熟年離婚したいけど…年金や生活費は足りる?今からできる対策は
近年、生き方に対する価値観が大きく変わってきました。老後の過ごし方でも、大事な人と寄り添って生きていきたいと思う人もいれば、一度きりの人生だから子どもの独立を機に離婚して新たな人生を歩みたい、と考える人もいます。
いわゆる「熟年離婚」ですが、熟年離婚を考える時に気になるのはやはり、「離婚しても生活できるのか?」という離婚後の生活費=お金のことではないでしょうか。今回は、熟年離婚後の生活設計や財産分与などの老後資金の計画について見ていきましょう。
結婚35年以上の離婚件数は増加傾向
離婚件数は増加傾向にあるという印象を持つ人も多いのではないでしょうか。しかし2000年代以降、意外なことに離婚件数は減少傾向にあります。人口が減り、結婚する人も減っているということが考えられそうですが、人口千人あたりの離婚率で見ても低下傾向にあるため、離婚という選択をする夫婦自体がやや減少しているようです。
同じく厚生労働省の資料にある「同居年数別の離婚件数」をみると、圧倒的に同居5年未満が多いことが分かります。結婚して早い段階で性格や価値観の不一致などで別れる夫婦が多いようです。また、2000年と2020年で比較すると、前表の離婚件数同様、同居年数別の離婚件数は減少傾向にあります。
しかしながら、件数自体は多くないものの「同居年数35年以上」ではこの20年間で増加していることが目を引きます。35年というと30歳ぐらいに結婚して、ちょうど退職や年金の受給が始まる時期です。やはりセカンドライフに突入するタイミングで離婚を考える人が増えているのかもしれません。
熟年離婚後、60代一人暮らしで生活費はいくら必要?
離婚して独り身となってから年金生活に突入した場合、どのような生活が想定されるでしょうか?総務省の家計調査報告(2023年)によると、65歳以上の単身無職世帯の平均実収入は12万6905円、税金や社会保険料を差し引いた可処分所得は11万4663円、それに対して消費支出は14万5430円となっています。
あくまで平均ではありますが毎月3万円程度、年間で36万円の赤字となる計算で、その赤字分は金融資産を取り崩しながら生活をしていくことになります。仮に65歳から85歳までの20年間で計算すると、必要な取り崩し額は約720万円です。実際は、持ち家の有無や介護施設への入所の可能性、また長生きのリスクも考えると、もう少し資金が必要になることも想定されます。
離婚時の財産分与の対象と分け方は?
近年では65歳以降も元気に働いている人が多くいます。離婚後に働くという人もいるでしょう。ただし、70代80代となると体力や健康面で不安が出てきて働いて収入を得ることが難しくなるのが一般的です。そうなると年金収入に加えて、それまでに蓄えた金融資産が頼りになります。離婚時にどれだけ財産分与を受けられるかは大きなポイントと言えるでしょう。
離婚の大半は協議離婚です。そこで財産をどのように分けるのかも話し合います。もちろんお互いが納得しスムーズに決まれば良いですが、難しい場合は裁判所で離婚調停などをすることになります。以下で、年金や住宅、その他に分割対象になるものについて確認していきましょう。
年金の財産分与
2024年度の国民年金(老齢基礎年金)の満額は月額6万8000円です。ずっと専業主婦だった方や自営業の方はこの金額が目安となり、前述の平均的な収入とは大きく乖離しています。
一方、会社員として厚生年金に加入していた場合は、国民年金に加えて厚生年金も受給できるため、年金の加入履歴によって将来の受取額が大きく変わります。ただし、例えば夫が会社員で妻が専業主婦という場合でも婚姻期間中に築いた財産は原則として共有とみなされることになっており、年金も同様です。
年金には専業主婦が対象の「3号分割」という制度があり、婚姻期間中における夫の厚生年金の半分を妻が受給することができます。厚生年金額は働いた期間やその間の報酬によって異なり「報酬比例部分」といいます。仮に婚姻後の報酬比例部分を計算し月額10万円ということであれば、妻は離婚後5万円分を受給することができます。
もし妻も会社員として働いていた共働き夫婦の場合は「合意分割」となり、婚姻期間中のお互いの報酬比例部分を合算し、最大その半分まで受給することができます。分割には相手の同意が必要で、合意が得られない場合は家庭裁判所での調停や審判が必要です。お互いがどのような働き方をしていたかによって年金の分け方も違うため事前に年金事務所で確認すると良いでしょう。
住宅の財産分与
婚姻後に購入した住宅も財産分与の対象になります。ただし、現金のように簡単に分けることはできません。離婚後はどちらが継続して居住するのか?またローンが残っているのか?という具合に他の資産よりも少々やっかいです。中には、ローンは夫が払いながら妻が自宅で生活するというケースもあります。
退職金やiDeCoの財産分与
離婚時点で支給されていない退職金も財産分与の対象になります。婚姻期間中にお互いが支え合いながら働いていたため、退職金の支払いが離婚後であっても、婚姻期間に該当する部分は財産分与の対象になりそうです。
同様にiDeCoなども注意が必要です。iDeCoは自己破産した際に差し押さえられないといった特徴がありますが、財産分与の対象にはなります。ただし退職金とiDeCoのどちらも離婚時点では受け取っておらず、受け取りが10年先、20年先ということもあるでしょう。退職金はその後、転職をしたり会社の退職金規定が変わったりと不確定な部分もあります。そのため、この辺りは事前に法律家など専門家に相談しておきたいものです。
熟年離婚を考えたら準備すべきことは?
離婚時にある程度の金融資産がなければ、老後の単身生活には不安がよぎります。今現在、離婚を検討しているのであれば、離婚後に収支の見込みが立つ生活の仕方や生活場所を検討することが必要です。今の自宅を出ていく場合、実家なども含めてなるべく生活費がかからない場所や地域を検討すると良いでしょう。家計管理が苦手な場合は家計簿をつけるなどして、ムダを確認し見直します。最近は、副業や隙間時間を使った働き方もできるようになりました。離婚後の生活を想像しながら収入の得方を検討することも必要です。
一度きりの人生。離婚は決してネガティブな選択ではありません。残りの人生を前向きに楽しく生きるために、まずはファイナンシャルプランを立てるところから始めるのはいかがでしょうか?