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「この“トリオ”で平安の謎を解決に導きます」~舞台『応天の門』佐藤流司・高橋克典・花總まりインタビュー

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(左から)花總まり、佐藤流司、高橋克典

人気歴史漫画『応天の門』(灰原 薬 原作/新潮社「コミックバンチKai」連載)の舞台化となる本作は、平安時代に活躍した学問の天才・菅原道真と都で随一の色男・在原業平がタッグを組み、京の都で起こる怪事件を解決していく歴史クライムサスペンスだ。今回、キャストを代表し、菅原道真役の佐藤流司、在原業平役の高橋克典、昭姫役の花總まりがインタビューに応じ、本番に向けた意気込みを語ってくれた。

舞台『応天の門』

ーーご出演が決まった際、原作に触れてみていかがでしたか?

佐藤:本当にめちゃめちゃ面白くて! ミステリーとしての謎解きの部分もあって、いわゆる少年漫画的なサクセスもありつつ、仕掛けもすごいじゃないですか。「どうやってこの問題が科学的に解決されていくんだろう?」みたいなところにも引き込まれて、結構一気に読んでしまいました。菅原道真も自分が思っていた道真像とは少し違って、自分は実直な感じを想像してたんですけど……史実では志半ばで亡くなっていますし。でも劇中では“冷めた小僧”みたいな言われ方もして、若い頃はこんな感じだったんだって新鮮でしたね。

高橋:平安モノは今年の大河ドラマもそうですし、このところみなさん心地よく慣れ親しんでいる世界観なのかなぁという印象もありますが、この作品も時代的に戦の話はほとんどなく人の心のお話なので、ゆったりと楽しんでいただけると思います。

ーー在原業平、原作では色っぽい登場シーンですが。

高橋:若干ね(笑)。そう、原作では結構色男なシーンもあって、僕も最近めっきりそういう役柄をやっていなかったので少し期待していたのですが(笑)、舞台のほうは爽やかに、という感じですかね。

花總:私はこのお話をいただくまで原作のことは存じ上げていなかったのですが、読んでみて「平安時代、実在の人物を中心にしたミステリー、何て面白いんだろう!」と。歴史物って歴史好きな方じゃないと「難しいかな」ってちょっと敬遠しがちではあると思うんですけど、そこがとても読みやすくてすんなり入っていけるし、ああこういう作品に触れられて良かったなぁと思いました。昭姫という役はその中でもちょっとインパクトのあるキャラクターで、かっこいいですよね。絵も設定もシンプルに「面白そう。やってみたい」って一目で惹かれてしまいました。お声かけいただけてすごく嬉しいです。ワクワクしています。

(左から)花總まり、佐藤流司、高橋克典

ーー役作りについてもお聞かせください。

佐藤:今ちょうど悩んでいて……原作では全然笑わないし、テンション感もずっとローな感じなんですよね。一度そのイメージで一通り台本を読んでみたんですけど、抑揚がめちゃくちゃ難しいなと思って。あまり起承転結が起こらずに作品が終わってしまった印象で、普通に読んでみたら自分なりに変化をつけるのが難しいなと感じました。かといって思いっきり自分の演じたいようにやってしまうとこの菅原道真の良さがなくなってしまうような気もして。そこの塩梅どうしようかなぁって……今も悩み中ですし、ギリギリまで悩もうかなぁと。稽古に入ってバランスのいいところを見つけられたらと考えています。

高橋:どういうふうにやっていくかはまだ全然わからないです。ノープランです(笑)。これは本当に稽古場に入ってやってみないと、なので。やはり台本だけを追うとかなり平板な印象もあるので、これをどう立体的にしていくか、どうやって作品が立ち上がっていくのか、演出家さんがどう作っていくのかによっても世界観や物語の抑揚はかなり変わってくるんじゃないでしょうか。平安時代のスピード感を想像することが難しくて……おふたりは刺激的に描かれているので“立っている”役だと思うんですが、業平は静かに物語を引っ張っていく、回していく役なので、その役割はちょっと意識しておこうかなとは思っています。

花總:私の昭姫のイメージはもう読んだままの印象ではあるんですが、やっぱり原作をよく知っていらっしゃる方たちのイメージは崩したくないのは大前提にあるので……ただ自分の感覚と演出家さんや周囲の皆さんの抱く昭姫像もあると思いますので、そこをすり合わせていくことで、さまざまなキャラクターが登場する中での自分の立ち位置とかも見えてくるんじゃないかと。お稽古しながら、みなさまと相談しながら、舞台の昭姫を見つけていけたらいいですね。

