三浦涼介「僕の表現者としてのターニングポイントとなるような舞台」~『オイディプス王』が開幕へ 舞台写真&コメントが公開
2025年2月21日(金)東京・パルテノン多摩 大ホールにて、舞台『オイディプス王』が開幕する。この度、舞台写真&コメントが届いたので紹介する。
ギリシャ悲劇の最高傑作と称される『オイディプス王』。解りやすく求心力の強い作劇で、眼も耳も捉えて離さず、悲劇でありながら魅力的でドラマティック、そして演劇の醍醐味を堪能できる作品だ。
日本でも多彩な俳優陣が挑んできた本作は、一昨年パルテノン多摩がリニューアルオープン1周年記念企画として上演し大好評を博し、この度も魅力的なキャスト、スタッフが集結している。
強靱で繊細で美しく、よどみなく膨大なセリフを明晰に放つオイディプスを三浦涼介が演じ、先王ライオスの妻で、オイディプスの母、後にオイディプスの妻となるイオカステは、23 年の公演同様に元宝塚歌劇団トップスターで退団後も舞台を中心に活躍する大空ゆうひ。イオカステの弟クレオンは進境著しく、1月末に第五十九回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞した岡本圭人が務める。
また、預言者テイレシアス役は、所属の文学座その他の秀作舞台で常に高い評価を受ける浅野雅博(今月末に第32回読売演劇大賞 優秀男優賞受賞が決定)。オイディプスの出生の秘密を知る羊飼い役に表現力と存在感に優れた外山誠二、コリントスの使者役は、蜷川幸雄氏演出作に欠かせない存在で、現在も幾多の舞台で実力を示す大石継太が新たに加わり、新風を吹き込んでいる。そして神官と使者の二役を担うのは高い演技力で長年にわたって定評のある今井朋彦。
そして、上記の盤石の出演陣に加え、最前線の俳優とダンサー合計16名がコロス役で出演、その融合と公演を支える。なお、本公演は2月24日(月休)まで東京・パルテノン多摩 大ホールにて上演、その後、3月1日(土)大阪・SkyシアターMBSで行われる。
オイディプス役:三浦涼介 コメント
『オイディプス王』2023年公演で僕は初めてギリシャ悲劇に挑みました。大作のタイトルロールを担う重圧と闘い、膨大なセリフに追われ、稽古中は心身共に消耗していましたが、演出家、多くのスタッフの方々、共演の皆様に支えていただき、緊張と恐怖の初日を乗り越え、座組の全員で公演を全うできたと記憶しています。悲劇でありながらオイディプスは死を選ばなかった点に一縷の希望、光明があると感じ、その点を大切に考え表現しました。
おかげさまでご好評をいただき再演の機会を得て、今度は支えてくださった方々に何かをお渡しできるよう、自身がオイディプス役を楽しんで演じられるようにと願って稽古に臨みました。稽古場で繊細に細心に演じることで、ここだと感じられるところに行き着き、オイディプスの弱さ、寂しさも解ると、深い作品世界の魅力もつかめたと思っています。
“それでも生きる”という点で、オイディプスと自分自身の共通点を見い出せた気持ちもあります。オイディプスの人間味も感じていただけると思います。
ギリシャ悲劇の最高傑作『オイディプス王』には人の世の普遍性と、変わりない不条理、不合理を感じられる身近な世界観があります。お客様にとって遠い別世界ではなく、難解でもなく、壮大な劇世界に自然と没入していただけると感じています。
僕の表現者としてのターニングポイントとなるような舞台にぜひ出会っていただけますと幸いです。
パルテノン多摩・大ホール、大阪SkyシアターMBS共に大好きな素敵な劇場です。
多くのお客様にご観劇をお待ちしております!
