「音楽を続けていて良かった。」 澤田 空海理、ニューアルバムを元に制作した短編映画『紅茶と味噌汁』上映イベントの公式レポートが到着
11月10日、青梅・シネマネコにて、短編映画『紅茶と味噌汁』上映イベントが開催された。
本作は、シンガーソングライター・澤田 空海理のニューアルバム『ひかり』(12月11日リリース)の完成記念作品として制作されたもの。映画『辻占恋慕』などで知られる大野大輔が『ひかり』を聴いたうえで脚本を書き下ろし、これまでも澤田のミュージックビデオを手がけてきた映像作家・吉田ハレラマが監督を務めた。主演は佐々木藍、辻凪子。
イベント内では、『紅茶と味噌汁』の上映、澤田による“告白”と“遺書の”ピアノ弾き語り、監督・キャストを交えたトークが繰り広げられた。
元恋人との経験やミュージシャンとしての葛藤を赤裸々に昇華した全7曲収録のアルバム『ひかり』をもとに、かつて付き合っていた男女二人が登場する映画『紅茶と味噌汁』は誕生した。
音楽業界で売れることを夢見る男性と、美大を卒業しアートの道を突き歩む女性という本作のキャラクターの設定は、実は澤田のライフストーリーそのもの。
主役・小暮山シンジについて澤田は、
「シンジは、音楽に託けて頭がいい奴ぶってるじゃないですか。初めて脚本を読んだとき、『ダサい奴だな』『もっと自分の言葉でしゃべりなさいよ』と思って笑っちゃったんです。でも冷静に見ると、これはもう僕でしかないんだよなと。僕自身が思っている『澤田 空海理』はもっとかっこいいはずなんですけど、外から見ると僕はこう映っているのだろうなと思いました」
とコメント。
小暮山シンジを演じたのは、澤田のメジャーデビュー曲「遺書」のミュージックビデオにも出演している俳優・佐々木藍。
「小暮山シンジというキャラクターをどういうふうに作り込んでいくかは、すごく難しかったです。最初は空海理くんをそのまま演じるのかと思っていたのですが、佐々木藍としてのテイストも入れながら、一人の人物を作り上げていきました」
と、異例な企画を形にする難しさとやりがいについて語った。
シンジの元カノ・笠松ミカ役を演じた辻凪子は、二人のすれ違いが会話劇で描かれた本作について、
「私はミカのように人に罵倒したことがないから、演じながらどう見えるのだろうと思っていたのですが、二人とも可愛く見えてよかったです。『私が信じた男だよ』という言葉は、現実では口が裂けても言えない(笑)」
と、二人のキャラクターに愛おしさを感じている様子。
イベント内では、男女の恋愛観や「愛」にまつわるディープな話も展開された。
音楽から映画を作るという斬新な試みは、映画を愛する澤田たっての希望からスタート。監督を任された吉田は本作の企画案を聞いたとき、「本当にびっくりした」という。
もともと大野作品のファンであった澤田による「大野さんが書き下ろす会話劇を見たい」という想いが実現したことに、
「実験的な試みではあったんですけど、この作品が完成し、それをたくさんの人が見に来てくれて、音楽を続けていてよかったなと思いました」
と、感謝の言葉とともに喜びを述べた。
澤田 空海理のニューアルバム『ひかり』は、12月11日より配信スタート。イベント内で辻は、澤田の歌を「丸出しで作られていて、頭の中を覗いているような歌」と称賛した。
なお12月15日には、代官山UNITにて、『ひかり』リリースを記念した単独公演『冬瓜と春菊』が開催される。
澤田 空海理 コメント
本番前のリハーサル、空調と映画と会話の音が混ざる独特の雰囲気が強く残っています。上映本番、後方で他の演者さんやスタッフさんと一緒に地べたに座り込んで映画を観る時間が何か特別なもののように感じられました。ミニライブ、二回連続ですっ飛ばしたMCや歌詞が飛んで即興で別の言葉に言い換えたことにも後悔は感じられませんでした。アフタートーク、皆さんの顔を見ていたので喋る内容が疎かになった気がしないでもありませんが、それさえ物の数とも思わないほど愛したい瞬間でした。どれも人生の節目節目に振り返りたいものばかりです。たくさんの方々の熱意と厚意で成り立った「紅茶と味噌汁」という作品、空間、期間に改めて感謝いたします。
文=『紅茶と味噌汁』上映会司会・矢島由佳子