ーー台本もお手元に届いたそうですね。

佐藤:はい。原作はオムニバス形式なんですけど、個人的にすっごい好きなエピソードがあって、それが入っていたので嬉しかったです。物語のオチ的部分にもなるのでどれかはまだ言えないんですけど……でもすごく嬉しかった。全体としては少しアレンジも入って舞台用の物語になっているんですが、それもとても綺麗にハマっていて、読んでいて気持ちよかったです。

佐藤流司

高橋:1話完結の原作をどう芝居にするのかと思ってたんですけど、舞台でも1話完結のオムニバス形式を踏襲しながらすごく見やすい形で……基本的には漫画の通りで、部分的にエピソードを重ね合わせていたりもしています。原作も心情をあまり深掘りするような描き方ではないので、やはり視覚的な見せ方と展開で楽しんでいただくものになりそうですね。推理物でもありますし、原作を知らずにたまたま劇場にいらした方にも充分楽しんでいただけそうです。

花總:私はまだ自分のところを中心に読んだだけなのですが、私も実は「あ、ここ好きだな」っていうシーンが入っていて嬉しかったんです。それはストーリーというよりも本当に一瞬の場面なんですけど、今からもうそこのシーンを楽しみにしているのと、あと今回昭姫について深掘りしているエピソードも混ぜ込まれていて、そこは原作でも初めて目にする昭姫の一面が描かれるくだりでもあるので、(演出の)青木(豪)さんと相談しながら丁寧に演じたいなと思っています。

ーー共演するにあたって、お互いの印象は?

佐藤:高橋さんは子供の頃から知っている方ですし、「かっこいいなあ」という気持ちです。今日初めてお会いして、まだしっかりお顔を見ることができなくて、横顔多めで拝見しています(笑)。稽古始まったら正面からしっかり対峙して……だから、早く慣れないとヤバいですね。全然、緊張しています(笑)。

高橋:佐藤くんは本当に今時の若い人って印象でしたけど、今日お会いしてみてとっても真面目な方で、役設定にもあってますよ。お弁当も玄米ご飯だっていうし、ね(笑)。稽古始まったらツンケンしてやりこめられるのを楽しみにしています。花總さんは何度かお会いしたことはあるんですけど、お芝居するのは初めてです。宝塚出身の方はやっぱり稽古でビシッとやりますから、僕はセリフを覚えるのも遅いですしとっても緩いので、ビシッとした中でも迷惑をかけないように楽しくやれたらなと思っています。

佐藤:花總さんは本当に綺麗な方で。

高橋:可愛いらしいですよね。

佐藤:はい。内面もとても美しくて……。

花總:いや、まだそこまで知らないでしょう?

高橋:(笑)。

佐藤:あ、そうですね(笑)。でも前回ご一緒した時も優しくしていただいて、ありがたかったのを覚えています。

(左から)花總まり、佐藤流司、高橋克典

花總:ふふっ(笑)。佐藤さんは稽古場での席がたまたまお隣だったのでちょっとだけお話もできたんですけど、役ではあまりご一緒するシーンがなかったんです。今回は2回目の共演なので、もっともっと研究しようかなぁと。

佐藤:お、ぜひお願いします!

花總:高橋さんとはお芝居するのは初めてで、でも今日が今までの中で一番長い時間お話しさせていただいて、ダンディだなぁって。役にもぴったりだと思います。

高橋:ありがとうございます(照)。

ーー本作が上演される明治座は劇場としての特別感もあり、お客様にとっても「行くのが楽しい場所」です。みなさんは明治座にどんなイメージをお持ちですか?

佐藤:私は今回初の明治座です。この前150年と聞いて歴史のある場所ですごいなぁと思うし、そういう場所に自分が立てたことと、自分を応援してくださる方たちを連れてこられてよかったなぁと思います。先日「表に立てる幟の色味を決めてください」って言っていただいて、「名前、金にしてください!」って言ったら「ダメです」って言われましたけど(笑)。

花總:え、色のことなんて聞かれましたか?