イオカステ役:大空ゆうひ コメント
2023年の公演の際に私は初めてギリシャ悲劇に触れました。台詞の扱いも含め、イオカステ役に自分をフィットさせるのが課題だと思っていましたが、稽古をする内に思いの外、今を生きる女性と通じるものを感じられ、古代から時を超えて生き続ける戯曲の力に驚きました。
イオカステは壮絶かつ非常にドラマティックで振幅の大きい人生を送り、自分自身の思いを殆ど語ることなく、死に向かってしまいます。
そこで、オイディプスとのドラマ、そして戯曲では描かれていないライオス王と過ごした時代も想像しながら、イオカステ像を探りました。オイディプス役の三浦涼介さんと稽古をし、彼の熱量を受けながら自然と役に到達できたのが初演だったと思います。
今回の再演は初演の土台があればこそ深みのあるドラマが目指せると考えています。
相手役の三浦さんはたいへん繊細なオイディプスを表現しています。初演から一年半の時を経て、三浦さんが更に進境し、精神力が強い王になったと感じます。私もそのオイディプスを受けとめる度量を持つイオカステを演じたいと、エネルギーを呼応させて稽古をしてきました。
ギリシャ悲劇と聞くと敷居の高さを感じられるかもしれませんが、人の世の普遍性に深く感じ入ることができると思います。この戯曲がなにを伝えたいのかを想像してご観劇いただくと、まさにギリシャ悲劇エンタテインメントだと受け取っていただけると思います。多摩センター駅から緩やかな坂道を歩いて5分、パルテノン神殿ならぬパルテノン多摩が見えてきます。そこで上演するギリシャ悲劇をどうぞお楽しみください!
また、大阪SkyシアターMBSでの公演もご期待ください!
クレオン役:岡本圭人 コメント
ギリシャ悲劇は演劇の原点で、『オイディプス王』はその歴史に刻まれた最高傑作です。アメリカの演劇学校でも英語版の脚本で学び、コロスを演じたこともあります。舞台俳優であれば、絶対に経験しておきたい作品なだけに、今回クレオン役を担うことになり、たいへん嬉しく思っております。俳優として、まさにこうした深みのある作品を求めていたタイミングで『オイディプス王』に出演することができ光栄です。
僕は自身の人生では体験しないであろう悲劇を観ると「これを繰り返してはならない」という気持ちになります。『オイディプス王』も2500年前に書かれた戯曲にもかかわらず、今改めて伝わってくるものや、共感できる部分がたくさんあります。そしてオイディプスを演じるために稽古場で奮闘されている三浦さんの姿を見ると、コロナウイルスという疫病に苦しみ、今も争いが絶えないこの時代に『オイディプス王』を上演する意味を感じます。ギリシャ悲劇を含む古典作品は人間の本質的な部分が深いところまで掘り下げられていて得るものが多く、だからこそ、長く世界中で上演され続けているのだと思います。
民衆に向かって言葉を放つような役は初めてで、大きなエネルギーが必要だと痛感しています。今、クレオンを演じられる喜びと共に想像力をかきたてながら創っていきたいと思います。
また、パルテノンの名の劇場でギリシャ悲劇の最高傑作を観劇なさる機会はなかなか無い事と思います。ぜひご観劇ください!
演出家:石丸さち子 コメント
『オイディプス王』を再演できる喜びをいっぱいに感じながら、準備を続けてきました。
まずは、一年半を経て再会した三浦涼介さんの、この作品に賭ける思いの強さ。
稽古が始まる時には、膨大な台詞が心と身体にしっかりと染みこんでいて、稽古の中で、2500年ほども前に書かれた言葉に、どんどん血が通っていきました。
2023年の初演でも、オイディプスとして素晴らしい生き様を見せてくれた彼ですが、また新しい地平を切り拓いてくれています。
そこに、イオカステ役の大空ゆうひさん、長らく演劇に身を投じてきたベテラン俳優陣が、新たな視点で挑んでくれているものですから、稽古場は、日々、演劇的な興奮と喜びに溢れていました。
また、再演キャストとして飛び込んだ岡本圭人さんは、悩み考え抜き、彼らしいクレオン像を獲得してくれています。
そして、本公演で特筆すべきは、16人のコロスの存在です。
俳優とダンサー半々の構成で、俳優は踊ることに挑み、ダンサーは言葉で表現することに挑み、大変な進化をしてきました。一人一人が個性的でありながら、時には大勢の民衆に見えるはずです。
彼らが王(為政者)に寄せる信頼と敬愛。
王が民衆に寄せる慈愛と国を救おうとする熱意。
そのすべてを裏切っていく、神の定めた運命。
それでも生きていく姿に、2025年現在の世界への祈りをこめました。