも、楽しみながら知ってほしいです。

──第2話を具体的に振り返っていきたいんですけど、モデル活動をしているシーンから始まりました。

伊東:本当にやりたいのは音楽なんだろうなっていうのはありましたけど、彼は音楽が好きだというのを外にさらけ出しているタイプでもないので、いまいち伝わりにくいんですよね。でも、作曲をしていると時間の感覚を失うくらい好きなんです。

作曲していたらいつの間にか朝になっているのってあるあるで、僕もたまにやってしまうんですけど、今は作曲が身近なものになっているから、こういう感覚をわかる人も多いのかなと思いました。音楽だけでなく、何かに没頭していると、時間って早く過ぎていきますからね。

まだ第2話だと、そこまで口数も多くないんですけど、彼のそういう行動や、短いながらも発せられる言葉ひとつひとつに力があったので、そこで彼の心の中みたいなものが知れたのは嬉しかったです。

 

 

──ベートーヴェンが「歌なんか」と言うところに、カチンと来るのは共感できましたか?

伊東:いや、でもベートーヴェンの気持ちもわかるんですよ(笑)。自分で分析すると、ベートーヴェンとモーツァルトの間くらいのメンタルなのかなと思っているんです。だって、歌とか音楽、アニメもそうですけど、100人に聴かせて、100人に受け入れられるなんてことはないわけですよ。その中の10人が良いと言ってくれたら、それで十分だし、それだけで名作のカテゴリーに入るようなものだと思うんです。

だからベートーヴェンが「歌なんか」と思う気持ちもわかるし、そっちのほうが何だったら多数派なのではないかと思うんです。本当に音楽で人生を救われた人というのは少ないはずなので。

でもモーツァルトは、きっとそういうタイプの人で、音楽に人生を捧げているから、彼の中で音楽が救いになっているところがある。でもベートーヴェンは、そうではなかった人間だから、現時点ではぶつかるよなっていう。第2話までだったら、彼にとってそれがスポーツでありボクシングなんですよね。だから対極なんです。

──その対極にいるベートーヴェンに対して、モーツァルトは部屋を半分に分けて、こっちに入ってくるなと言っているのが面白かったです(笑)。

伊東:そう! あれは本当にどうなんだろう……でも大好き(笑)。あれってアニメならではの演出じゃないですか。仲が悪い人ほど同じ部屋になるし、部屋を半分に分けるし……。ああいうところはモーツァルトのかわいいポイントなのかなと思います。ノックされたら裸で出てくるし(笑)。そういう小さいクスッとするところの積み重ねで、キャラクターと視聴者の信頼関係も積もっていき、親しみみたいなところを覚えると思うので、こういう演出、すごく好きです。

 

 

──そこから、ショパンとリストがギフトについて語っていく中盤があり、クライマックスは、ミーシャの来日からの音楽シーンでした。そこもツッコミ不在の面白さがありました。ミーシャに楽譜を踏みつけられたことに、モーツァルトは、やはり怒っていたんですかね?

伊東:怒りというのは、モーツァルトの原動力の中に確実に存在していて、それはミーシャに雑な扱いを受けただけでないものが、どうやらありそうだなと思いました。だから、彼が焦っている、あるいは怒っている理由というのは、これから語られていくと思います。

そもそもモーツァルトって、最初から怒っているんですよ。ベートーヴェン自身というより、その名前に怒ってるのではないか?みたいに思うシーンもあったので、そこはこれから先の見どころなのかなと思います。

でも難しいですよね。怒りをどういう形で放出していくのかって。エンタメにおいて、怒りはそのまま出さないほうがいいとは思うんです。ネガティブなワードでもあるので。でも、怒りから生まれるエモい作品も絶対に存在する。だからそことモーツァルトはどう向き合っていくのかっていう。

──それでいうと、ここのシーンでは、かなりかわいいものが可視化されていましたよね。

伊東:シロクマとペンギンですね(笑)。そこで本当に怖い生き物とかが出てきたら、かなり深めの怒りだったんだなってなるんですけど、ペンギンと白熊だったので、そこも親しみポイントですよね。どうやら怒ってはいるけれど、良い奴ではありそう、みたいな。そこにモーツァルトという人間が詰め込まれている感じはします。

 

 

──最後はミーシャが投げ飛ばされ、氷に埋められて、かき氷を食べるという展開でした(笑)。

伊東:ミーシャは圧倒的な強者として描かれていたので、ここで、モーツァルトに軽々と投げられてしまうという意味で、これをやられてしまったら、もうひれ伏すしかないというか。そういう意味もあったのかな?と思いました。モーツァルトが怒りを持って、ミーシャという存在を自分と対等に持っていく作業だったのかなと。そこまでして対等になれるくらいなのかなと思いました。

──そうやって深読みしようと思えば深読みできる、考察が捗るかもしれません。

伊東:深読みしたら、いくらでも語れます。音楽家が楽譜を踏まれるって、フィギュアスケート選手にとってはどういうことなんだろうと考えたら、氷を削られるようなことなのかな?と思ったり。もちろん絶対やってはダメなことだけど、そういうことも、ひとつひとつ考えたりしました。

──ツッコめるところも、さらにその先を考えると面白いかもしれませんね。では最後に、見どころをお願いします。

伊東:第3話以降、ショパンとリストの人間性の掘り下げも描かれました。いよいよキャラクターが出揃った感じがあるので、そこから先ですよね。まだまだいろんな謎が散りばめられているので、それを楽しみにしていただきたいです。ギフトとは何なのか、三原木先生、そしてロストの人たちは何なのか。それを1クールかけて描いていくと思うので、引き続き、いろんなところを楽しみにしながら、音楽の力、エモさを感じていただきたいと思います!

 
[文・塚越淳一]

 

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