高橋:聞かれてないよ。

佐藤:そうなんですか!? ……でも結局自分も言い損になっただけでしたけどね(笑)。

高橋・花總:(笑)。

佐藤:とにかく初めてのことばかりなので楽しみです。あ、お弁当があるのも知ってます。いいですよね。

高橋:僕が前回出させていただいた時はちょうどコロナ禍で、座席もひとつ空けて、お客様にもマスクなどいろいろ規制があったのですが、それでも幕を開けられるだけで幸せだという状況で、明治座だけれどすごくアゲインストな風を感じながらやったのを覚えています。でも他の演目を観に僕も何度も行っていますが、本来は地方からのお客様もたくさんいらっしゃいますし、一日明治座で過ごす……舞台を観て、食事をして、お土産も買って帰る。いわゆる芝居の楽しみ方を体験できるところですよね。ストイックに演劇を鑑賞する、というよりは本当に“娯楽の演劇”を味わえる場所ですので、ぜひこの作品でも明治座で一日を、平安なのでまったりとした気分でね、過ごしていただくのがいいんじゃないかな。

高橋克典

花總:私も明治座さんは一度出させていただいたんですが、みなさんには「早めにいらしてください。そうじゃないとお弁当食べられませんからね」ってお伝えしています(笑)。いつも出ている劇場だと時間に合わせて入場していただき、休憩中はお化粧室に並んで……っていう感じなんですけど、ここでは劇場ごと楽しめるから、本当に「一日楽しむ感覚で来てね!」って。最近だと帝国劇場さんがクローズすることもあって明治座さんでもミュージカルをやる機会も増えているんですけど、平安を描くこの作品はまさに明治座さんにぴったりだと思うんです。ぜひ劇場ごと演目の世界観に浸っていただきたいですね。

ーー物語は道真と業平のバディも見どころポイント。タイプの違うふたりのコンビネーションも楽しみです。

高橋:バディ、周りから見たらそう見えるのかもしれないけど、道真はずっと嫌がってるもんね。

佐藤:そうですね〜(笑)。いやいや巻き込まれていくというか、組んでいるって思っていないというか。

高橋:僕のほうが彼に興味を抱いてる。次々と女性たちと恋をしていくということは、業平はすごく好奇心旺盛なわけで、多分、道真のことも面白いんでしょうね。おちょくって楽しんだりもしているし、もやもやっとしていたものを解き明かしてくれる気持ちよさもあるし。

ーー事件解決と業平が抱く都の現状への思いがちょっとリンクしていたり。

高橋:かもしれないですね。ただ政治的な野望や展望っていうのは多少匂わせてはいるんだけど、そこまで突き詰めて描いていくタイプのお話ではないのかな。一言だけ「お前がやったら面白い政になるだろうな」ってセリフはあるんですけどね、原作にも。なので、そうは思っているのかもしれない。でも今回コンビっていうよりもトリオなんですよ。昭姫、彼女のポジションっていうのも実はすごく大事。全体を包んでくれるどこか妖艶な美しい女性で、でも実はすごく力のある存在で。だからトリオで解決していく感じかもしれないですね。

花總:トリオといっても最初のほうは昭姫はあまり絡んで来ないので、そこに行くまでは客観的に、まずはおふたりが並んでいる姿っていうのを早く稽古場で見たいなぁっていう気持ちです。

花總まり

佐藤:おふたりに挟まれて……自分は本っ当にもう足を引っ張らないようにっていう、ただそれだけです。

ーー公演は12月。改めてお客様へのメッセージをお願いします。

高橋:平安モノってあまりやる機会がないのでそれは嬉しいなぁと。どんな舞台装置でどんな雰囲気になるのか……あの世界観に入っていくのが楽しみです。この作品、いかにストーリーと視覚的要素と謎解きの緩急で面白くしていくかっていうのにかかってると思います。本番、僕も期待しています。

花總:お稽古から舞台へ入った時に多分私たちが一番「うわぁ、素敵」ってなるでしょうね。それを感じる瞬間が待ち遠しいです。カンパニーも和やかですごくいい空気になりそうな予感で……座組がいいと作品自体もすごく良くなるじゃないですか。お稽古始まってから本番まで、みんなで過ごす12月いっぱいをしっかり楽しみたいです。

佐藤:劇場のさまざまなギミックを使い、また、アンサンブルのみなさん含め、総じてかなり華やかな舞台になるんじゃないかなぁと思っています。しっかり頑張ります。どうぞ期待していてください。

(左から)花總まり、佐藤流司、高橋克典

取材・文=横澤由香       撮影=山崎ユミ

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